SARUKANIが振り返る『猿蟹大百科』や『BEAT X FES 2022』の思い出 東京開催『GBB2023』への考えも明かす

 SO-SO、RUSY、KAJI、Koheyからなるヒューマンビートボックスクルー・SARUKANI。2022年下半期もオフィシャルブック『猿蟹大百科』刊行、主催イベント『BEAT X FES 2022』の開催、“おむすびころりん”をテーマにした新曲「RICEBALL ROLLING」のリリースなど精力的な活動を続けてきた。今回リアルサウンドでは、半年間ほぼノンストップに駆け抜けてきた彼らの振り返りインタビューをセッティング。4人でおむすびを食べながら和気あいあいと語ってもらった。最後には、2021年、彼らの名前を広く知らしめた世界大会『Grand Beatbox Battle』の2023年東京開催に向けて、現時点での考えも教えてもらった。(編集部)【インタビュー最後にプレゼント情報あり】

『猿蟹大百科』は僕らを通してビートボックスにハマってもらえる一冊

ーー1stアーティストブック『猿蟹大百科』の刊行、主催した『BEAT X FES 2022』の大阪・東京での開催、そして新曲「RICEBALL ROLLING」のリリースと、下半期も話題が盛りだくさんです。それぞれお話を聞いていきたいのですが、まずは好評発売中の『猿蟹大百科』について、本書のプロデュースを手がけたRUSYさんから、あらためて見所を教えてください。

RUSY:SARUKANIを結成したルーツ、4人がそれぞれ、いちアーティストとしてどんな思いで活動しているのか、ということを余すところなく語っているので、ぜひそこを読んでほしいですね。ビートボクサー向けのループステーション解説はこの本にしか載っていないと思いますし、自信を持って届けられる一冊になりました。

SO-SO:今までの俺らの年表みたいなの振り返るのも面白かったし、SARUKANIがよく使う用語を出すのも面白かった! 他は?

Kohey:メンバーがお互いに似顔絵を描いたページがあって、これが面白いのでぜひ見てください。

KAJI:そこ(笑)!?

RUSY: でも、SARUKANIならではの内容かもね(笑)。

KAJI:確かに。僕が描いたKoheyの絵は最悪でしたね。大学の授業中に描いたもん(笑)。真面目な話をすると、まったく音声情報のない本というメディアでビートボックスをどう伝えるのか、という難しさもあったと思うんですけど、RUSYのプロデュースで、ビートボックスの魅力はもちろん、僕らがどんなアーティストなのかというところにフォーカスしてくれたので、僕らを通してビートボックスにハマってもらえる一冊になったかなと。

ーーカバー写真からインパクトがありますね。個別のカットもかっこいいですが、撮影はどうでしたか?

RUSY:いつもと違うスタイリングで、撮影のときから新鮮で楽しかったです!

Kohey:僕も衣装が好みの感じで、現場で見せてもらった写真の色味も含めて、好きなビジュアルが作れてよかったです。あとはコロナの感染予防のために、WILDCARD GUYS(SO-SO & KAJI)が大人しくさせられているのが面白かったですね(笑)。

KAJI:僕、あの日のためにちょっと痩せたんですよ。撮影したスタジオの雰囲気も初めてで、新しいアプローチができたかなと。僕の鼻筋がきれいに写っているので、みんなぜひチェックしてください(笑)!

国内外からビートボックス好きが集まった『BEAT X FES 2022』の思い出

ーーそして、大盛況だった『BEAT X FES 2022』。世界大会『Grand Beatbox Battle 2023(GBB2023)』の東京開催も発表されたなかで、日本でビートボックスのフェスがこれだけ盛り上がったというのは、シーン全体としても大きなことだったと思います。率直な感想や印象に残ったパフォーマンスについて聞かせてください。

SO-SO:出演者もビートボクサー、お客さんもビートボックスファンということでテンションがめっちゃ上がりました(笑)。

RUSY:ビートボックスって、これまではバトル文化ー競い合うことが前提で、「どっちが 勝つんだろう」「この対戦カードは熱いな」って、スポーツ感覚で楽しんでいたと思うんです。でも、今回はほとんど初めてというくらい、音楽としてビートボックスを楽しむライブだったので、シーンの歴史としても新しい一歩を踏み出せたんじゃないかなって。10年前だったらもっと大道芸的なものとして捉えられていたと思うんですけど、近年ではアーティストとしてのビートボクサーというものが確立されてきて。お客さんも純粋にビートボックスを主軸にした音楽を聴きにきている、ということが反応からも感じ取れて、とても感慨深かったです。

KAJI:大阪と東京で2組ずつ、公募で出演を決めた「BEAT X PASS」勢の人たちが、タイトな時間でフルパワーのパフォーマンスをしてくれたのが印象に残っています。大阪はヨコノリRecordsとResonance、東京はMiCoとYAMORI。4組とも音楽性が全然違うのが面白かったし、海外勢が「マジでスタッフさんに怒られるんちゃうか」と思うくらい、ステージの袖でノリノリになっていて(笑)。日本のビートボックスシーンをアピールできたと思います。

