チョーキューメイ、斬新なポップセンスはどこから生まれる? バンド結成から革新的EP『LOVEの飽和水蒸気量』ができるまで

「(音楽は)生きた証みたいなところもあります」(麗)

ーーデジタルシングルとしてリリースされた「溶けた魔法」は麗さん、空閑さんのツインボーカル。〈一生このままでいいよ 二人きり〉というフレーズもそうですけど、濃密なラブソングですね。

麗:夏にリリースする曲だったので、初夏の雰囲気だったり、汗を乾かすような風をイメージしていましたね。歌詞の内容としては、離れているけどつながっている二人を表現したくて。私のほかにもう一人の存在が必要だと思ったので、空閑さんに歌ってもらいました。爽やかなんだけど、じつは深い曲なのかな、と。

ーーそういう説明、制作のときもしてるんですか?

麗:しません(笑)。

空閑:こういうインタビューの場で初めて聞く話もありますね。「そうだったの? まあ、そういう曲になってるからいいか」みたいな(笑)。

麗:デモ音源を送るときも、特に説明はしていないんですよ。アレンジしているときにあまりにもイメージと違うときは、「やれやれ」って感じで説明してます。

チョーキューメイ 『溶けた魔法』 MV

ーー「ただいま」は、ピアノのバッキングと切ないメロディの響きが素晴らしいな、と。

麗:よかったね、れんぴ。

れんぴ:ありがとうございます(笑)。

麗:「ただいま」は雪の情景と、“家族は必ずしも尊いだけではない”という気持ちの主人公を描きたくて。マイナーコード全開のデモに、れんぴがピアノのリフを付けてくれました。主人公の気持ちの変化とともに曲が進むので、同じ展開は2度と来ないですよ。人生と同じです。

空閑:そうだね(笑)。この曲も全員で「ここで盛り上がりがほしいよね」とか「違うメロディを挟んだほうがいい」みたいな意見を出し合って。楽器隊が遊びながら弾いたフレーズがそのまま使われているところもありますね。

ーーいきなりジャズになったりしますよね。

麗:EPのなかに1曲くらい、そういう曲があってもいいのかなと。そのほうが自分たちも聴いている人も飽きないと思うし。

ーーなるほど。ちなみにこの歌詞で描かれてる家族観には、麗さんの実体験も反映されているんですか?

麗:え、どうだろう? ここまで悲観的ではないけど(笑)、すごくいいものだとも思ってないという感じですかね。バンドをはじめた頃は18歳だったので、その時期ならではの感情もあったんだけど、自分も年を重ねて……。21歳なんですけど、自分で家庭を持っている友達もいるし、「家族ってなんだろう?」とずっと考えているというか。

ーーそういう話もメンバーとするんですか?

麗:そんなにしないですけど、長い時間を過ごしているといろいろわかってきますからね。お互いの闇も見えてきたり。

れんぴ・藤井・空閑:(笑)。

ーー6曲目の「燃え尽きろ君の命」、7曲目「十三月の銀河」はロックバンド然としたアッパーチューン。

麗:最後の2曲は並びにもこだわりました。〈燃え尽きろ君の命 あの彗星よりも早く〉(「燃え尽きろ君の命」)、〈燃え尽きないでよ流れ星〉(「十三月の銀河」)がつながっているのもそうだし、「燃え尽きろ君の命」で描いたことを「十三月の銀河」では、もっと広い視点で見ているところもあって。作った時期はぜんぜん違うんですけど、通じるものがありますね。自分を慰めたり励ます感じで書いた曲も、聴いてくれる人が「励まされてる」と思ってくれたら素敵だなと。とにかくアッパーな気持ちをアッパーなビートに乗せました。

チョーキューメイ『十三月の銀河』MV

ーー2曲とも、目標や夢に対する強い気持ちが伝わってきます。チョーキューメイの活動が始まって約2年半。「このバンドでやっていこう」と決めた瞬間のことを教えてもらえますか?

麗:なるほど。れんぴからいく?

