今年の“夏フェス王者”は誰の手に? 完全復活の2023年、出演回数の最も多いアーティストを大調査

3位/計12回出演

夏フェス 出演回数 バンド

 HEY-SMITHは、自身らの主催フェス『OSAKA HAZIKETEMAZARE FESTIVAL』も行っているが、ロックやラウド、パンク色の強いフェスでは必ずと言っていいほど“呼ばれる”バンドである。メロディックパンクがベースにありながらも、ホーンセクションがいることでスカの要素が楽曲に取り込まれ、今のシーンを見ても、不動の地位を築くバンドになっている。

 04 Limited Sazabysもパンク方面のバンドシーンを牽引するバンドの一組である。おそらく、若い世代でパンクというジャンルを聴くきっかけになったバンドとして、04 Limited Sazabysの名前を挙げる人も多いのではないだろうか。スリリングかつエネルギッシュな楽曲をぎゅっと詰め込んで連発するので、どんなフェスでも爆発的な盛り上がりを生み出す。

 クリープハイプは近年メディアへ出演する機会も多くなったように感じるが、ライブ活動も積極的であることをあらためて認識させる結果となった。クリープハイプは楽曲を披露する前にちょっとした前口上があり、それがその日のフェスのハイライトになることも多い。特に、「HE IS MINE」においてのそれは洗練されたものがあり、歓声が起こることもしばしば。楽曲終盤のコールアンドレスポンスも必見である。

 sumikaはバンドとして大きな変化があった一年だったが、それでもバンドの根本は何ひとつ変わらず、コンスタントに夏フェスに出演。ポップで耳馴染みのいい楽曲をパワフルな片岡健太のボーカルと迫力あるバンドサウンドで織り成すのは、sumikaの大きな魅力のひとつ。多くのフェスで声出しが解禁になった今年だからこそ、例年以上にsumikaの言葉や歌が胸に届いた人もきっと多かったのではないだろうか。

2位/計13回出演

夏フェス 出演回数 バンド

 ヤバイTシャツ屋さんは、コミックバンド的な捉え方をされることも多いだろうし、そういうユーモアがこのバンドの魅力のひとつでもあるが、根はパンク/ラウドを下地にしたライブバンドである。サウンドを聴くと、どの歌も実にパンキッシュで、痛快なビートを生み出している。かつ、メンバー3人の(MCを含め)息の合った掛け合いも特徴で、今年も夏フェスで大きな盛り上がりをいくつも生み出した。

 夏の音楽フェスの主役はバンドと思われがちでもあり、ヒップホップアクトであるCreepy Nutsの名前が登場することを意外に思う人もいるかもしれない。だが、Creepy Nutsのマイクパフォーマンスに一度触れてしまったら、主催者目線に立つと「呼びたくなるアーティストだな」と思うだろう。R-指定のリズミカルかつアドリブ力あるラップスキルは天下一品で、煽らせても、胸に響くMCを行っても、絶品だ。DJ松永のスキルも見事で、楽曲と楽曲の間合いを制圧しながら、与えられた持ち時間を完全にCreepy Nutsの色に染める。

 若手で最も勢いのあるバンドのひとつであるヤングスキニーも、ここにラインナップした。ヤングスキニーは2020年結成で、キャリアとしてはまだ3年ちょっとでありながら、今年は大規模なフェスの多くに名前を連ねることになった。これまでバンド音楽を聴いてこなかったというオーディエンスも巻き込みながら、規模を大きくしているところに注目が集まることも多いが、コンスタントにライブの数を積み上げ、安定感をもってパフォーマンスを行っているのもこのバンドの特徴だ。「本当はね、」をはじめ、赤裸々ながらもキャッチーな楽曲でフェスを盛り上げる姿には、新世代のバンドだからこその瑞々しさが宿る瞬間も多い。

1位/計16回出演

夏フェス 出演回数 バンド

 1組だけ飛び抜けた数字となり、ダントツで1位を獲得したのが、10-FEET。これを聞いて納得するフェス好きは多いと思う。なんせ、日本の夏フェスのひとつのモデルとも言える『京都大作戦』の主催者であり、しかもその『京都大作戦』は10-FEETと同世代のバンドだけをブッキングするだけでなく、上と下の世代も積極的に招聘しながら、このフェス自体がひとつのカルチャーを生み出す空気感を作り上げているからだ。ライブにおいても“間違いない”が約束されたバンドであり、「RIVER」「goes on」「その向こうへ」をはじめ、イントロの段階で盛り上がるキラーチューンが多数。それに留まらず、2022年には映画『THE FIRST SLAM DUNK』のエンディング主題歌「第ゼロ感」が大きな話題を生み、ライトな音楽リスナーからしても特に今年は必見のアクトになった。ライブの運び方も素晴らしく、MCでの煽りが上手いことは当然としたうえで、仮に10-FEETのようなアグレッシブなライブを行うバンドに親しみの薄いオーディエンスへの気遣いを見せるのも特徴。いろいろな魅せ方で、その場にいる人“全員”が楽しめるような温度感でライブを進めていくのも魅力だ。かつ、笑いもあるし、グッとくる瞬間も作るしで、出演したどのフェスも大盛り上がりにして、多くの人をハートフルな気持ちで帰路へと送り出してくれるところに、このバンドの圧倒的な強さがあるように感じる。

 ランキングとしては以上だが、裏で個人にもスポットを当てた「忙しい人」ランキングも集計してみた。このランキングでも、1位は卓真名義でのソロ出演もあった、10-FEETのフロントマンであるTAKUMA。そして2位には、“最強掛け持ちバンドマン”でもある川谷絵音が登場することに。川谷絵音は、今年はindigo la End、ゲスの極み乙女、ジェニーハイ、礼賛という4バンドでコンスタントにフェスに出演していた。そのため、破格の出演回数を叩き出す結果になったのだった。

 今年はきっと、“これがやりたかった”を詰め込んだステージが多かったのではないかと思うし、だからこそ、アグレッシブなライブを行うアーティストの名前が目立った印象を受けた。また、ランキングを見ると、さまざまな世代のアーティストが出演回数を重ねていることも実感できて、そういう意味でも、今年は今後のフェスシーンを繋いでいくうえで重要な一年になったことを実感する結果だった。

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