岩田剛典、人生観が表現された等身大の1stアルバム 歌って踊るアーティストとしての意欲も語る
2021年、ファンミーティング開催を中心とするセルフプロデュースプロジェクト「Be My guest」を立ち上げ、同年9月15日にシングル『korekara』で歌手デビューを果たした岩田剛典(EXILE / 三代目 J SOUL BROTHERS from EXILE TRIBE)。その後もグループや俳優としての活動を中心に、精力的に表現活動を行ってきた彼が、10月12日に1stアルバム『The Chocolate Box』をリリースした。デビューシングル『korekara』に収録された3曲と、8月26日に先行配信されたダンスチューン「Ready?」を含む全12曲で描く、ソロアーティスト 岩田剛典の世界(新曲9曲中8曲は作詞にも参加)。「赤裸々に書きすぎた(笑)」という今作の制作秘話や今冬に控えるソロツアーについて、のびのびと語ってもらった。(斉藤碧)【インタビュー最後にプレゼント情報あり】
「“チョコとアートの融合っていいかも!”と思った」
ーー『The Chocolate Box』というアルバムタイトルを聞いた時、真っ先に思い浮かんだのが「korekara」に出てくる〈チョコレート舐めながら歩いてきた午前3時〉という歌詞でした。実際のところは関係していますか?
岩田剛典(以下、岩田):おー、なるほど!
ーーと言いますと?
岩田:そう捉える方もいるとは思うんですけど、実際は関係なくて。……あのね、公式に伝えたアルバムのコンセプトとかも、実はほとんど全部後づけ(笑)。
ーーインタビュー冒頭から本音が漏れちゃいましたね(笑)。
岩田:あははは。タイトルを考えるにあたって、このアルバムを提げて11月からホールツアーを廻る予定が決まっていたので、まずはツアーと連動させたタイトルにしたかったんですよね。その上で、初のアルバムにふさわしいものにしようと思って。最初は「Life」とか「Love」といった別のワードを20個くらい羅列して、そこから選ぼうと思っていたんです。でも、ちょうどその時、なんとなくチョコのことを調べていて。そしたら可愛いチョコレートボックスを見つけて……。
ーー運命に導かれるように出会ってしまった、と。
岩田:そうそう。そのチョコがね、パッケージだけでなく、チョコ本体にもアートが描いてあるようなアーティスティックなもので。僕もその時、自分でアルバムのジャケットイラストを描いていたから、「チョコとアートの融合っていいかも!」と思ったんですよ。しかも、ふとアルバムの曲数を数えたら12曲。「12=1ダースじゃん! チョコじゃん!」と。まさに運命に導かれるまま、タイトルが決まりました。
チョコって、見た目だけだと中に何が入っているかわからないじゃないですか? フルーツ系かもしれないし、ナッツが入っているかもしれないし。でも、どれも美味しい。それと同じように、実際に聴いてみないと何が出てくるかわからないシークレットボックス的なものとして、このアルバムを楽しんでもらえたらいいなと思っていて。ツアー『Takanori Iwata LIVE TOUR 2022 “THE CHOCOLATE BOX”』も、各会場をチョコレートボックスに見立てて、ファンのみなさんに僕からのギフトをお届けできたらと思っています。……っていうコンセプトは、後から考えました(笑)。
ーーあははは。
岩田:でもね、僕、好きな映画があって。その作中に「人生はチョコレート箱よ。開けてみるまで何が入っているか分からない」っていう台詞が出てくるんですよ。
ーー今おっしゃったコンセプトそのものですね。
岩田:意図していたわけではないんですけど、そうなんです。だから、これも絶対インスピレーションとして入っていると感じていて。音楽性、歌詞、歌い方……あらゆる場面で、僕の好きなものや日常生活で影響を受けたもの、“等身大の岩田剛典”が反映されたアルバムができたなと、最後にタイトルが決まった時に思いました。
「その時々のシーンに合った曲で背中を押せたら」
ーーそんなアルバム『The Chocolate Box』の1曲目「Only One For Me」は、温かみのあるサウンドと歌声が心地よく身体に染み込むミドルナンバーです。ファンの方に向けた感謝の言葉が綴られていますが、9曲もの新曲が生まれた中で、なぜこの曲をリードに?