れんぴ:(笑)。バンドが始まってしばらくした頃に、イヤになってしまった時期があって。

麗:要はモチベ(モチベーション)がなかった。

れんぴ:そう。やりたいことがわからなくなっていたんですけど、活動の環境が変わってきて、ようやく楽しくなってきて。もともと僕は(自分の気持ちを)すぐに発信できなくて、なあなあに引き延ばすタイプなんですけど、そのおかげでまた楽しくなったのかなと。この調子で、新しいこと、楽しいことをいっぱいやりたいですね。

麗:“なあなあ”って悪い言い方だけど、楽しくなるまで待てる才能があるってことだよ。

空閑:自分は1枚目のミニアルバム(『約束に守られない』)が出来上がったときですね。客観的に聴いて「これ、すごくない?」と思って。僕は歌詞の好き嫌いのラインがはっきりしてるほうなんですけど、麗さんの歌詞はすごくいいなと。ふだんの生活や言動とのギャップというか、「なんでこの子から、こんなにすごい歌詞が出てくるの?」って。最初の頃は、“テンプレ若い子”だと思っていたので……。

麗:マジで違うから(笑)。

空閑:年が少し離れていることもあるけど、使っている言葉とかもよくわからなかったんですよ。そもそも“れんぴ”って何? って。

麗:確かにチャラいかも。

れんぴ:(笑)。

空閑:なのに歌詞もアレンジもよくて、「これはいけるな」と。打算的かもしれないけど、自分の年齢的にもギリギリだったし、この波に乗らずしてどうする? っていう。

藤井:私はいちばん後から入ったこともあって、最初はフワフワした気持ちだったんですよ。意識が変わったのは、初ワンマン(2022年7月)ですね。たくさん曲をやったんだけど、「もっとやりてえな」って明確に思ったので。

ーー麗さんはどうですか?

麗:続けることしか考えていないです(笑)。でも、そうだな、自分は好きな曲をずっと聴いちゃうタイプなんですけど、好きな曲を自給自足している感じもありますね。チョーキューメイはまだ始まったばかりなので、音楽の方向性が定まっていなくて。もっといろんなことに挑戦できると思っています。自分の成長も歌詞やサウンドに反映されるし、生きた証みたいなところもありますね。つらいこともターニングポイントだし、「ここをスタートにすれば、まだがんばれる」という精神性もあるので……。そこまで等身大のこと歌うタイプではないんだけど、自分の経験や感情を解釈して曲にするのは面白い行為だなと。

空閑:確かに過去の曲を聴き直すと、「この頃の麗さんっぽいな」と感じますね。

「みんなが褒めまくっているなか、ひとりで戦慄してました」(藤井)

藤井ごん

ーーチョーキューメイの音楽の軸は、やはり麗さんの歌だと思います。特に感情の表現が素晴らしいと思いますが、麗さん自身はどんなことを意識していますか?

麗:そうですね……。“歌う”っていう言葉を考えてみると、メロディと歌詞が存在していて、そこに歌声が乗って。そのすべてがシンクロしていないといけないし、普段の行動も合っていたほうがいいと思うんですよ。普段から嘘をつくような人は思わせぶりな歌詞が似合うだろうし、そこは矛盾がないほうがいいのかなと。

ーー生活や考え方、性格と、歌の内容や歌い方が重なったほうがいい、と。

麗:はい。レコーディングのときは、歌詞を見ながら歌っています。セリフに近いというか、「ここは悲しく歌ったほうがいいな」とかも自分で決めて。たとえば「故のLOVE」だったら、最初はかわいく、あどけない感じで、ダンスビートになったら巻き舌で歌ってるんです。“LOVE”で殴りにいく感覚(笑)。楽器もそういう表現だから、歌い方も合わせたほうがいいなって。

ーーメンバーのみなさんは麗さんのボーカルに対して、どんな印象を持ってますか?