Kohey:これまでも大きい舞台に立たせてもらったことはあるんですけど、国内だと時期的に無観客だったり、観客の皆さんがビートボックスを知らない人も多くて。だから、ビートボックスが好きな人たちで、あんなに大きな会場が埋まっているということに、まず感動しましたね。

KAJI:本当にビートボックス好きしかいないので、例えば1組目でCodfishの名前が出たときに、耳が弾け飛びそうになるくらいの拍手が起こって。そこで「このイベントは大丈夫や」と。あの興奮状態で、みんなよく声を出すのを我慢してくれたなと思いました。

Kohey:ほとんど全組があの規模のステージが初めてだったのに、信じられないくらい堂々としたパフォーマンスで、エグかったですね。海外勢は全員、スキルがおばけで、めっちゃよかったです。

ーー海外勢については、D-low、Codfish、SPIDERHORSE(Chris Celiz&Gene Shinozaki)と、豪華すぎる3組も話題になりましたね。

KAJI:Codfishは荒々しくも独特なグルーヴが出ているし、D-lowは完璧で彼の中にビートボックスの教科書があるという感じ。SPIDERHORSEは誰も届かない領域に行っているし、僕らやRofuも含めてごった煮なステージでしたけど、ひとつのイベントとして最高だったと思います。

ーーSO-SOさんは大阪公演で、Koheyさんは東京公演でオープニングDJを務めました。

Kohey:バリ緊張しました(笑)。アドレナリンが出て、気持ちいいという感情以外覚えていないというか。30分が本当に一瞬でした。

KAJI:途中でSO-SOさんがエクササイズしに出てきたんですけど(「SO-SO Exercise」のパフォーマンス)、気合が入りすぎて、お客さんたちに本気のスクワットを要求しまして(笑)。

Kohey:オープニングなのに全員バテバテになって(笑)。

SO-SO:エゴサしてたら、「マジで筋肉痛になった」というお客さんもいて(笑)。KoheyのDJは、特に前半がエモい系で爽やかにはじまったので、一旦ぶち壊してやろうという気持ちが大きくて、元気いっぱいにやって、満足して帰りました。

Kohey:逆に、大阪ではSO-SOさんがDJしているときに僕が入っていったんですけど、壮大につまずいてコケまして。やっぱり緊張していたんでしょうね。

ーーそして、あれだけの豪華アーティストのなかで、SARUKANIはトリを務めました。

KAJI:アメリカの超有名なアカペラグループが集まるところにたった二人で乗り込んで優勝したSPIDERHORSEのあとに、日本のカラフル4人組ですからね(笑)。でも、すごくワクワクして、久しくビートボックスの大きいイベントがなかったなかで、自分たちで主催させていただいたものでもあったので、特に初日の大阪は気合が入りすぎました。お客さんからもらったエネルギーをそれ以上にして返そう、と意気込んでしまって。

SO-SO:正直、大阪のライブは僕らも舞い上がってしまっていて、冷静さを欠いていたという反省があったんです。本当なら、ライブをする上では身体が燃えていて心は冷静、というのが理想なんですけど、全部燃えてしまっていて。

RUSY:盛り上がりは最高だったけれど、きちんと内容も伴わせなければと。トリというのもほぼ初めてだったし、共演者も仲間ばかりで、やっぱりテンションが上がりすぎていたんでしょうね。

SO-SO:それで気を引き締めまして、東京では改善できました。音響もより迫力が出るような設定にして。成長できたなって。

KAJI:僕はけっこう気にしぃなんで、大阪公演のあとは落ち込んでしまって、Koheyのポジティブさに助けられましたね。「いやいや大丈夫、大丈夫!」って。

Kohey:終わったことを気にするより、前を向いたほうがいいですからね。

KAJI:でも、リズムが走っちゃったから、Koheyの刻みが一番大変そうだった(笑)。

ーーYouTubeを中心に共演者同士のコラボ動画も多く上がっていますし、バックステージやオフでの交流も楽しいものだったのかなと思います。何かエピソードがあれば教えてください。

RUSY:海外勢も僕らに負けないくらいビートボックスが大好きで、すれ違うたびにセッションが始まるんですよ(笑)。バックステージでも、控え室でも、常に全員ビートボックスの話しかしていなくて、国境を越えた何かを感じました。

KAJI:ビートボックスについてどう考えているのか、どういうところに気をつけているのか、という熱い話もできて。D-lowが、ドラムも含めて全ての音のピッチを楽曲のキーに合わせている、という話は勉強になりましたね。英語ができてよかった、と思いました。

RUSY:あとは、ライブ後に一緒に食事をする機会があって、僕とKoheyとD-lowでいろんなゲームをしたんですよ。「この国のボクサー、何人知ってる?」という山手線ゲームのようなものが始まって、そうしたらD-lowが誰よりも熱くなっていて(笑)。シャイなんですけど、話し始めたら本当に面白くて。ビートボックスが好きなんですね。

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