岩田:そもそもソロプロジェクトの「Be My guest」が、ファンのみなさんと僕だけの居場所を作りたい、ファンのみなさんへの僕の10年分の感謝を伝えたいという想いでスタートしたので、「Only One For Me」ができた時に、これをリードにするしかないって思ったんです。メロなんかは、まさに僕が日頃感じていることですよね。1番のAメロにもあるように、僕が今こうして活動できているのはファンのみなさんのおかげで、“生かされている”と本気で思っているし、それに対する恩を返したいという想いが歌詞になっている。あと、活動歴が長くなるにつれて「距離を感じる」とおっしゃる方が増えたので、みなさんと僕の距離感をなくせる曲を作りたくて。大サビの〈どんなときでも そばにいるよ〉は、一見ありきたりな表現かもしれないけど、今どうしても言いたいことだったので、あえて飾らない言葉で書きましたね。
ーー「Ready?」のインタビュー(※1)でも「ドライブの時に聴いてほしい」と言っていましたし、岩田さんはリスナーの日常に密着した楽曲を作ることで、“どんなときでもそばにいる”を体現していますよね。
岩田:そうですね。僕は1曲1曲作っていく時に、楽曲のコンセプトや方向性を明確にしてから取りかかるから、聴いてくれた方も「こういう状況の時はこの曲が似合う」っていうイメージが湧きやすいと思います。たとえば「Monday」は、個人的には二日酔いの朝が似合うと思っているんですけど(笑)、月曜の朝にピッタリの曲だと思うし。「Rain Drop」は、雨の日を歌った曲はしんみりした曲が多いから、逆に「雨だー!」ってテンションが上がる曲を作ろうと思ってできた曲ですね。
そうやって、その時々のシーンに合った曲でみんなの背中を押せたらいいなと思っているので、「Only One For Me」も“僕からファンのみなさんに向けた歌”という前提がありつつ、ファンの方一人ひとりが共感できるような“普遍的な愛”を意識して作詞していて。レコーディングの時も、親が子に思う愛やパートナーに対する愛、友情……いろんな人に当てはまる愛の歌として歌いました。先日公開したMVも大勢のキャストに参加してもらって、さまざまな愛の形を表現した作品になっています。
ーーちなみに、「Ready?」のドライブシーンを撮影した場所は岩田さんご自身がロケハンしていましたが、「Only One For Me」のロケハンは?
岩田:今回はスタッフさんにお願いしました。「Only One For Me」のロケ地は山だから、さすがにね(笑)。
ーーそんな「Only One For Me」と、歌って踊る姿が話題の「Ready?」以外に、失恋後の心境を綴ったラブバラード「言えない」もMVを制作されたそうで。こちらはどんな映像になっていますか?
岩田:「言えない」のMVは石井杏奈ちゃんに出演してもらって、ドラマティックな映像に仕上がりましたね。リップシーン(歌唱シーン)は撮影したんですが、あとは監督に「泣ける作品にしてください」「杏奈ちゃんを美しく撮ってください」とだけ伝えてお任せしたので、僕も映像が完成するまで、一視聴者のような気持ちで楽しみにしていました。歌詞の世界観と共に、映像美を楽しんでもらえたらと思います。
ーー“Take it easy”を大事にしてきた岩田さんにしては、「言えない」は詩的な歌詞ですよね。
岩田:Aメロの〈伝えられない想いは/選び過ぎた星空〉なんかは、比喩表現ですよね。でも、ロマンチックでしょ? みんなは「どういう意味?」って思うかもしれないけど(笑)。
ーー超リアリストを自称する岩田さんのロマンチストな一面が垣間見えて、みなさん嬉しいんじゃないでしょうか。フォトエッセイ『AZZURRO』を発売した2016年には、出てこなかった言葉でしょうし。
岩田:あはははは。
ーーこの曲はどういう流れで誕生したんですか?
岩田:「言えない」も他の曲と同じように、トラックを聴いてから作詞に取りかかりました。このトラックを聴いた時、真っ先に「ラブソングだ!」って思ったんですよ。ピアノを基調としたミドルテンポの楽曲だし、切ないラブソングしか有り得ないなって。だったら、思いきり失恋した時の心情を描こうと考えて書き始めた結果、“失恋した”という限定的なところより、もっと大きな意味での別れーー生きている中で訪れる大切な人との別れに対しての歌詞になり、〈言えない 言えないよ/キミに 今までありがとうって〉というサビが出てきました。そこからはもう、このフレーズを推していこう、と決めて。〈消えない 消えない〉や〈愛しい 愛しい〉と韻を踏んだワードを散りばめながら、組み立てていきましたね。ロマンティックなメロの歌詞は、その時に出てきました。