香取慎吾、ステージでこそ増す輝き 初単独アリーナライブに見た、光を目指して突き進む真のエンターテイナーとしての姿

 香取慎吾のオーラが見えた気がした。それはスポットライトを浴び、観客からの拍手を受けるほどに大きく輝きを増していくようだった。

 1月21日、22日に東京・有明アリーナで開催されたライブ『Black Rabbit』。「今日は関係者の席にメディアのみなさんがすごい来てくれてる。メディアのみなさんに大きな拍手!」と香取がMCで紹介してくれたように、1月22日の公演を見ることができた。

 今回はソロアーティスト・香取慎吾としては初めてのアリーナクラスでのライブ。アンコールでは月曜夜10時より放送中の草彅剛主演ドラマ『罠の戦争』(フジテレビ系)の主題歌である新曲「BETTING」(香取慎吾×SEVENTEEN)も初披露された。SMAP時代から重ねてきたライブ演出の経験が凝縮されたかのような見事な構成とパフォーマンス。その一つひとつについて大いに語りたい気持ちは山々だが、このライブは3月14日、15日と兵庫・神戸ワールド記念ホールでも開催される予定だ。

 その日を楽しみにしているNAKAMA(ファン)のためにも、今回の記事ではセットリストや具体的な演出内容などには極力触れずに、ライブの雰囲気と「楽しい! 最高!!」と嬉しさを爆発させた香取の言葉をお伝えしていきたい。

個展『WHO AM I』からライブ『Black Rabbit』へ

 香取は、今回のライブと並行して個展『WHO AM I』を東京・渋谷ヒカリエ ホールAにて開催してきた。アイドル、タレント、俳優、芸術家、アパレルブランドディレクター、そして自分自身のプロデューサー……と、様々な顔を持つ香取。「自分は一体何者なんだ」と自分でツッコミを入れたくなったことから、浮かんできたのが『WHO AM I』というキーワードだった。

 そんないくつもの顔を使い分ける自分自身に、ときには「自分って一体何なんだろう」とネガティブに思う日もあったそう。そうした下向きな部分の化身ともいえる“くろうさぎ”を今、個展のマスコットやライブのタイトルに掲げるということ。闇の顔をもショーにしてしまう、エンタメの申し子の気概を見た気分だ。

 生きていれば下を向きたくなるような日は、いくらでもある。それでも、私たちが知る香取慎吾はいつだって「パーフェクトビジネスアイドル」だった。人として当たり前に抱える鬱屈とした思いや理不尽への怒りは、きっと絵に、歌に、ダンスにと昇華されていったのかもしれない。

 この日のライブでも香取は魂の叫びとも言いたくなるような、伸びやかな歌声を披露していた。それは後半になるほど、さらにパワフルに、そして気持ちよく通った。力強いラップに、クールなダンスサウンド、ミュージカルスターのようなしっとりと物語を想像させる楽曲から、まさにポップスターと言いたくなる希望あふれる歌まで。

 『WHO AM I』を地で行く香取だからこそ、1曲1曲で披露される世界観をガラリと変えることができる。早着替えのごとく変化する香取の表情、立ち姿、歌い方……。一体、どれだけの引き出しがあるのか。改めて、そのエンターテイナーとしての器の大きさに圧倒された。

MCでは“バラエティアイドル”の本領も発揮

 もちろんMCの時間となれば、バラエティアイドルの本領が発揮される。息つく暇もないほどに歌い続け、キレのあるステップを披露してきたことから、MCの導入はハァハァと呼吸がなかなか整わない。

 それを微笑ましく見守る観客に、「なんで笑ってるの? 笑ってるけどさ、久々のスタンディングでみんなだって同じでしょ?」とチャーミングに語りかける。また「2階!」「アリーナこっち側!」「真正面!」と、客席のエリアごとに拍手でコミュニケーションをとると、「一番上!……あれ、そこそんなに盛り上がってない?」と笑いを誘う流れも実に見事。その姿に、かつて『笑っていいとも!』で数え切れないほどお客さんと拍手で連携を取ってきたことが思い出される。

 そんな中、稲垣吾郎から電話がかかってきたというエピソードトークも飛び出した。「電話は事件があるときにしか鳴らないんだけど(笑)」と言いつつ、前日の公演を観に来ていたという稲垣が「よかったよ、昨日」と伝えてくれたというのだ。「吾郎ちゃんと僕が出会ったのはね、僕が小学校5年生のころ。そのころからずーっと一緒にいるの。いやんなっちゃうよね(笑)。その吾郎ちゃんが褒めてくれました」と嬉しそうに話す、末っ子な顔も彼の大きな魅力のひとつだと気付かされる。

 ところが、稲垣が来ていることをすっかり忘れていたという香取。カメラに今か今かと抜かれるのを身構えていた稲垣を想像すると実に微笑ましい。さらに、この日もキャイ~ンが来てくれたのを忘れそうになり、歌詞を間違えてしまうというハプニングも。そんな人間味あふれる部分を見せてくれるところも、また彼がトップスターの格を持ちながら、昔から知る「みんなの慎吾ちゃん」であり続けるという絶妙なバランスを成立させているのだろう。

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