草彅剛&香取慎吾、純度100%の2人の空気が作り出すもの 『burst!~危険なふたり~』を観終えた後の幸せな気持ちの正体

 現在、絶賛上演中の草彅剛&香取慎吾による2人舞台『burst!~危険なふたり~』。そのゲネプロ(通し稽古)を観た後、幸せな気持ちが心を満たした。誤解を恐れずに言うのであれば「なんだろう、この2人の少年感は」という、母性をくすぐられるような感覚だ。

 草彅48歳、香取45歳。彼らは十分に大人だ。10月2日にオンエアされた『7.2 新しい別の窓 #55』(ABEMA※以下、『ななにー』)では、ゲストのヒロミから「部長クラス」と言われるほどの年齢でもある。しかし、“しんつよ”にはいつまでも変わることのないフレッシュさ、ピュアさがある。

 加えて、この『burst!』に登場するのは、2人のみ。しかも、生の舞台だ。純度100%の“しんつよ”の空気にダイレクトにふれたからこそ、2人が放つ少年感に酔うことができたのかもしれない。※以下ネタバレあり。

少年時代からの関係性がそのまま舞台に

 『burst!』という舞台は、見どころが大きく3つある。1つ目は、2人が遠隔操作で爆弾を処理するという、まるでリモート二人羽織のようなやきもきした面白さ。2つ目は、途中で2人の役柄が入れ替わるという、奇妙で新鮮な視点の変化。そして3つ目は、本編で起きたハプニングなどを副音声のように解説してくれるフリートークだ。そのどれもが他の舞台とは一線を画した構成であり、作・演出を手掛けた三谷幸喜いわく「この2人はサラッとやってしまうけど相当難しいもの」である。

 彼らがサラッとそれをやり遂げてしまう理由。それはリモート囲み取材で草彅が話していた言葉に行き着きそうだ。「(香取とは)小さいときから一緒にいて、2人でカメラが回っていないところでも、妄想を働かせてコントちっくなことをやって遊んでたので。そういう2人の歴史みたいなものが詰まってる作品」(※1)。

 きっと観劇後に2人の少年感で胸がいっぱいになったのは、彼らが誰に見せるわけでもなくやっていたかつての遊びの延長線上にあるものを、時空を超えてのぞき見させてもらっているような気分になったからかもしれない。

 また、舞台上で2人は遠隔地にいる設定であることから、顔を合わせることなく電話でやりとりをしていく。その姿に、ふと香取が11歳の頃メンバーの連絡係をしていたことを思い出した。以前『SMAP×SMAP』(フジテレビ系)で公開された当時のテープでは、香取が草彅に「3時」だと伝えたにもかかわらず、終盤に「で、何時?」と聞き返し「だから3時」と即答し、笑いを誘うやりとりがあった。

 わかり合えているようで、どこか噛み合わない。それでも不思議とケンカにならない。変わらないそんな“しんつよ”だからこそ、少々暴走気味な爆弾処理のプロ・根上と、それに巻き込まれる青木という気の合わない2人をテンポ良く演じられるのではないだろうか。

スイッチする2役に感じる2人のバランスの良さ

 そして『burst!』の大きな特徴でもある、役の入れ替わり。突然2人がそれぞれが演じていた役柄をスイッチさせる姿は、“しんつよ”が時と場合によって役回りが変わる様ともシンクロしているように思えた。

 先述したように、普段は「天然なところもある草彅」と「しっかり者な香取」という立ち位置が浸透している“しんつよ”。しかし、今回の『burst!』では逆転の姿を何度も見せていた。例えば、草彅は稽古の段階からセリフをすべて頭に入れており、一度も台本を手に取らなかったのに対して、香取はゲネプロでやっと台本をすべて覚えたというマイペースっぷり。

 『ななにー』では「スタッフの人たちも超マジックかかってるわけ。“わー、慎吾ちゃんが台本を持ってない(拍手)”みたいな感じになって!」と、草彅が笑いを交えてぼやいていたほど。さらに三谷までもが「慎吾ちゃん、初日は台本持っていいから」と言っていたと続ける。

 香取には、ギリギリになりながらも最後にはやり遂げるという実績が多いせいか、時々こうした「許される慎吾ちゃん」の瞬間が顔を出す。そのときには、草彅がツッコミ役に回ることで、その愛らしさが際立つのだ。

 また草彅にも、ふわっとした自然体の顔から、名優・草彅剛の顔つきになる瞬間がある。すると今度は香取がいちファンとして、その魅力を熱弁するのだ。ずっと隣にいたからこそ、相手が切り替わるタイミングで、それを引き立てる側へと立ち回ることができる。それも打ち合わせや合図をするわけでもなく、ごく自然に。

 そんな“しんつよ”だからこそ、草彅の声が枯れるほど膨大なセリフを矢継ぎ早に放つ根上と、爆弾を前にうろたえて汗が止まらない青木という、キャラクターの立った2役が入れ替わったにも関わらず、ひとつの物語の続きとしてすんなり受け入れられてしまえたのかもしれない。

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