ぼっち・ざ・ろっく!、バンドリ!、ガールズバンドクライ…… 『けいおん!』ブーム再来を予感するガールズバンドプロジェクト

『BanG Dream!』

【Official Music Video】詩超絆 / MyGO!!!!!【オリジナル楽曲】

 そして『けいおん!』以降のバンドアニメを語るうえで欠かせないのが、2015年に始動して以来、アニメ、ゲーム、コミックなど様々なコンテンツをクロスさせて多角的に展開しているメディアミックス作品『BanG Dream!(バンドリ!)』シリーズ。本作は、各キャラクターのキャストを演じる声優自身が、リアルバンドとしてライブ活動を行うという革新的なアイデアを実現した意味において、間違いなくキャラクターコンテンツの歴史を塗り替えた作品と言えるだろう。そんな『バンドリ!』に新しい風を吹き込んでいるのが、現在放送中のアニメ『BanG Dream! It's MyGO!!!!!』。2022年4月に始動した『バンドリ!』発の新たなリアルバンド・MyGO!!!!!(マイゴ)の結成に至るまでの物語をアニメ化した本作は、従来の『バンドリ!』にはない重々しい展開の連続で現在注目を集めている。彼女たち5人のメンバーは、それぞれが様々な事情や悩みを抱えていて、バンドとして思うように前に進むことのできない、まさに“迷子”のような存在。その人間関係の軋轢がアニメを通して丁寧に描かれており、ドラマとして毎回惹きつけられる内容になっている。

 そしてMyGO!!!!!の楽曲にもまた、これまでの『バンドリ!』のイメージには縛られない要素が多数組み込まれている。その最たるものが、音楽性だろう。彼女たちの楽曲の源泉となっているのは、いわゆるパンクロックやポストハードコアと呼ばれるジャンルの音楽。いずれも定義付けに曖昧な部分があるので言葉にするのは難しいが、例えばツインギター編成によるエモーショナルかつ重厚なアンサンブル、リズムにおける2ビートの多用といった部分が挙げられる。さらに楽曲によってはポエトリーリーディングのパートを含むのも特徴だ。それと関連するのだが、MyGO!!!!!の楽曲においては歌詞や言葉の重要性が高いのも、特筆すべきポイント。アニメを観ればわかる通り、彼女たちの楽曲の歌詞は、MyGO!!!!!のボーカルでアニメの主人公でもある燈の心情を投影したもの。“不思議ちゃん”と呼ばれる感性の持ち主で、幼い頃から周囲とのズレを感じていた彼女の心の叫びが、歌詞にダイレクトに反映されているのだ。その繊細かつ痛みや苦しみも包み隠さず表現した言葉の数々が、アニメのストーリーと絡み合うことで心により深く突き刺さるものになっている。なお、従来の『バンドリ!』シリーズでは一部の例外を除き音楽制作チーム・Elements Gardenが楽曲制作を担当していたが、MyGO!!!!!の楽曲は音楽制作会社・SUPA LOVE所属のクリエイターが中心になって手がけているのも大きな変化だ。

ガールズバンドクライ

【Official Music Video】トゲナシトゲアリ「爆ぜて咲く」 - アニメ「ガールズバンドクライ」

 そのように、バンドアニメに改めて脚光が当たるなか、次の注目作として徐々に名が広まりつつあるのが、東映アニメーションの制作による完全新作のオリジナルアニメ『ガールズバンドクライ』だ。今年5月29日にプロジェクトが本格始動したばかりの本作で描かれるのは、一癖も二癖もあるメンバーが集まった5人組ガールズバンドのトゲナシトゲアリ。主人公のボーカル・井芹仁菜は高校を中退して単身上京、キーボードの海老塚智は元々名家のお嬢様だったが今は両親に捨てられてアパートでルームシェアしていたりと、プロフィールなどの情報からはどこかわけありっぽい雰囲気が伝わってくる。今のところMVやCD収録のドラマトラックといった限られた場所でしかキャラクターについては公開されていないため、ストーリーや各キャラのバックボーンについては不明点が多いが、おそらくかなりドラマチックな展開が用意されているものと思われる。というのも、彼女たちトゲナシトゲアリの楽曲が、非常にシリアスな世界観を有しているからだ。

