syudou、自身最大規模のライブ『我武者羅』での高揚感 さらなる高みへと向かう貪欲なステージに
昨年8月に中野サンプラザホールで行なわれた初の有観客ライブ『syudou Live 2022「加速」』を経て、自身最大規模となる幕張イベントホールでのライブ『我武者羅』を開催したsyudou。
まずステージには黒装束に鬼の面をつけたダンサー5人が現れ、踊り出す。後方からさらに鬼の面をつけた人物が現れ、仮面を外すとsyudouが。印象的な演出の後に始まるのは、ライブ直前の3月30日に配信リリースされたばかりの「ギンギラギン」。〈俺はこの人生をギンギラギンに輝かせてくだけだな〉と剥き出しの野心を歌った楽曲で、「バカでけぇことやろうぜ幕張!」と、歌詞になぞらえて会場にシャウトする。もったいぶることなくしょっぱなから新曲をぶちかます気前のよさだ。続けて、憧れを振り切り、自分の道を進む決意を表す「いらないよ」を披露し、『我武者羅』は景気よく開幕した。
改めて、自身最大規模になる会場を見渡し、「初めまして幕張! こんな景色になるんですね。皆さんのことが大好きになる景色です。今日はマスクでの声出し解禁なので、次の曲盛り上がってくれますか?」と呼びかける。威勢よく応える観客に対し、「いいね! このままよろしくね!」と、嬉しそうに始まるのは「邪魔」。syudouが声出しOKのライブを行うのは今回が初だが、そうとは思えないほど慣れた煽りを受けて、サビの〈ラララ〉のシンガロングが徐々に強まり、大きな渦のようになっていく。
アーティスト・syudouの楽曲の魅力の一つは、「もっと上に行きたい、まだ足りない」という貪欲さをまったく隠すことなく、露骨に吐き出してくれるある種の突き抜けた清々しさだ。ライブ序盤は、そんなsyudouらしさ満点の、好戦的で飢餓感剥き出しの楽曲が続く。
4曲目は「たりねぇ」。社会現象化したAdoの「うっせぇわ」の作詞作曲者として一気にメジャーシーンに躍り出たsyudou。側から見れば十分な成功を収めているが、それでも〈まだまだ足りないアタシは足りない〉と赤裸々な貪欲さをまき散らす。
さらに、イントロが始まるなり歓声が上がったのは「アンチテーゼ貴様 -改-」。会社員のフラストレーションが込められた「アンチテーゼ貴様」を、会社を辞め、本格的にアーティストとして活動するようになったライフステージの変化に合わせてアップデートした楽曲だ。息苦しい会社員の立場から解放されて順風満帆――かと思いきや、否応なく大衆に注目されるようになった新たなストレスへの毒を吐きまくる。さらに、惜しみない炎の演出で歌う「狼煙」は、楽曲のテンションは淡々としつつも、その奥にふつふつと沸くマグマのような野望が見え隠れする。いつまでも満たされない飢餓感を持ち続けることこそがsyudouにとっての原動力なのだと思わされるセットリストだ。
「『狼煙』を作ってからライブで火を出したくて、ようやく出せました」と満足気。そして、「僕はちょいとばかしギターを弾けるので、ここからは竿物パートです。かっこつけていい?」とギターを掲げて見せ、照れたように笑う。そして、メロウなギターの弾き語りから始める「笑え」。爽やかで気持ちのいいバンドサウンドで伸びやかに歌い上げ、さらに「キャラバン」、静かなピアノソロから始まる「フラミンゴ」を立て続けに披露する。
「次の曲は協力してほしい。サイリウム持ってなくてスマホ持ってる方はライトをつけて」と呼びかけると、青いサイリウムと白いスマホライトで一気に会場が明るく浮かび上がる。スクリーンに映し出される、syudouの後ろ姿と無数の明かりの灯る会場の光景が美しい。明かりがゆったりと揺れるなか、ミドルバラード「灯火」を歌い上げた。
「次はクラップ系やるけどいいですか?」と呼びかけると、メロディはまだ鳴らされていないにもかかわらず、ビートに合わせ、会場は心得たように一つの手拍子を鳴らし始める。それを見たsyudouは、「せっかくなのでアリーナとスタンド分けてやりましょうか」と、アリーナとスタンド順番に手拍子を叩いてもらい、会場に一体感を作り出していく。「この調子で次の曲行きましょう!」と、ボカロPとしての代表曲の一つでもある、不穏でありながらキュートな「ビターチョコデコレーション」に突入していく。
当初は声出しにややためらいの見られた会場も、ここまでくると充分に火がついている。syudouは「みんなが頑張ってくれたから、次は俺がみんなのとこ行っちゃうよ!」と、ステージを下り、鬼面ダンサーを従えて「へべれけジャンキー」を歌いながらフロアを練り歩く。ステージに戻ると、「めっちゃ近かったぜ、最高だったぜ。続けて酒の曲、行っちゃおう!」と、「コールボーイ」を披露。ステージの端から端まで歩き回り、飲んだくれソングを大迫力のがなりを交えて歌い上げた。