YONA YONA WEEKENDERS 磯野くん、楽しさを実感して定まった“バンドの軸” 自然体な曲作りに至った心境を明かす
「今年は“攻める”、そして“俺がリーダーをやる”」
ーーちなみに磯野くん、曲を作るときに大衆性や世の中の流行って、パーセンテージでいうとどれくらい意識していますか?
磯野くん:あんまりないかな。20〜30%ぐらいですかね。無視してるっていうわけではないんですけど、どちらかというと趣味性みたいなところが割合的には多いと思います。ただ僕、あんまり音楽を聴くほうじゃないんですよ。本当に広く浅く聴いている感じで、そのライトなのがいいのかなって思います。自己分析なんですけど、僕らの曲って1つのジャンルに偏りすぎてないっていうか。シティポップって言われることも多いんですけど、自分たちとしては別にそんな意識もなくて。僕も本当に何でも聴くし、メタルも好きだし、パンクもやってたし。それを自分が歌いやすいようにやってたら、こういう感じになってくれたところが大きいですね。
ーーそれこそ「シティポップやろうぜ」っていうところから始めたわけじゃないですか。それがだんだん広がってきて今があるんだと思うんですけど、そうやって広がってくる中で改めて「YONA YONA WEEKENDERSらしさ」を言葉にするとしたらどういう部分だと思いますか?
磯野くん:やっぱり「媚びない」っていうところは1個あるんじゃないかなと思います。あとはなんか「ユルい」というか、いい意味で気張りすぎてないところ。遊ぶ、じゃないですけど、僕らもみんなお酒好きで、ライブのときも本当に入りから飲んで、ステージでもお酒を飲んで、終わってからも飲んで、しょうもない話で笑ってみたいなことをしていて。それが楽しくてやっているところもあったりするので、その空気感みたいなものはライブで共演する他のアーティストの方からするとちょっと浮いてるような感じもするんです(笑)。そういう部分は“らしさ”なのかな。
ーーライブ後もメンバーみんなで飲みに行くことが多いんですか?
磯野くん:そうですね。もともと飲み友達みたいなところから始まってるんで、みんなで行きますね。
ーーそのコミュニケーションと人間関係がバンドのベースになっているっていうことですよね。それが音楽をやる上でも強みになっているというか。
磯野くん:でもそこでいうと、じつはちょっとなあなあになってきちゃっていたときもあったんです。飲み友達の延長で始まって、EPを3枚出してフルアルバムを出した中で、お互いの気持ちがぶつかったりもして。でも、僕も音楽を主にしていきたいなって思ったし、これは自分がきっかけで始まったバンドだから、やっぱり自分がやりたいようにみんなを引っ張っていかなきゃなと思って。だから今年は「攻める」、そして「俺がリーダーをやる」っていうのを、みんなに言ったんですよ。そこから意見も言いやすくなったし、「あなたのやりたいようにしたら」って言ってくれるようになった。今も飲み友達ではあるけど、バンドとしては僕がある程度方向性を示して、そこにみんながついてきてくれるみたいな、いい距離感と流れができ上がってきた感じがしますね。1本軸が定まって、いろんなものがスムーズにいくようにはなったかな。
ーーじゃあ、磯野くんが指針を示して、バンドの責任を背負ったと。
磯野くん:はい。そこまで言うとあれなんですけど(笑)。でも一応そういうことです。
ーーそれを通過して作った今作は、バンドにとって大きな意味合いを持つ作品ですね。でき上がったときの手応えは相当ありましたか。
磯野くん:そうですね。もちろんいい曲ができたなという手応えもあるんですけど、どういう反応をしてもらえるかなっていう気持ちもあります。不安でもないんですけど、それがある種楽しみでもありますね。
“予想以上”を生み出した蔡忠浩(bonobos)とのコラボ
ーー挑戦もたくさん入っている作品ですからね。それこそ「夜行性 feat. 蔡忠浩」とか、ライブでめちゃくちゃ盛り上がるようなタイプの曲ではないと思うんですよ。
磯野くん:うん、そうですね。
ーーでもすばらしい曲で。この曲にはbonobosの蔡忠浩さんが参加していますけど、彼との制作はどうでしたか?