 プロジェクトの本格始動と同時にMVが公開された、彼女たちの第1弾オリジナル楽曲「名もなき何もかも」で描かれるのは、孤独に悶えながらも世界のすべてを拒絶するような、傷だらけの心の中。その名前を付けようのない感情を、パンク、エモ、ハードコアなどが交差した激情的なバンドサウンドに乗せて届ける様は痛ましくも美しい。バンドの演奏シーンを中心に、主人公の仁菜が川崎の街を全力で駆け巡る姿などを3Dアニメで描いたMVは、TVアニメ『ラブライブ!サンシャイン!!』で知られる酒井和男が監督・絵コンテ・演出を担当。プロのミュージシャンによるモーションキャプチャを取り入れた、各キャラクターの音楽に対する情熱やライブハウスの熱気がそのまま伝わってくるような映像は必見だ。

 そして先日新たに公開された新曲「爆ぜて咲く」の3Dアニメ―ションMVは、同じく川崎の街並みを舞台に、各キャラクターの日常やお互いの関係性に迫る描写も多く、彼女たちがどのようにして出会い、結成されたのか、トゲナシトゲアリというバンドとその物語へのイマジネーションが膨らむ内容になっている。MV監督・絵コンテ・演出を担当したのは、花譜や苺りなはむ/BPM15QなどのMVを手がける映像ディレクターの涌元トモタカ。ライブシーンでのカメラワークを含め全体的にスタイリッシュかつハイクオリティな映像もまた、今後の展開を期待させてくれる。

 他にも、自己嫌悪に溺れそうになりながらも必死に強がってみせるような「偽りの理」、“この胸を 突き刺す痛みを全て 溶かして”というフレーズが鮮烈に響く「気鬱、白濁す」、ひと際アグレッシブなアンサンブルの中で惑うように歌い叫ぶ「理想的パラドクスとは」と、現状公開されている5曲はいずれもどこか痛みや感傷を帯びたもの。それらが前述したようなオルタナティブなミクスチャー感覚に溢れた、エクストリームかつキャッチ―なバンドサウンドで表現されている。楽曲を手がけるのは、日本有数の音楽制作プロダクションとして知られるagehasprings。プロデュースを務める玉井健二を中心に、「残響散歌」をはじめAimerの活動に欠かせない存在の飛内将大、Who-ya Extendedの準メンバーでもあるKOHDら気鋭のクリエイターが参加している。

 また、トゲナシトゲアリのキャストは、agehasprings×ユニバーサルミュージック×東映アニメーションによって開催されたオーディション「Girl’s Rock Audition」で選出された新人5人で構成されているのも本作の新しいところ。全員声優や演技の経験はないながらも、それぞれの担当キャラクターと同じパートの楽器演奏ができるとのことで、今後リアルバンドとしてのライブも期待できる。現状、アニメの公開時期などは発表されていないが、先述の『ぼっち・ざ・ろっく!』や『BanG Dream! It's MyGO!!!!!』とは、ネガティブな気持ちに寄り添うような歌詞や音楽観という意味では共通する部分もありそうなので、それら2作品に続くバンドアニメとして新たな旋風を巻き起こしてくれるに違いない。

■リリース情報
トゲナシトゲアリ
「爆ぜて咲く」
各種音楽配信サービス:https://togenashitogeari.lnk.to/bleeding_hearts

■ガールズバンドクライ リンク
公式HP:https://girls-band-cry.com/
公式Twitter:https://twitter.com/girlsbandcry
公式TikTok: https://www.tiktok.com/@girlsbandcry
公式Instagram:https://www.instagram.com/toge0toge1/

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