ALI、怒涛の1stアルバム制作&ツアーで掴んだバンドとしての自信 孤独と向き合った日本語詞への手応えも語る

ALI、1stアルバムで掴んだ自信

 1月にメジャー1stアルバム『MUSIC WORLD』をリリース、そのアルバムを携えてワンマンツアーを開催し、全国各地のファンに熱いライブを届けたALIの3人。筆者もそのファイナルを観に行ったが、メンバーとオーディエンスが肩を組んで音楽の楽しさや喜びの真髄を味わい尽くすような最高の音楽体験がそこにはあった。ALIが掲げる音楽への愛や信頼がステージからフルパワーで放出されるようなパフォーマンスは今思い返しても圧巻だった。

 そんなツアーを終え、ALIは早くも次のアクションに突き進んでいる。3月4日に配信リリースされた新曲「LONELY LONELY」は土曜ドラマ『自由な女神 -バックステージ・イン・ニューヨーク-』主題歌として書き下ろされた、ALIのリリース楽曲では初の日本語詞の曲。作詞には昨年のコラボも記憶に新しい東京スカパラダイスオーケストラ・谷中敦が参加し、LEOとともに熱いメッセージを綴っている。LEO自身の人生とも密接にかかわるテーマ、そしてそれを日本語で力強く届けるという覚悟。ドラマ主題歌のオファーは偶然だったが、期せずしていろいろなピースがはまって今のALIを象徴するような楽曲が誕生した。LEO、CÉSAR(Gt)、LUTHFI(Ba)の3人に、ALIのこれまで、そしてこれからを語ってもらった。(小川智宏)

“遺作でもいい”と思えた1stアルバム

――今年に入って1stアルバム『MUSIC WORLD』をリリースして、ツアーも完走したALIですが、今振り返って、あのアルバムは改めてどんな作品になったと思いますか?

LEO:作るときには5年後、10年後に聴いてもちゃんとフレッシュな状態を保てるようにっていうのを考えていました。あとは激動の時代なので、それを俺の目線を通して丁寧に書こうとか、俺1人で歌う曲を増やしていこうっていうのもやって。もともとALIって、バンドがラッパーと一緒にスタートしたのもあってどうしてもラッパーありきの曲が多かったんですけど、ライブもシンプルに、自分という人間で勝負できる場所になってきたから。結成からいろんなことがあったけど、そういったものにケリをつけつつ作ることができたなって。

 前のメンバーと作った曲も出せたっていうのが嬉しかったし、音楽としても結構攻めることができたっていうか、挑戦する感じでやれたんで。自分たちのやりたいことをフレッシュに、1stアルバムらしく挑戦できたのがよかったなと思う。シングル候補になった曲を寄せ集めてすぐに出すこともできたけど、そうじゃなくて、ゼロからもう1回少年のような気持ちで作れたなって。

――そういう意味では作ったときの達成感っていうか、手応えはかなりありました?

LEO:死ぬかと思いましたね(笑)。結構しんどかったよな。

CÉSAR:タイトでしたね。

LEO:俺もLUTHFIも子どもが産まれたんで、子どもの面倒を見ながら仕事をしていて、寝れないし、締め切りは来るし、全然時間がなくて(笑)。プレッシャーもあったし。

――CÉSARさんはどうでした?

CÉSAR:次のALIがめっちゃ見えたアルバムになったと思っていて。今言ったみたいに、LEOさんが1人で歌える曲が増えて、ライブもガラッと変わってきたんですよ。そうしたタイミングでここからフェスもいっぱいあるんで、またレベルアップしていけたらいいなって思ってます。去年のフェスとかは悔しい思いもたくさんしたので、今年はお客さんの心を掴めるようなライブができたらなって思ってます。

――悔しい経験というと?

CÉSAR:いいライブをしても、袖でメンバーで集まって「もっとこうできたな」とか言ったり、他のアーティストを観に行って勉強したりとか。出ることができたのは嬉しかったけど、メンバー間で話して、かえって火がついてもっと頑張ろうって思えた1年でしたね。

LEO
LEO

――LUTHFIさんはどうでしたか?

LUTHFI:作っているときはいろいろありすぎて。アルバムを作っている当時、僕、ビーガンだったんですよ。

LEO:ああ、それね(笑)。

――どういうこと?

LUTHFI:ALIとしての活動が結構ハードで、ライブでは汗だくになるくらいに動いたりもするし、制作スケジュールもキツくて。食事でエネルギーを補えなかったこともあってか、曲作りの合宿をやったときもボーッとなっていたんですよ。

LEO:曲を作るスケジュールが本当に取れなくて、埼玉と群馬の県境まで行って2泊3日で合宿したんですよ。そのスケジュールも朝6時ぐらいまでぶっ通しでやったんですけど、ずっとボーッとしてたよな。

CÉSAR:眠い目をこすりながらやってたんですけど、LUTHFIさんがボーッとして毎回違うベースラインを弾くんです。集中力がなかったのか、同じフレーズを弾けなくなっていて、「何やってたんだよ!」ってLEOさんがキレ始めちゃって。

