フレデリック、無双状態で駆け抜けたNHKホール公演 ディープな演出から完璧なラストシーンまで、見どころ満載なステージに
ところで、昨年6月の代々木公演(『FREDERHYTHM ARENA 2022~ミュージックジャンキー~』)でハイライトを担った「ジャンキー」が早くも3曲目で披露されたのは、新曲が充実しているからだろう。その証拠にこの日のライブでは『優游涵泳回遊録』収録曲が中心となり、印象的な場面を多数作り出していた。例えば、車のヘッドライトを思わせる照明が揺れるなか披露された「midnight creative drive」は、今までのディスコチューンとはまた違う軽妙さがあり、セットリスト全体のいいスパイスになっていた。また、フレデリックのワンマンといえば、ミドル~スローナンバーを中心とした中盤ブロックが見どころの一つ。その中の1曲として披露された「FEB」は間違いなく一人ひとりの心に焼きついたことだろう。アンビエントな残響と繊細な手つき。リズム主体でミニマムにまとめた新アレンジの「ナイトステップ」から、時間や空間の感覚を溶かしながら、粘っこく、ミステリアスに聴かせた「峠の幽霊」を経て、風を視覚化したような模様を紗幕に映しながら演奏する「FEB」の奥深さに至る流れは、おそらく「FEB」があったからこそ生まれたもので、それを踏まえてもこの曲の功績は大きい。このブロックは音色やフレージングもなかなかマニアックで、メンバーも「いやー、めっちゃ気持ちいいな、NHKホール」と満足げな様子だった。観客からすると、バンドの演奏に自分の想像力を押し広げられ、新しい何かを発見し、世界はこんなにも面白いのかとワクワクさせられる瞬間の連続。そんな演奏の大元にあるメンバーの技術と感性や、それらが時間をかけて音楽へと結びつく過程に対し、改めて拍手を送りたくなる。
疾走感マックスの「銀河の果てに連れ去って!」などで駆け抜けながら、あっという間に本編ラストの「虜」へ。ファンキーなビートに乗って、高橋、康司、赤頭が順にソロを披露。さらにコール&レスポンスのあと、健司がロングトーンを響かせるなど名場面満載だが、アウトロに入ってもバンドは勢いを落とすことなく、むしろどんどん白熱していった。いよいよライブが終わりそうだというタイミング。緞帳が閉まり、観客から見えなくなっても、4人は向こう側で楽しそうに音楽を鳴らしている。まるでこのライブが終わっても楽しい時間は続くのだと言っているみたいに。客席を出て再び日常に戻った時、凝り固まらず、やわらかい心で人生を楽しむためのヒントを、私たちはこのライブを通じて手渡してもらったのかもしれない。バンドのキメとともにツアータイトルがドンと出る完璧なラストシーンに拍手しながらそんなことを思う。
そしてアンコールでは「オドループ」「スパークルダンサー」という新旧代表曲というべき流れ。アウトロで加速するライブアレンジを施した「オドループ」の熱狂を大きく飛び越えていく「スパークルダンサー」の存在が頼もしく、痛快に感じられた。太刀捌き鮮やかと評したくなるほど精度の高いリズム、キメというキメが見事にキマッていく瞬間の連鎖が、音楽とともに動きたくなる喜びの感覚をオーディエンスに継続的にもたらす。こうなったフレデリックはもう誰にも止められない。MV同様、輝くスパンコールを背負って演奏する4人は無双状態といった感じだった。
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