「夢を見れなくなったらもったいない」The Orchard 鈴木竜馬氏が目指す、グローバルヒットへの新たな道筋

The Orchard 鈴木竜馬が目指す道

「アーティストサービス」によってグローバルヒットへの足掛かりを作る

――なるほど。そういった優位性を持っている中で、4月から始まる「アーティストサービス」というサービスは現状とどう変わってくるのでしょうか。

鈴木:「アーティストサービス」とは、従来の手数料よりも少し多くの手数料を頂戴する代わりに、プロモーションのお手伝いと、我々ならではのより深い分析やレビューを提供するサービスです。たとえばメディアのプロモーションで言えば、人的リソースが限られている中なので、「ラジオで200回流す」というようなことはできません。そのため、アーティストや作品によってプロモーションをカスタマイズするんです。テレビなら歌番組だけではなくて報道番組の方がいいかもしれないとか、ラジオならもう少し深く刺してオンターゲットなことをやっているような番組でプロモーションしてみたりとか。当然、オンライン上のマーケティングも色々なところでやっていかなければいけない。加えて、現行のサービスだと、お互いなかなかアナリティクスのツールを使い切れない部分もあるので、新しいサービスでは我々がナビゲートをしながら、どうソーシャルに運用していくかなどをお手伝いして、グローバルヒットへの足掛かりを作ります。

 さらに、The Orchard Japanはソニーミュージックグループの各部門と連携して、たとえばグッズを作るのが追いつかないならグッズづくりのソリューションサービスを提供したり、今まで一人でやってきたけれど規模が大きくなってしまってマネジメントのファンクションがほしいというなら、SME(ソニー・ミュージックエンタテインメント)のRED やSMA(ソニー・ミュージックアーティスツ)、SML(ソニー・ミュージックレーベルズ 、JEDI(次世代)などへ適宜紹介したり。他にもファンクラブ制作、タイアップコーディネート、ライブ制作など、様々なファンクションがあります。それぞれのパートを切り取って、その部分の料率をいただきながら、よりカスタムしたプロモーションのお手伝いをアーティストサービスという領域で始めます。このサービスは、UKやUSを中心にすでに始まっているんですが、いよいよこの春からは日本でも走らせることになりました。

――将来的には、対アーティスト向けにまで発展していく可能性もあるんでしょうか。

鈴木:アナリティクスのツールを提供することにより、自分の楽曲がどこでどういう風に跳ねているのか気づくことができるだけでも、アーティストにとっては相当なアドバンテージになると思います。そういったアナリティクスツールのみを提供するサービスも秋以降から始めたいなと考えています。手取り足取りサポートすることはできませんが、むしろ今の時代のネットリテラシーの高い子なら、ポンポンポンとツールを使える子も多いと思います。

――その中で才能を発掘できる可能性もありますよね。

鈴木:そうなんです。我々は常にバズをウォッチしていますし、「フリーでやってね」と言いつつ、もちろん担当はいるので、The Orchardの中でアップセルしていく場合もあるし、もしかしたらメジャーを夢見ていくこともあるでしょう。そういった意味では、新人開発という意味のファンクションでもありますね。

――かなり楽しんでやっていますね。

鈴木:めちゃめちゃ楽しんでますよ、周りからも「楽しそうだね」ってよく言われます(笑)。とはいえこのマーケットもレッドオーシャンではあるので、ここからは楽しいだけでなく、僕らの優位性を真摯に伝え、理解してくれるアーティストやマネジメントさんと世界を夢見ていけたらと思います。あとは、久しぶりに洋楽とも向き合えていることもすごく楽しいです。前職では、宣伝部長としての立ち位置では洋楽にも携わりましたが、改めて邦洋問わないサービスに身を置くことにより、従来のメジャー型ではない洋楽のヒット作りも模索していけたらと。大きなフェスに伴うプロモーションだけでなく、コンサートプロモーターの方々ともイベントの企画から向き合わせていただき、アーティストを呼ぶところから会話を持つ的な? これは、まだまだ構想段階ですが、すでに幾つかのコンサートプロモーターの方々とも会話を持ち始めたりはしています。

 ただ、いずれにせよ仮にサブスクライバーが2000万人で止まってしまえば、最終的には限界値の決まった中でのシェアの取り合いになる。そういった根本的なマーケットの構造も踏まえた上で、どう戦っていくのか。シェアを取りにいくのか、もっと違う魅力を伝えるのか。この先どういう風になっていくのかは誰もわかりません。フィジカル、ダウンロード、サブスクまでの流れはまだなんとか理解できたと思いますが、そこからSpotifyやApple Musicのようなフル尺の音源で勝とうではなく、まさかTikTokやYouTubeショートに代表されるショート尺の音源が増えて、しかもビジネスとしても大切になっていくというのは、みんな中々読めなかったと思うんですよね。配信の中でまたその細分化が起こるとは。それらを細かくマネタイズできるディストリビューターという立ち位置が当面すごく大事になってくるんだろうなと思っています。そういう意味でも音楽業界の新たな潮流の真ん中でビジネスできていることに非常にワクワクしています。

■関連リンク
The Orchard Japan公式HP
https://www.theorchard.com/

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