LEO:こっちも眠い中やってたので。朝の4時ぐらいですよ。

CÉSAR:1回録ったら終われるから、早く録りたいんですよ。けど、全然できなくて、LUTHFIさんも完全にシャットダウンしちゃって。

LEO:もうその帰りの車内、ずーっと説教でした(笑)。それでこれは本当にヤバいと思って、嫁と2人でビーガンのことを本気で調べたんです。そしたら完全なビーガンの食事を日本でやる場合は、平均の3倍くらい稼いでないと無理なんですよ。1食5,000円くらいかかるから。そうやって説得したら、LUTHFIも「分かった」って言って、とりあえず魚を食べ始めて、その1週間後に台湾に行ったときにはもうチキン食べてました。「めちゃくちゃうまい」とか言って(笑)。

LUTHFI:そこから元気になって、すごく喋るようになったんです。CÉSARとかマネージャーは、ビーガン始めて以降の僕しか知らないから、急に口数が増えて「うるさ!」ってなったと思う(笑)。LEOも「そうか、LUTHFIってうるさいヤツだった」って思い出したと思うけど。

LUTHFI
LUTHFI

――そういう状態であれだけのアルバムを作ったっていうのは相当タフでしたね。

LEO:頑張りすぎて、もう遺作でもいいやと思いましたもん。よくある話だけど、これで本当に終わってもいいかっていう気持ちになれた。

――そういう意味でも『MUSIC WORLD』は、ALIをずっとやってきた日々の集大成でもあったんですよね。

LEO:そうですね。ようやくけじめをつけることができた。

――じゃあ、作り終わった後は抜け殻?

LEO:抜け殻でしたね。何週間かその状態で、The Stone Rosesみたいに5年ぐらい出したくないなって気持ちになりました(笑)。けど、メジャーで頑張るっていうのはそういうことじゃないんで。ドラマ主題歌になった「LONELY LONELY」もそうだけど、「やってみない?」っていうオファーがいっぱい来たので嬉しかったですね。

「ゲストとやってきたからこそ、1人で歌う曲でヒットを出したい」(LEO)

――ツアーはどうでしたか?

LEO:ツアーはね、俺らアルバムのアナログも作ったんですけど、2,000枚売らないとトントンにならないんですよ。アナログで2,000枚って相当ハードル高いんですけど、「売ろうぜ」って言って、ツアー中はライブが終わったら、握手会じゃないけどレコード販売会みたいなのをやったんです。そこで、SNSで見ていたような人とは違う、リアルなファンに会うことができて。特に若者で、「初めてライブハウスに来たんです」っていう人もいたりして。

LUTHFI:そういう10代の子もいたよね。

LEO:そういう人と全国各地で会えたっていうのは結構熱かったよね。コロナ禍があったからこそ、動員数とかよりも、一人ひとりの人生にちょっとずつ触れられることって、俺らにとっても、この時代にとっても必要なことなんじゃないかって思いましたね。

――パフォーマンスはどうでした?

LEO:ドラムのboboさんが、ライブ制作担当のスタッフに「ALIは本当にいい。ツアー最高だった」って言ってくれたみたいなんですよ。不器用なりにみんなで決めて、みんなで進んでるのが超いいって。そう言ってもらえたのが嬉しかったよね。

LUTHFI:うん。

LEO:日本を代表するドラマーが喜んでくれたっていうのもよかったし、いろんなことを見てきたパイセンなりに「これでいい」って言ってくれているのも嬉しかったし。あと、苦戦すると思われていた北海道公演とかがめちゃくちゃうまく行って、それを観てくれた人がいたおかげで『JOIN  ALIVE』出演が決まったりとか。俺らって明日がないんで、そうやってライブで仕事を取ってくるしかないんですよ。もう、営業です。そこでいいライブできなかったら、二度と来れない。俺らはライブにかかる人数も多いし、予算がかかるから。

CÉSAR
CÉSAR

――ツアーファイナルもいろいろなゲストが登場したじゃないですか。そうやってラッパーをフィーチャリングするライブもALIらしいなと思ったけど、さっきの話だと、もうちょっとLEOくんにフォーカスしていくっていうイメージなんですか?

LEO:もちろん、ゲストが多いっていうのもすごいフォーマットだと思いますよ。ALIが出てきたときには、そういうことをやってるバンドは周りにあまりいなかったからね。俺らが多国籍だからっていうのもあるけど、もともと好きなヒップホップは、ダンスとかグラフィティとかDJとか、いろんなものが集合体になったカルチャーだし、いろんなジャンルを混ぜて一緒にやっていくのが面白いなと思っていて。今は俺らっぽいことやる人も多くなったから、同じことをやるのも嫌だし、もっと研ぎ澄ましてやりたい。心と心が通う人ともたくさん一緒にやってきたけど、それよりも今はまず、俺1人で歌う曲でヒットを出したいなって。

CÉSAR:ライブを観てくれた人からも「LEOさんをもっとたっぷり観たい」っていう声も多かったし。

――確かにその気持ちもすごくよく分かる。

LEO:でも、たまに(ステージ袖に)引っ込んだ方が俺はかっこいいんですよ(笑)。その方が周りも目立つし。優秀な人は周りを引き立てるって、よくリーダー論とかで言うじゃないですか。それです。自分をかっこよくするためには、周りをかっこよくしないとよくないから。サッカーで言う(リオネル・)メッシみたいなもんですよ。

――ストライカーじゃないっていうね。

LEO:そうそう、俺がゴール決めるとかじゃなくて、結果的にチームを勝たせる役割をするっていうか。チームが勝てば俺が勝つし、俺が勝てばチームも勝つ。

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