GLAY TAKURO、人の心を癒すために音楽でできること ソロアルバムに込めた穏やかな日常への祈り

TAKUROが信じる“音楽の力”

――音楽がリスナーにもたらす影響についても聞かせてください。先日、ウクライナのシンガーと会う機会があり、「みんなが音楽を求めていて、ウクライナ国内でのコンサートの数が増えている」という話を聞きました。こういう状況になり、TAKUROさんご自身も“音楽の力”を実感する機会が増えているのでは?

TAKURO:それはおそらく、芸術全般に通じる話だと思いますね。同郷の歌手がその国の言葉で歌い、懐かしいメロディを奏でることは確かに癒しになると思いますが、それは音楽に限ったことではなくて。たとえば第二次世界大戦中、「戦地に送られた兵士たちは、絵が上手い仲間に自分の故郷の絵を描いてもらい、それを心の拠り所にしていた」という話があって。それも芸術の力だと思うんですよね。水や電気、食料などのライフラインがあれば人は生存できるかもしれないけど、人間らしくあるためには文化や芸術が必要。そのなかに音楽もある、ということだと思います。GLAYのファンの方から、「余命宣告を受けましたが、“次のGLAY EXPOに行きたい”と思い続けて、今も元気でいます」といったメッセージを受け取ることもあって。気力というものがあるとして、GLAYがその支えの一つになれているとしたら、こんなにうれしいことはないですよね。

――それも音楽の力、芸術の力なのかも。

TAKURO:“音楽の力”と言えば、「いやいや」と訝しく思う人もいるかもしれない。でも、「故郷の母親と電話して元気が出た」という経験を持っている人は多いと思うし、それと同じことじゃないかなと。よく思うんですが、ラブソングの最高峰は、母親が子供のために歌う子守歌なんですよ。ただ、それをずっと聴き続けることはできないし、その代わりとして僕たちのような職業があるんだろうなと。作品として世に出すときはスキルや品質などのプラスアルファの要素が必要だけど、人の心を癒したいという思いは同じ。それは絵画、小説、映画などとも共通しているでしょうし、日常ともつながっているんですよね。セキュリティブランケットのようなものというか。

――日常のなかで“これがあれば安心”というものですよね。その話は『The Sound Of Life』というタイトルにもつながりますね。

TAKURO:我ながら良いタイトルを付けましたね(笑)。1曲目の「Sound of Rain」にすごく手ごたえがあったので、最初はこの曲名をアルバムのタイトルにしようと思ってたんですよ。でも、TERUが描いてくれた絵を見たり、いろいろ考えているうちに“人生の音”のほうがふさわしいなと。いろんな方の日常に寄り添えるようなアルバムになってほしいんですよね。これだけ情報が押し寄せてきて、数多くの選択を迫られる毎日のなかで、誰かを静かに思うことや、時間という概念から解放されることを含めて、平穏に過ごすために必要なものが入っている作品だと思うので。だからこの作品にとっての一番の褒め言葉は「聴いてるうちに寝てしまった」なんですけどね(笑)。それくらい心を許して、ゆったりと穏やかな気持ちになってもらえたら大成功です。

――TAKUROさんご自身も、心の平穏を維持するために意識していることはあるんですか?

TAKURO:自分の心の中のコップに、どれくらいの水が入るかをとらえることができている人はとても幸せですよね。僕の場合はおそらく、曲作りに没頭することで、水が引くのを待っているんだと思います。もしくは仕事を忘れて、自然のなかに身を置いたり。ただ、今の社会においては、情報の洪水のなかで、すぐにコップが溢れてしまう人が多いでしょうね。

――従来の価値観が揺らいでいるし、信じられない出来事が続いてますからね。

TAKURO:そうですね。GLAYの『NO DEMOCRACY』というアルバムを作っていた時期、ずっと民主主義について考えていて。民主主義や自由は素晴らしいものだけど、拡大し続けた結果、インターネットのなかでは“たとえ人を傷つけようと、何を言ってもいい”という風潮が生まれてしまった。20世紀は資本主義と民主主義が絶対的な王者だったのに、少しずつ陰りが見えてきて。その良し悪しを判断できる人はいないと思いますが、本当に歴史は行ったり来たりなんだなと。そんな状況のなかで、自分の身を守る方法をいくつか持っておくことは大事ですよね。

――社会の状況が作品に影響することも大いにありそうですね。

TAKURO:特にGLAYの楽曲は、時代と手を繋いでいたくて。タイムレスな音楽、何年経っても古さを感じさせない音楽を目指す音楽家もいるし、それも立派だと思います。ただ、僕はそうではなくて、年数が経つと容易に古くなってしまう言葉を使うのが割と好きなんですよ。そうすることで、GLAYがどんな時代に存在したかわかるので。今回のソロアルバムはちょっと違うんですけどね。さっきも言いましたが、「滝の流れや雨の音は100年前も100年後も同じだろう」という感覚で作ったアルバムなので。

――普遍的な作品であると同時に、2022年だから生まれたアルバムなんだろうなと思います。『The Sound Of Life』の楽曲をライブで披露する予定はないんですか?

TAKURO:それこそお客さんが寝ちゃうんじゃないかな(笑)。この前、子どもと一緒にプラネタリウムに行ったときに「ここで『The Sound Of Life』の曲が流れていたらいいだろうな」と思って。やっぱり、“はい、聴いてください!”という感じで演奏するのは違うと思うんですよ。リラクゼーションというか、心穏やかでいられる環境のなかで、邪魔しない程度にかかっているのがいいんじゃないかな。

■リリース情報
TAKURO 3rd SOLO ALBUM『The Sound Of Life』
発売日:2022年12月14日(水)
配信:https://orcd.co/tsol
特設サイト:https://www.glay.co.jp/feature/TSOL

<収録曲>
1. Sound of Rain
2. Letter from S
3. Red Sky
4. When I Comb Her Hair
5. Pray for Ukraine
6. Ice on the Trees
7. A Man Has No Place
8. Bercy
9. Early Summer
10. In the Twilight of Life (featuring Donna De Lory)

<Blu-ray収録内容>
・「Red Sky」 Music Video

・観るヒーリング映像
1. Sound of Rain
2. Letter from S
3. Red Sky
4. When I Comb Her Hair
5. Pray for Ukraine
6. Ice on the Trees
7. A Man Has No Place
8. Bercy
9. Early Summer
10. In the Twilight of Life (featuring Donna De Lory)

・『The Sound Of Life』 Documentary & Interview 
レコーディング、Music Videoのドキュメント映像に加えて、レコーディングミュージシャンによるインタビュー映像を収録(約58分)

■イベント情報
TAKURO「The Sound Of Life」発売記念プラネタリウム&トークショー
日程:2023年1月6日(金)、10日(火)
時間:1回目開場18:00/開演18:30、2回目 開場20:00/開演20:30
場所:コニカミノルタプラネタリウム天空 in 東京スカイツリータウン®
東京都墨田区押上1丁目1番2号東京スカイツリータウン・イーストヤード7階
https://planetarium.konicaminolta.jp/tenku/

【チケット販売】
●ローチケ1次受付:受付期間:12月12日(月)15:00〜12月14日(水)23:00
https://l-tike.com/st1/takuro-thesoundoflife

チケット料金:
指定席:4500円(税込)
三日月シート:11,000円(税込) ※ペアシート。チケット1枚で2名様ご入場可能。
年齢制限:未就学児入場不可。
※開催施設への本企画のお問い合わせはご遠慮ください。

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