れんぴ:直感的な勢いもあるし、歌詞に合わせた表現もあって。急に粗削りになったり、いきなり整ったり、聴いていて楽しいですね。ライブでもボーカルを大きめに返してもらっているんですけど、そのときの気持ちやコンディションによっても違うし、どう歌うかが毎回楽しみなんですよ。演奏していても楽しいし、レコーディングもボーカルのRECがいちばんテンション高いです。

空閑:ずっと褒め続けてるよね(笑)。技術的には、まず音域がめちゃくちゃ広くて。例えば裏声で歌ってるパートを「地声で歌ってみて」と言うと、すぐに対応できるんですよ。

藤井:さっきも言いましたけど、私は高校のときも麗とバンドをやっていて。専門学校でボーカルと一緒に演奏したときに、「麗、やっぱりすげえんだな」って思いましたね。このバンドに入ったときも、「すごいな」って。

空閑:総じて“すごい”になるね(笑)。

麗:それを細分化して話してください(笑)。

藤井:今回のEPでいうと、「最終列車で君に会いにゆく」のレコーディングが印象に残ってます。当日まで歌詞とメロディが決まってないパートがあって。

麗:その日の朝方まで考えていたんだけど、全然決まらなくて、「もう諦めていいかな」って(笑)。みんながベーシックを録ってる間に脳内でメロディを考えて、その場で歌詞を書いて、それを歌って。

藤井:それがすごかったんですよ。みんなが褒めまくっているなか、ひとりで戦慄してました。

ーーEP『LOVEの飽和水蒸気量』ではじまるチョーキューメイの2023年も楽しみです。

麗:「故のLOVE」もそうですけど、チョーキューメイはポップ路線が似合っているなと思えたのは大きいですね。ただ、あまりジャンルを狭めるときつくなるので……。

空閑:今の気持ちはポップってことですね。

麗:そうです! 自分たちにとっても革命的なEPになったし、ここから何がはじまるんだろう? とワクワクしてもらえると嬉しいです。

■リリース情報
3rd EP『LOVEの飽和水蒸気量』
【CD】 2023年1月25日(水)発売
¥2,200[税込]・CQM-0003/発売元:神宮前レコード・販売元:PCI MUSIC
https://choqmay.lnk.to/lovenohouwasuijokiryo-cd
【配信】 2023年1月25日(水) 0時より順次配信
https://choqmay.lnk.to/lovenohouwasuijokiryo

《収録曲(全7曲)》
1.故のLOVE
2.心を照らせ! (2022年7月期放送:テレビ大阪・真夜中ドラマ「イケメン共よ メシを喰え」エンディングテーマ)
3.最終列車で君に会いにゆく (2023年1月放送:メ~テレ60周年ドラマ「最終列車で始まる恋」主題歌)
4.溶けた魔法 
5.ただいま
6.燃え尽きろ君の命 
7.十三月の銀河

■ツアー情報
チョーキューメイ『LOVEの飽和水蒸気量』ツアー
<名古屋公演>
■日程:2023/2/11(土・祝)
■時間:OPEN/ 18:00 ・ START/ 18:30
■会場:RAD SEVEN
■出演:チョーキューメイ / ペンギンラッシュ
■問合せ : RAD SEVEN / TEL:052-253-5936

<大阪公演>
■日程:2023/2/12(日)
■時間:OPEN/ 18:00 ・ START/ 18:30
■会場:Live House Pangea
■出演:チョーキューメイ / (夜と)SAMPO
■問合せ : Live House Pangea / TEL:06-4708-0061

<東京公演>
■日程:2023/2/18(土)
■時間:OPEN/ 18:00 ・ START/ 18:30
■会場:Shibuya eggman
■出演:チョーキューメイ(ワンマンライブ)
■問合せ : Shibuya eggman / TEL:03-3496-1561

【チケット料金】  3,500円(税込・入場時ドリンク代別途必要)/スタンディング・整理番号付き
主催:UNIVERSAL MUSIC ARTISTS LLC
企画・制作:UNIVERSAL MUSIC ARTISTS LLC / Lawson Entertainment, Inc.

■関連リンク
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サイン入りチェキプレゼント

チョーキューメイのサイン入りチェキを2名様にプレゼント。応募要項は以下の通り。

応募方法

リアルサウンド公式Twitterか公式Instagramをフォロー&本記事のツイート、または応募ツイートをRTしていただいた方の中から抽選でプレゼントいたします。当選者の方には、リアルサウンドTwitterアカウント、もしくはInstagramアカウントよりDMをお送りさせていただきます。
※当選後、住所の送付が可能な方のみご応募ください。個人情報につきましては、プレゼントの発送以外には使用いたしません。
※当選の発表は、賞品の発送をもってかえさせていただきます。
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<締切:2月10日(金)>

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