「『いつ話くれんだよ、早く書かせろよ！』とずっと思ってた」（Neru）

ーーここまでも少し話が出ていましたが、改めて「ラディーチェ」の制作についても伺っていければと思います。楽曲をNeruさんが担当されたのは、ウォルピスカーターさんからのリクエストだったんでしょうか？

ウォルピスカーター：僕からですね。スタッフさんに「今回の書き下ろし誰に頼みたいですか？」と聞かれて、「ダメ元でいいならNeruさんがいいんですけど」と言ったんです。そしたら「じゃあウォルピスさんから連絡してください」って（笑）。それでNeruさんにLINEしました。

Neru：僕としてはもっと前から、それこそウォルピスと遊んだときに「曲書かせてよ」と言って、彼からも「いや書いてくださいよー」みたいに言われていたので、ずっと待ってたんですよね。「いつ話くれんだよお前、早く書かせろよ！」とずっと思ってたから、やっと今回お話をいただけてうれしかったです。

ウォルピスカーター：いやだって、直接会ってるときに「書いてくださいよ」「いいよ全然書くよ」と話して、その後に即頼むのってなんかちょっといやらしくないですか（笑）？

ーー今なら断れないだろう、みたいな。

ウォルピスカーター：そうそう、それでちょっと間を置いてから送ろうと思ったら数年経っちゃった。あと、せっかくNeruさんに書いてもらうなら大きい企画がいいと思った結果、このタイミングでしたね。

ーーNeruさんの今までのボカロ曲だと、一見明るい曲でも少し闇が入っていたりすることが多いので、今回のように底抜けに爽やかな曲は新鮮でした。ウォルピスさんが初めて曲を聴いた印象はいかがでしたか？

ウォルピスカーター：ちょうど別の曲のマスタリング作業か何かをしてるときに、デモをいただいたんですよね。それでそのマスタリングスタジオのスピーカーで聴いたんですけど、「これは難しい曲が来たぞ」と。サビのボーカルのリズム感が表打ちで、行進曲っぽいなって思ったんですよ。最近流行る曲は裏にアクセントを置いているボーカルというか、裏ノリっぽい曲が多かったので、「表打ちの曲をうまく歌えるのかな」という緊張感はありました。だからこそ「いや、やったるか」という挑戦心みたいなのも芽生えて、やりがいはすごくありましたね。

Neru：音源を聴いてそこに気付いたのはすごいですね。まさにそうで、最近2拍・4拍にアクセント置く曲が流行っていたので、今回は逆をやってやろうと思ってたんです。カウンターじゃないですけど、明るい曲の中にもこっそり、スパゲッティの下に毒を盛るみたいなことをやりたいなと。

ウォルピスカーター：それは事前に言ってほしかった！　なんか抜き打ちテストみたいで怖いよ（笑）！

Neru：いやいや、これは伝えるまでもない個人的な裏設定みたいな感じなので。でもだからこそ、音源を通して伝わってたのはすごいね。

ーーNeruさんからウォルピスさんに、何かボーカル面のオーダーはありましたか？

ウォルピスカーター：なかったです。制作が始まる直前に「一緒に良い曲作りましょう」というLINEをもらって終わりです。

Neru：そうその熱いメッセージ送ったのにお前さ、何カ月も無視したよね。既読もつけなかったじゃん！

ウォルピスカーター：あれで会話が終わったと思ってました、すみません（笑）。

ーータイトルの「ラディーチェ」は「根っこ」や「根幹」という意味を持つ言葉ですが、お2人の活動における“ラディーチェ”を教えてもらえませんか？

ウォルピスカーター：僕はもうとにかく「狭く深く」が根っこだと思います。大衆受けよりマニア受け、友達は狭く深くみたいな感じ。投稿してる楽曲も「自分が好きなものを、それを受け入れてくれる少数に向けて」というスタンスで今までやってきて、ありがたいことに大勢の人が偶然見てくれて。それが今の形に繋がっているので、これからもそこはずっと変わらずやっていくんじゃないかなと思います。もちろんそれで大コケすることも多いんですけど、僕はその大コケに対しても「いや、しょうがないよな」って気持ちでいるんです。「もっとみんなに認めてもらえるものをやらなきゃ」という気持ちも特になく、自分の好きな歌を、自分の好きな人とやっていきたいですね。音楽やってる人は精神的に疲れちゃう人が多いと感じていて。

Neru：そうだね。

ウォルピスカーター：僕はこのスタンスでやってきて、もう10年病み知らずなので。僕が悩むとしたら高い声の出し方についてだけです。

Neru：今、話を聞いていてウォルピスに似てるなと思ったんですけど、僕も「自分がやりたいようにやる」が第一ですね。というのも僕、13年ぐらい活動してると思うんですけど、30曲ぐらいしかネットにアップしていないんですよ。

ウォルピスカーター：意外と少ないっすよね。

Neru：そう、意外と少ない。同じぐらい活動してる人は、その倍とか、下手したら3倍4倍上げてると思う。「1クールのレギュラーより1回の伝説」という江頭2:50さんの金言があって、それを見たとき「僕の活動はこれだな」と思ったんですよね。本来は「コンスタントに上げていかないと忘れられちゃう」みたいなことを考えなきゃいけないと思うんですけど、そういうことよりも、自分が日々過ごしていて「これがやりたい」というものがフラッシュアイデア的に出てきたとき、そこに全力を注ぎ込む。その1回1回のタイミングを大事にするような活動ではありたいと思っています。