米津玄師、BUMP OF CHICKEN、RADWIMPSらが歌う〈地球〉の言葉に宿るもの 『君たちはどう生きるか』主題歌などから考察

 米津以外にも“地球”を多く歌ってきたミュージシャンは数多い。RADWIMPSは“君”と“僕”の存在を強調するために“地球”を歌う。「有心論」の〈誰も端っこで泣かないようにと/君は地球を丸くしたんだろう?〉という“君”を神として崇めるフレーズは、その代表だ。他にも、「ドリーマーズ・ハイ」では〈有能な僕たちは 今日もこの地球の代弁者〉と“僕たち”の存在意義を謳い、「トレモロ」では〈悲しみが悲しみで終わらぬよう せめて地球は周ってみせた〉と“僕”のために地球は動いてくれているととらえる。地球と自分たちの主従関係を反転させたような、野田洋次郎らしい視点と言えるだろう。

RADWIMPS - 有心論 [Official Music Video]

 BUMP OF CHICKENにも“地球”を歌った曲がある。「GO」の〈でこぼこ丸い地球の上〉というかわいらしい表現は、本来丸いはずなのに歩きづらく、この地球がでこぼこに思えてしまう苦しさに寄り添う。また「流れ星の正体」では、〈君が未来に零す涙が 地球に吸い込まれて消える前に/ひとりにせずに掬えるように〉と、広い地球で見逃されてしまう個人の寂しさを見つめる。この世界に居る“あなた”の特別さを歌うために“地球”を用いる藤原基央らしい歌詞表現と言えるだろう。

BUMP OF CHICKEN「流れ星の正体」

 SEKAI NO OWARIは、1stアルバムを『EARTH』と名づけ、その後も“地球”について多く歌ってきた。Fukaseは「死の魔法」で〈皆の地球も僕の仲間の人間も〉〈こんなに僕は好きなのに/どうして死んでしまうの?〉と生命の宿命を嘆き、Saoriは「アースチャイルド」で〈地下帝国 「地球」という名前をつけて/眠らない夢を見た〉とSFチックな世界を綴る。作詞にふたりの名がクレジットされたバンドの代表曲「RPG」では〈僕らはまた出かけよう 愛しいこの地球(せかい)を〉と歌っており、そのファンタジックな世界へとリスナーを連れ出せるように、“地球”を描いているようにも思える。

SEKAI NO OWARI「RPG」

 UNISON SQUARE GARDENの“地球”の描き方はスケールが大きい。「等身大の地球」では〈等身大の世界を旅してよ 地球儀なんかじゃなくて〉と高らかに歌い、「23:25」では〈浮かんでる球体の上に乗って地球を探検 みたいな〉と豪快な表現を用いる。「10% roll, 10% romance」では〈運命に踊らされるぐらいなら/いっそ地球の自点を急かしちゃうくらいの BPMで1,2,1,2〉と宇宙法則すら無視してしまう。作詞を担当する田淵智也の言語感覚によって導かれた“地球”は、UNISON SQUARE GARDENの楽曲のエナジーを極限まで引き上げているように思う。

UNISON SQUARE GARDEN「10% roll, 10% romance」MV

 誰もが“地球”の存在を共有しているからこそ、アーティストごとの価値観や表現手法がわかりやすく提示されるのが、これらの楽曲の興味深い点だ。ぜひ、好きなアーティストの“地球の歌い方”を確認してみてはいかがだろうか。

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