Fear, and Loathing in Las Vegas、約3年ぶりのニューアルバムはどんな作品に? オリジナリティ溢れる直近の楽曲群から紐解く
Fear, and Loathing in Las Vegas(以下、ラスベガス)が今年結成14年目を迎えた。彼らの凄さは、自分たちが信じた道をひたすら突き進んでいることだ。今日までその姿勢に全くブレがない。活動と音楽の両面において、ある意味、頑固なまでにバンドの“魅せ方”にこだわり続けている。それこそが唯一の真理であるかのように、己のスタンスを崩さない。本人たちによるメディア露出を極力避け、言ってしまえば「楽曲」と「ライブ」の二本柱で勝負し、強固なファンベースを築き上げてきた。ほかに類例を見ない、稀有な成功例と言っていい。
もちろん、ここに来るまで何もなかったわけではない。メンバーの脱退や死去など様々な艱難辛苦を乗り越えて、現在がある。水面下で研鑽と努力を積み重ね、MVやライブパフォーマンスでは極彩色の照明が飛び交うド派手な演出を施し、その中心にある音楽は群を抜くポジティブさを発揮。12年前に出た衝撃の1stアルバム『Dance & Scream』で体現した革新的な音楽性はブラッシュアップとアップデートを繰り返し、「ラスベガスという名の音楽ジャンル」を作り上げてきたと言っても過言ではない。
そんな彼らが前作『HYPERTOUGHNESS』以来、2年10カ月ぶりになる7thアルバム『Cocoon for the Golden Future』を10月26日にリリースする。今作はビクターエンタテインメント移籍後、初のオリジナルアルバムである。収録曲もすでに公開されているので、ご存知の方も多いかもしれない。前作以降に配信されたシングル5曲に加え、10月1日に新曲「Get Back the Hope」が配信リリースされ、これら6曲を含めた全11曲が収録されることになっている。では、時系列でこれらの楽曲に触れながら、発売間近に迫ったニューアルバムに対する期待値を書き記したい。
既発曲はすべて、今なお続くコロナ禍で発表されたものばかりだ。まずはスマホゲーム『A.I.M.$ -All you need Is Money-』のキャラクターソング「Shape of Trust」(2020年12月)に触れたい。ゲームのタイアップを踏まえ、スピード感溢れたヘヴィなナンバーに仕上がっている。ゲーム音を取り入れ、Taiki(Gt/Vo)の力強い歌声をフィーチャーしたりと、ラスベガスらしさが爆発したハイテンションな曲調と言えるだろう。続く、ドラマ 『新・ミナミの帝王〜銀次郎の愛した味を守れ!〜』(フジテレビ系 ※関西ローカル)主題歌「Evolve Forward in Hazard」(2021年3月)は「Shape of Trust」同様の疾走曲だが、シャウトは抑えめでSo(Vo)のハイトーンボイスを基調にしている。中盤過ぎに突如、鍵盤による静謐なパートを設け、再びドラマティックに駆け上がっていく展開が聴き所だ。
『カンテレ プロ野球中継2021』テーマソング「One Shot, One Mind」(2021年4月)は中盤辺りにポップパンクに通じるリズムを用い、スポーツのタイアップも関係しているのか、フィジカルに訴える躍動感満載の楽曲となっている。また、爽やかなメロディラインも不特定多数のリスナーに訴える間口の広さに。そして、スマホゲーム『新日本プロレスSTRONG SPIRITS』CMソング「Repaint」(2022年6月)は、メディアミックスを展開する次世代ガールズバンドプロジェクト『BanG Dream!(バンドリ!)』から生まれた第3のリアルバンド・RAISE A SUILENへの提供曲。その楽曲を本家がセルフカバーしているのだ。もちろんラスベガスなりのアレンジを随所で効かせ、聴き比べてみれば、その違いは明白である。どちらのバージョンもそれぞれの個性が活きている。
映画『バイオレンスアクション』挿入歌「Tear Down」(2022年8月)は、Minami(Vo/Key)の激情シャウトで押しまくるヘヴィなサウンドを掲げ、映画とリンクした暴虐性を突きつける。ブレイクダウンを入れつつ、コミカルな声を挟んだりと、遊び心も決して忘れていない。
そうしたタイアップ曲が多く並ぶ中、先日発表されたばかりの「Get Back the Hope」はノンタイアップではあるものの、ニューアルバムのオープニング曲という重要なポジションを担っている。曲名は直訳するならば、“希望を取り戻せ”という意。歌詞の内容は、コロナ禍で感じた心情がリアルに反映されていると思われる。なかなか前に進めず、闇の中で動けない日々が続く。そこで様々な気づきはあったが、もう立ち止まるのはたくさんだ。〈Don’t need to make a stop [make a stop]/Just keep running〉の歌詞では「立ち止まる必要はない 走り続けるんだ」と、明るい未来へ踏み出そうとする姿が描かれている。それは世界中の人たちが抱えている心情と重なるものだろう。曲調的には胸が高鳴るシンセ、行進したくなるドラムのビートに体が目覚め、心の奥底からエネルギーが湧き上がってくるサウンドを構築。また、MVを観てもらえればわかる通り、中盤過ぎにはSoがギターを持ち、鮮やかなタッピングを披露。そこでTaikiとツインリードを奏で、楽曲を盛り立てている。歌詞、曲調ともに希望を鐘を打ち鳴らすポジティブなバイブスに貫かれているのだ。