香取慎吾、ワンマンライブ『Black Rabbit』有明アリーナ公演完全レポ 1人のスターが作った新たな伝説のステージ

稲垣吾郎、草彅剛の名前も飛び交った爆笑MC

 オープニングから怒涛の6曲ノンストップ披露に、さすがに「はぁはぁ」と息切れが止まらない香取。観客がニコニコとその呼吸が整うのを待っていると「なんで笑ってるの? 笑ってるけどさ、久々のスタンディングでみんなだって同じでしょ?」とイジって笑いを誘う。

 そのまま「アリーナ!」「こっち側!」「2階!」とエリアごとに客席の拍手を求めてコミュニケーションを図っていくのだが、ちょっぴり複雑な客席の構造に観客が拍手にためらっていると「あれ? そこあんまり盛り上がってない?」なんて畳み掛けてみる。また、香取が3階だと思っていた席が「え、4階なの? なんで、4階なの?」と教えてもらうなど笑いの絶えない時間が続く。

 香取は取材に入ったメディア陣のことも「大きな拍手を!」と紹介していく。だが、すぐにふと我に返ったのか「1人だとちょっと余計なことしゃべっちゃいそう」「メディアのみなさん、なんかイジりすぎたみたいですみません。そういうのあまりしない子なんで……テンション上がっちゃって」と反省してみせる。

 そして、香取を象徴する緑色のペンライトに染まった客席を眺めて、改めて「最高の景色です、ほんと」「こんな大きな会場でね、一人でライブする日が来るなんて、ほんと感激です、ありがとう」とお礼を言うと、NAKAMAたちから大きな拍手が贈られる。その光景に思わず胸が熱くなった。

 胸に手を当てて深くお辞儀をすると「ありがとう、拍手で泣かすなよ〜!」とニッコリ。スーパースターの風格から、まるで少年のようなはしゃぎっぷりまで。いろんな顔をひとつのステージで見せてくれた香取。その切り替えスピードにも圧倒されるが、さらに香取の仕掛けは続く。

 ダンサー紹介を挟んで、きっちりとヘアセットをして、黒いタキシード&蝶ネクタイ姿といったベテラン歌手さながらの風貌で再登場。そして香取の後ろからは生バンド&コーラスが! 生演奏ならではのグルーヴ感で披露されたのは「こんがらがって」「Slow Jam」「シンゴペーション」。もちろん演出もドライアイスにレーザーライトと華やか極まりない。ささやきボイスあり、シャウトありと、香取の声も楽曲によってくるくると変わって心が躍る。

 そんな香取のステージを見て、MCでは稲垣吾郎から「褒められた」という報告もあった。東京公演1日目を見て電話をくれたという稲垣。「電話が鳴るのは事件があったときくらい」というほど珍しい事態なのだが、それくらい稲垣の心を打つものが、このステージにあったということだろう。「あの曲で涙したよ」なんていう言葉も飛び出したそうだが、あえてどの曲かを言及しないのも香取のプロ意識を感じたところ。稲垣の涙を誘ったのはどの曲なのか、考えながら後半を楽しむこともできた。

 「で、今日はね、草彅剛が……来てないんですよ(笑)」と、客席を翻弄して笑う一幕も香取のやんちゃな末っ子な顔が出てきて楽しかった。ドラマ『罠の戦争』(カンテレ・フジテレビ系)の撮影で多忙を極める草彅が、東京公演を観覧することは叶わなかったが、その主題歌には香取の新曲が起用されている。たとえ直接会えていなかったとしても繋がっている。そんな絆を感じることができた。

まばゆい光に包まれた圧巻のクライマックス

 「こんなに最高な日にもっと最高な人がいるみたいです。今日、誕生日の人!」と客席を巻き込み「みんな誕生日おめでとー!」の掛け声でスタートしたのは「Happy BBB」。ここではダンサーと共に香取と並ぶくらいの大きなくろうさぎも登場。香取がくろうさぎの頭をポンポンする仕草も微笑ましい。

