石原夏織、キャリアを重ねることが楽しみに “青春”や“家族”と等身大の視点で向き合ったシングル『Paraglider』を語る
声優・アーティストとして活動している石原夏織が、11枚目のシングル『Paraglider』をリリース。表題曲は、彼女自身も声優として出演しているアニメ『夢見る男子は現実主義者』OP主題歌としてすでに好評の楽曲で、8月6日に誕生日を迎える石原が、恋に部活に奮闘する高校生達を応援する爽やかな楽曲。同曲のMVは、アニメの舞台と同じ浜松で撮影されたとのこと。またカップリングには、家族への愛と感謝を歌ったバラードナンバー「To My Dear」を収録。3月にソロアーティストデビュー5周年を迎え、少し大人になった視点で捉えた今回のシングルについて、そしてYouTubeで公開中のカバー動画「ホントのじぶん」について。石原夏織の今と原点を深掘りした。(榑林史章)【インタビュー最後にプレゼント情報あり】
“応援する側”としても届ける青春ソング
――新曲「Paraglider」は、アニメ『夢見る男子は現実主義者』OP主題歌として絶賛オンエア中です。このアニメはどんなお話ですか?
石原夏織(以下、石原):本当はお互い思い合っていたはずなのに、すれ違ってしまう。端から見ると二人はどう考えても両思いなのに、「何でこんなにもどかしいんだ~」って思うような、甘酸っぱくて、こういう青春の形もあるんだろうなという、高校生の恋模様が描かれた作品です。
――石原さんも四ノ宮凛役で出演されていますね。
石原:はい。私は主人公二人の先輩で、クールで周りから格好いいと思われている風紀委員の女の子です。でも話数が進むと、ただクールなだけじゃないところも見えてきて、意外と世間知らずで人とズレたところもあって、そのギャップが可愛いくて魅力ですね。
――そんな凛を演じる石原さんが歌うOP主題歌「Paraglider」は、まさしく青春といった爽やかなイメージの楽曲です。
石原:『夢見る男子』という作品自体のテーマが青春でもあるので、〈覗き出す空の号令で 想い抱えたまま出発/目は合うのに風で揺れて遠回り〉という最初のフレーズで、それをしっかり表現できたと思います。爽やかだけどただ爽やかなだけじゃなく、後ろで鳴っているシンセサイザーのメロディがすごく耳に残るし、そこから8月初旬という今の季節にもピッタリな、清涼飲料水のような爽やかさを感じてもらえたらうれしいです。
――作詞・作曲は、数多くのアニソンや声優の楽曲を手がける渡辺翔さんです。
石原:翔さんには今までもたくさん書いていただいているのですが、シングルの表題曲を書いていただいたのは初めてです。これまでの制作過程の雑談で、私自身が好きな音楽のことなどもお話させていただいていますし、ライブにも足を運んでくださっているので、私自身のパーソナルな部分も理解してくださっていて。今回の曲を作ってくださるにあたっては、アニメサイドからの「バンドサウンドで爽やかな楽曲で、でもアニメアニメしないでほしい」といった提案を踏まえ、私らしさを考えて作ってくださったのだと思います。
――歌うのに苦労したところはなかったですか?
石原:レコーディングの本番は、自分で考えて組み立ててかなり練習して臨んだのもあって、「ここが苦労しました!」みたいなところはありませんでした。でも練習の段階で、この曲と向き合うにはどうしたらいいのかと、そこはすごく考えましたね。私自身は青春と呼ばれる高校時代からだいぶ時が経ってしまっているので、どうやったら高校生のリアルな気持ちを思い出せるかなと。
――卒業アルバムを引っ張り出して当時を思い出したり?
石原:そこまではしませんでしたけど(笑)。私はいわゆる青春と呼べる思い出が正直あまりないんです。だから原作小説やコミックスを読み込んだり、過去に観たり読んだりした青春もののドラマやマンガで感じた気持ちを、「こんな感じだったかな?」と思い出しつつ、「きっと青春とはこういうものじゃないか!」と、自分なりに導き出して歌わせていただきました。
――青春と呼べるような経験をあまりしていないのは、石原さんがその頃からお仕事をされていたからですね。
石原:はい。学生の青春で思い浮かぶのは部活が多かったりすると思うんですけど、私は仕事をしていたから部活に入れなかったんです。そういう意味では学校から仕事に向かう道中が、私にとっての青春だったかもしれません。その時のことが、すごく印象に残っているので。
――仕事に向かう道中は何をしていたんですか?
石原:テスト期間中は勉強していましたし、レコーディングやライブが近い時は曲を聴いて歌詞を覚えたりしていました。あとは遅刻しないように、よく走ってました(笑)。人とは違うけど、これはこれで私にとっての青春だったなって。
――そんなことも思い出しながら歌ったということで。楽曲のタイトルは「Paraglider」です。空を飛ぶあのパラグライダーですか?
石原:はい。渡辺翔さんがつけてくださったタイトルなのですが、主人公の二人のすれ違う思い、フワフワと揺れ動いている感じが、パラグライダーに似ているということでつけてくださったのではないかと思います。疾走感がある曲だけど、ものすごく速いというわけではなくて、スピード感的にはジェット機ではなくフワフワと、でも空を飛んでいて前に進んでいる。そういう意味でリンクしたのかなって。すごく絶妙に例えたタイトルだなと思いました。
――パラグライダーのご経験は?
