TOOBOE、圧倒的な完成度と熱量見せた『美味しい血液』ツアー最終日 ファンに誓った武道館という目標

 音楽クリエイター johnによるプロジェクト・TOOBOEが4月23日、渋谷CLUB QUATTROにてライブを開催した。この日は自身初となる東名阪ワンマンツアー『美味しい血液』の最終日。満員の会場で行われた本公演は、メジャーデビューしてからちょうど1年経つ彼が、これまでに遂げた成長を見せつつ、ファンに向けて今後の明確な目標を誓ったライブであった。

 開演すると1曲目は「毒」でスタート。序盤から息の合ったバンドメンバーとの掛け合いが繰り広げられた。この1年ほどでバンドのグルーヴは醸成されている。ブラスファンク調のキラーチューン「爆弾」では太いベースのうねるフレーズと、軽快なキーボードソロが響き渡り、会場の視線をグッと引き込む。さらにデビュー曲「心臓」ではオーディエンスの手拍子がステージを下支え。恒例となっている間奏の三三七拍子は、現場の一体感を象徴していた。

 「ダーウィン」を歌い終えると一旦、ここで小休止。すでに汗だくになったというTOOBOEは、会場を見渡しながら「お越しいただきありがとうございます」と丁寧に話し始めた。「すごい人の数ですね。大阪、名古屋の倍くらいの人が入ってます。こんなにたくさんの人を“見くだす”のは……」と言うと、客席から爆笑が起きた。今回のライブは、こうした適度に笑いを交えたトークで観客を楽しませる姿が印象的。TOOBOEとファンの間にある確固たる絆が感じ取れた。

 続いて「しっとりとした曲を」と前置きしてから「水泡」を披露。薄暗い青い照明の中で、独特のメロディと複雑なコード感によるディープなサウンドが会場を包み込む。そこから「濃霧」「ivory」とドープな世界観の楽曲を立て続けに歌った。TOOBOEの歌声は、トゲがありながらもどこかに色気があり、ワンフレーズごとにその表情を変える。怒っているようで、同時にどこか悲しそうでもあるのだ。音楽性も一筋縄ではいかないものが多いが、それでも最終的にポップスにまとめあげる手腕が素晴らしい。

 ところで今回の公演は、観客が声を出せるようになったことで可能になった演出が、ライブによいグルーヴをもたらしていたと思う。そのよい例と言えるのが「錠剤」での一幕だ。イントロに大きなシャウトのあるこの曲。SEでそのまま流していたこともあったが、この日は観客に参加してもらうという演出に。本人がお手本を見せた後に観客の練習タイムへ。悲鳴のようなものや怒号のようなもの、それぞれ思い思いにシャウトする。これにより実際の演奏は迫力抜群のパフォーマンスとなり、ライブ会場ならではの光景が広がった。そして、勢いそのままに「敗北」へ。中盤になるにつれ演奏陣も熱を帯びていく。TOOBOEも呼応するように、声に力が込められていた。

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