 まるでバースデーパーティーのような盛り上がりを見せた後は、香取が愛してやまない東京タワーのビジョンをバックに「道しるべ」を熱唱、キラキラと輝くビジョンの映像と香取自身が発するエネルギーが共鳴しているかのような光景が広がると、花火の特効でさらに会場を熱くさせる。

 バンド紹介を挟んで、再登場した香取の衣装はブルーのロングジャケット+赤いパンツというカラフルなものだった。そのまま「Neo」「嫌気がさすほど愛してる」と伸びやかな歌声で観客を魅了。歌うほどにその声量がより豊かになっていくのを感じるから驚きだ。

 そして、青いジャケットとベストを脱いだ代わりに赤のコートを羽織って、全身真っ赤な衣装にチェンジ。すると照明も客席のペンライトも赤一色の世界に塗り替えられる。披露されたのは、もちろん「Anonymous」だ。渾身の歌声とはまさにこのことを指すのだろう。その色に象徴されるように、まさに血湧き肉躍る迫力のステージとなった。

 「信じられないんだ、嬉しくて」そうラストのMCで語ったのは、先輩のバックについていたころの自分から今までの歩みを振り返るもの。憧れのマイケル・ジャクソンを見た東京ドーム。そのステージに自分が立った時、ステージに手をついて「マイケル、やっとここまで来たよ」と報告したそう。「そのあと1回ステージに手をついて“1回ステージから降りるね”ってマイケルに言った」とも。

 もう大きな会場でライブをすることは難しいかもしれない、そのくらいの覚悟で新しい地図を広げたのだろう。だが、今こうして1万人クラスのアリーナでライブをしているということ。それも目まぐるしい変化の中で、変わらず香取を応援し続けたNAKAMAがいてこそだろう。

 「これからもずっとずっとみんなと一緒に楽しい時間を過ごしましょう。一緒に明日を生きましょう。  一緒にがんばりましょう!」と愛のこもったメッセージの後に「ひとりきりのふたり」を丁寧に届けようとする香取の姿に胸がいっぱいになる。そして、ミラーボールで反射するまばゆい光と共に披露したのは「FUTURE WORLD」だ。〈どんな未来が描けるかな?〉と問う歌詞に、香取が自分自身の、そしてNAKAMAの未来を照らす光にならんとする覚悟を感じることができた。

 アンコールでは、黒地にゴールドの刺繍が散りばめられた衣装に身を包んで再登場。その姿は「ラスボス感」と表現したくなるほどのオーラがビシビシと感じられるものだった。披露されたのは、待望の新曲「BETTING」だ。ロングジャケットを翻し軽やかなステップを見せながら、ずっしりと胸をつく歌声のバランスが香取慎吾らしさ全開だ。

 そして、ラストソングは「東京SNG」。ドラムの小気味良いイントロが流れると、香取の合図で銀テープが噴射される。自然と湧き上がる手拍子。リズムに合わせて観客席が揺れているのがわかる。さらに盛り上げるべくスタンドマイクを抱えてステージを駆け回る香取。まるで香取と会場全体がスイングするような一体感に包まれた。

 割れんばかりの拍手喝采を受けて、香取も「どーもありがとーーー!」と叫んだ。指ハートや投げキスをしながら「4階ありがとー!」とMCでのやりとりを思い出させる笑いも忘れない。これだから、香取のライブはやめられない。歌あり、ダンスあり、笑いあり、感動あり……そんな楽しいひとときをまたすぐにでも共有したくなる。「また一緒にあそぼーねー! アイシテマース!」お約束とも言えるこの香取の言葉が、これからも会場や形を変化させながらも続いていくことを切に願っている。

■セットリスト
Metropolis
Prologue
Trap
I'm so tired
Catharsis
10%
こんがらがって
Slow Jam
シンゴペーション
Happy BBB
道しるべ
Neo
嫌気がさすほど愛してる
Anonymous
ひとりきりのふたり
FUTURE WORLD

En.
BETTING
東京SNG

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