石原:ないです。やりたいとも思いません……! そもそもジェットコースターとか、落ちる系が苦手で絶対やりたくないです(笑)。私、企画で富士急ハイランドまで連れて行かれたことがあるんですけど、頑としてFUJIYAMAにもドドンパにも乗らなくて、企画がボツになったことがあります(笑)。
――(笑)。MVはきれいな青空をバックに、砂丘や屋上など様々なところで撮影が行われました。
石原:アニメの舞台が静岡県の浜松なので、それに合わせてMVも浜松で撮影させていただきました。学生役で、初めてエキストラの方に出ていただいたんですけど、恋愛だったり部活だったり、いろんなことで頑張っている学生のシーンがあって、私は歌でそれを応援しているという感じです。私自身が応援する側の年齢になったということもあって、学生たちが頑張っているところを応援しようということになりました。
――砂丘の撮影は、順調でしたか?
石原:すごく風が強くて。前日に雨が降ったことで砂が舞い上がる量が、いつもより少なかったそうなんですけど、それでも砂が当たって痛かったです(笑)。その日は天気が晴れていてすごく暖かかったんですけど、屋上で脚立に上がって撮ったところは、風が強くて体感的にすごく寒くてそれが一番大変だったかな。でも、屋上で脚立に上がると富士山が見えたり景色が良くて気持ち良かったです。高くて怖いとかはなかったのですが、両手を離した時に限って風が強く吹くので、「落ちないようにしなきゃ」という緊張感はありました。ドローンも使っていて、上空からの映像はきっとパラグライダー感があると思います。
――名物の浜松ぎょうざは食べましたか?
石原:食べなかったですけど、お土産で買って帰りました。その代わりハンバーグで有名な「さわやか」には行くことができました! 青空がメインのMV撮影だったので終わり時間が結構早くて、みんなで食べに行こうって。
「To My Dear」で家族愛を歌った理由
――また、カップリング曲「To My Dear」は、温かく胸にじんわりとくる楽曲ですね。
石原:バラード曲は今までもあったんですけど、ここまでゆったりとしたものはあまり歌ったことがなかったので、「バラードを歌ってみたいな」というところから出発しました。歌詞は、スタッフさんと打ち合わせをした時に提案していただいた中にあったもので、「家族に向けた愛を歌うのもすごくいいな」と思って、家族や大切な人への愛とか感謝をテーマにしました。
――そういう家族愛を歌いたいと思うようなきっかけが、何かあったのですか?
石原:自分を取り巻く環境というか、自分自身も親との関わり方が変わってきていると感じるのですが、ファンの女の子から「上京してきて、仕事は東京でやっているから最初はすごく大変だった」とか、「結婚して家族が生まれて」といった話をたくさん聞くようになって。ファンのみんなと長く一緒に歩んでいることによって、それぞれのライフスタイルも変わってきているなと感じていたんです。家族に向けた愛は、今までは年齢的なこともあってあまり触れたことがなかったけど、こういう切り口で歌ってみるのもそろそろいいんじゃないかなって。ちょうどこのタイミングでバラードだし、せっかくだから家族愛を歌ってみるのもいいんじゃないかなと。
――石原さんは、どういう部分で家族の愛を実感しますか?
石原:私は家族と同居しているので、離ればなれみたいな感じではありませんけど、悩んだりつまづいたりして苦しいなと思っている時は、遠くで見守ってくれて、手を差し伸べてくれる。昔みたいに全部話してアドバイスをもらうようなことは少なくなりましたけど、そういう関わり方をしてくれていてすごくありがたいなと思っていて。
――石原さんの年齢に合わせて、その都度見守り方とか距離の取り方を考えてくれているんですね。
石原:そうですね。この先どんなことが起こるかわからない中、家族でいられるのって永遠ではないと思うんです。高校生の時はそこまで考えが及ばなかったけど、10年くらい活動してきて、こうして一緒にいられることはすごく幸せなことなんだなって。今まで普通だと思っていたことも、普通じゃないんだなってすごく感じるようになったし。そういう自分の気持ちもあって、こういう歌詞を歌いたいなって。
――そういう気持ちを、ファンのみんなと共有できる曲であると。ライブで歌ったら、みんなで泣いてしまいそうですね。
石原:私も歌えなくなっちゃったらどうしよう(笑)。
――作詞は、叶人さんです。
石原:初めましての方でした。曲はコンペだったんですけど、歌詞もコンペで集めたのは初めてでした。今回のこういうテーマで書いたいろんな作詞家さんの歌詞をたくさん見て、十人十色じゃないけど、それぞれ違う切り口があって面白かったです。
――歌詞には〈「ただいま」と「おかえり」の声〉と出てきて、すごく分かりやすいですね。
石原:はい。この歌詞を選んだ理由は、とにかく情景が見えやすいし、聴いた方が一発で内容を理解できるところがいいと思ったからです。そして、聴いた人の自分事になってほしいなと思ったので、まさしくその〈「ただいま」と「おかえり」の声〉のところとか、〈「無理しないでね」の声〉のところが、私的にもすごく気に入って決めました。地元を離れて上京している方は、この曲を聴いて実家に顔を出すとか、電話するとかしてもらえたらいいなと思います。
――「To My Dear」は、最愛の人に向けてといった意味になります。石原さんの中での「最愛の○○」を教えてください。
石原:そうですね~やっぱりペットを含めて家族ですね。
――家族とはよく話をするほうですか?
石原:めっちゃ話します。時間が空いたら愛犬を連れて、家族で車に乗って遠くまで遊びに行ったりとか。うちの子(愛犬)はドッグランが苦手だし、近所だと飽きてしまっているのか、あまり歩いてくれなくて。でも初めての場所だと刺激が多いみたいで、楽しそうに歩いてくれるんですよ。茨城県とか栃木県とか、遠い時は長野県や山梨県まで、ちょっとした日帰り小旅行みたいな感覚で遊びに行ったりしますね。ペットを中心に家族で出かけたり会話が生まれたりしているなって、すごく思います。