ちゃんみな「私のテーマは人生を歌うこと」 新作『Naked』でルーツと向き合い、眼差しはグローバルへ
アルバムを出すのは日記を出すイメージ
ーーそんな中で届いた4thフルアルバム『Naked』ですが、タイトルどおり、これまでの自分をすべて見せる、というイメージを受けました。
ちゃんみな:そうですね。私は今年25歳になるんですけど、20代の前半は「ある程度」という感じがすごくあると思うんです。まだある程度は多感で、でもある程度は世の中を知っているけれど、まだ知らないこともたくさんあって、自分ともある程度ぶつかりながら生きている。私はそもそも音楽をやる上で、自分と同じくらいの年齢の子たちが見る風景を見て、触れるものに触れていたいと思うタイプで、地に足をつけて生活をすることにこだわっていて。そうやって20代前半を生きてきて、感じたものをこの作品にスタックしたかったんです。私の中にある人様に見せられないようなところだったり、恋愛ですごくあたふたしていたり、人を傷つけてしまったり、という部分も含めて、「20代前半の私はこんな感じ」という作品ですね。本当は50曲くらいあって、その中からこの17曲に厳選しました。
ーー「自分ともぶつかりながら生きる」なかで、変わっていく部分や揺れ動く部分も当然ありますね。例えば、「Don't go (feat. ASH ISLAND)」と「サンフラワー」では、同じラブソングでも違う視点で書かれている。こういう“揺れ”のようなところも作品の魅力になっていると思います。
ちゃんみな:私の傾向として、「新しい感情だな」とか「新しい経験だな」と思ったら曲を書く、という癖があるんですよ。例えば、「FUCK LOVE」の歌詞みたいに、〈安心感〉とか〈私には良く似合わない〉とか、「サンフラワー」みたいに、君はいい人だけど〈愛してない〉と思ったり。例えば浮気をされるとか、相手に憎しみがあって別れた恋愛は何度かしてきたんですけど、「一緒にいて落ち着くけど、何か違うんだよなぁ」みたいなことは初めてだったんです。他にも、「You Just Walked In My Life」は盲目的になっているというか、恋に落ちたばっかりの感じだったり、「Mirror」はお互いに相手がいる状況だったり。私の年代って、恋愛で新しい経験をする時期でもあると思っていて。恋愛の曲が多くなったのは、私がここ3~4年でそういう経験をしてきたからなのかなと。
ーー変化していく年代ということですが、1年単位、数カ月単位で気持ちが変わったり、人生のステージが変わっていくという感覚はありますか。
ちゃんみな:そうですね。私にとってアルバムを出すことは、1年日記や2年日記として書いたものを出す、というイメージなんです。『未成年』のときは、16とか17のときの日記で、『CHOCOLATE』は18とか19の私だし、『Never Grow Up』は20歳になったばかりの私だったりして。そういう意味で、今は『未成年』に入っている曲に共感できないこともたくさんある。日記って、そういうものじゃないですか。後から読むと「このときはこんなふうに思ってたんだ」って、恥ずかしかったり、サムかったり(笑)。でも、私のテーマは「人生を歌う」ことなので、そこはしっかりやれてるなと思います。
ーー韓国でもリリースされた「Mirror」の映像を見たときに、ロックの要素がガンガン入っていて「新しいちゃんみなサウンドだ」と驚きました。ただ、アルバムを聴くととても馴染んでいて。
ちゃんみな:「Mirror」とか「I’m Not OK」とか、ロック調の楽曲ですよね。私は昔からすごくロックファンで、ヒップホップと同じくらい聴いていたし、自分の要素ではあったんですけど、当時はまだ歌唱力がなかったり、スキルがそこに辿り着いていなかったからできなかったんですよ。私が新しいことを始めるときは、自分ができるようになったタイミングで。何度も挑戦して納得できる作品にならなかった中で、今回はやっとレベルアップしてきて、歌えるようになったのが大きいですね。
ーーアヴリル・ラヴィーンが好きだというお話も聞きましたが、カラオケなどでは歌ってました?
ちゃんみな:歌ってました! アヴリルからロックに出会って、そこからNICKELBACKとか、2000年あたりのバンドは基本的に全部聴いていたし、エルヴィス・プレスリーやThe Beatlesまでさかのぼったり。アヴリルのおかげでロックという文化を掘ることができたし、ほとんどの曲を歌えるくらい聴いているので、影響は絶対に受けていますね。
ーーアヴリル・ラヴィーンのどのようなところに惹かれましたか。
ちゃんみな:アヴリルは何事もはっきり言うし、本当だったら隠したいところも歌うじゃないですか。私の中では、ヒップホップは「ちくしょう!」と思わざるを得ない状況から、「ちくしょう!」というリリックを怒りのように歌っているイメージがあるんですけど、ロックはどちらかと言うと、環境は恵まれていても、「私はこんなに悲しい」「超ロンリーだ」「心が不健康だ」と訴えるイメージがあって。
私的には、そのどちらにも共感する部分があるんですよ。いじめがあったり、日韓のことがあったり、そんなにお金がなかったというところでヒップホップに共感できる。だけどちゃんと学校に通えていて、友達もいて、今はデビューしてある程度お金もあるのに、なんでこんなに寂しいんだろう、というのがロックのバイブスへの共感につながっていて。そういう二本立てというか(笑)。
ーーなるほど。システムや環境と戦うという面と、たとえ環境が整っていても寂しいという面と。今度のアルバムにはその2つの要素が共存しているように感じます。
ちゃんみな:Green Dayもすごく好きで、「Basket Case」なら、病んでドクターにかかったら「君はセックス不足だ」と言われ、それで売春宿に行ったら「あなたの人生は退屈だ」と言われ、俺はおかしくなっているって。病院に行くお金があっても、精神を病んでしまう。精神的な弱さと環境的な報われなさの両方があるんです。