布袋寅泰、提供楽曲に表れるギタリストの枠を超えた作家性 井上陽水、藤井フミヤ、亀梨和也ら手がけたコンポーザーとしての歩み

 布袋の作るメロディは、そのギタープレイに如実に表れている。歌のメロディを踏襲したリードギターである。ギターを弾かない人でも耳に残り、口ずさむことのできるギターソロ、リフである。

 ロックギターの世界には“ペンタトニック・スケール”と呼ばれる、ギターソロやフレーズにおいて使用頻度の高い音階がある。メジャースケールの4、7番目の音を除いた5音から構成されるスケールで、「ヨナ抜き」とも呼ばれている。ロックやブルースのギターソロを弾くには欠かせない、非常に使用頻度の高い音階だ。

 しかしながら、布袋の奏でるフレーズにはこのスケールがほとんど使用されず、通常の7音階にて構成されている。これは「音階は音が離れていないほうが耳馴染みがいい」「ギターソロは聴き手を驚かせるのではなくほっとさせたい」「アドリブっぽくならないように」というBOØWY時代からのこだわりでもあり、本人曰く“簡単だけど耳に残るフレーズ”である。

 こうした音選びで構成されているのは歌メロディも同様であり、音離れの少ない、音程の起伏が極端ではない優しいメロディが印象的だ。その代表ともいえるのが、今井美樹「PRIDE」(1996年)だろう。これまで、ロックナンバーのサウンドプロデュースとしての手腕に定評のあった布袋が、アコースティックな歌モノポップスのソングライティングを世間的に知らしめた1曲といえる。ギターに出会っていなければキーボーディストになっていたというほど、ピアノや鍵盤楽器に精通していることはファンなら皆知っていたことだが、ギターが全面に鳴っていない布袋曲がお茶の間に広がったのは本曲が初だったのではないだろうか。そして同曲で「第39回日本レコード大賞」(1997年)の作詩賞を受賞。これまでは自身の楽曲でも森雪之丞といった作詞家を起用することが多かったが、以降作詞も自ら手がけることが増えていった。

 また、布袋はラインクリシェという、同じコードを持続させながら構成音を2度進行で変えていく手法を得意としている。BOØWY「CLOUDY HEART」(1985年、作曲は氷室京介)、「季節が君だけを変える」(1987年)、ソロでは「さらば青春の光」(1993年)、「POISON」(1995年)など、ラインクリシェを用いた楽曲をあげればキリがない。サビで高揚感とともに一気に高音へと駆け上がるといった楽曲とは真逆で、静かなる余裕を感じさせるものである。

 先頃は過去に「サラバ、愛しき悲しみたちよ」(2012年)を提供した、ももいろクローバーZの楽曲「MONONOFU NIPPON feat. 布袋寅泰」に参加。エッジィなギタープレイを響かせている。こうした布袋の書くメロディは、さまざまなアーティストを通して多くの人の心に普遍的に響くのである。

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