磯野くん:本当にただのファンなので……最初スタジオに来られたときに、時間が短かったのもあって、一言挨拶を交わして、そのままブースに入っていかれて。それで歌ってくれたんですけど。最初はもう本当にbonobosだ、と思って。でも休憩のときに「天下一品」(ラーメンチェーン)のグッズを見て話が盛り上がったんです(笑)。そこからいろいろ会話も弾んで、僕も曲の意図をちゃんと伝えられるようになって。そうしたら蔡さんも乗ってきてくれて、提案していただいたりして、予想以上のものができたなって思います。
ーーこの曲、歌詞がすごくよくて。この〈また会えるよ〉とか、あるいは「Ice Cream Lovers」の〈旅立つための歌を〉とかもそうですけど、今作には「その先へいこう」みたいなニュアンスが繰り返し出てくるんですが、これは?
磯野くん:特に何か意識して書いているわけではないんですけど、たぶん、自分の身の回りに起こる日常を曲にしているから、自分も第三者的な感じで聴いたときに背中を押されるような曲を自然と書いているのかな。余裕がなかったときは本当に愚痴を言ったりとかしかできなかったんですけど、ある程度会社員とバンドマンの二足のわらじもうまいことできるようになってきて、そういう人を応援したいと思うようになって。同時にやっぱり自分も応援されたいという気持ちがこういう歌詞を書かせてるのかなって、ちょっと思ったりします。
ーー最後の「月曜のダンス」は特にその部分が強く出ていますよね。
磯野くん:「月曜のダンス」は他の曲と比べても明確に「アルバムの軸になる曲を書きたいな」っていう思いがあったので。いろいろ紆余曲折はあるけど、結局訪れる日常は無視できることじゃないので、それを踊るように乗り切っていこう、という。
ーーこの曲が本当に最後にできた曲だったそうですが、感触はどうでしたか?
磯野くん:この曲こそ本当に「どう受け止められるんだろう」と思っているんです。それで6月に先んじてライブでやってみて、そこから微調整したりもしたんですけど。ライブでやったときの反応も結構よくて、それが1つ自信になりました。
ーーWEEKENDERSと名乗っているバンドが月曜のことを歌うというのもおもしろいですね。
磯野くん:うん。僕も土日休みの仕事をしていたから、月曜日が一番気が重かったので。そこを乗り切っていくための歌、みたいな。この曲はメッセージの種類で言うと、僕らが2nd EPで出した「SUNRISE」に近いものだと思います。
ーーだからこういうメッセージ性や思いって、YONA YONA WEEKENDERSがずっと持っていたものでもあるわけですよね。でもその表現のパワーが変わってきたっていう感じがしますね。
磯野くん:そうですね。この曲の歌詞はそれこそ本当にレコーディング前日とかに書き上げた気がするんですけど、それもこういう曲にしようっていう方向性が決まってからは結構スルスルと書けましたね。書けるときって言葉が溢れてくるような、そういうゾーンに入ることがあるんですけど、これはそうでした。「Ice Cream Lovers」とかはマジで何も出てこなかった(笑)。
ーー(笑)。「月曜のダンス」はまさに音楽のことを歌っている曲ですけど、「Ice Cream Lovers」もその部分では通じているものがある気がするんですよね。〈メロディー〉とか〈歌〉という言葉も出てくるし。
磯野くん:それもあまり意識してるものではないんですけどね。でもやっぱり楽しい状態で書けているからなのかなとは思います。今までの切羽詰まった状態ではなく、ライブとかも含めてやりたい活動がようやくできるようになって作った作品でもあるので、自然とそういうワードが出てきてるのかなと。
ーー音楽をやることに対する充実感や自信も増してきた?
磯野くん:うーん、聴いてくれてる人が着実に増えていってるなっていうのはなんとなく感じるところはあるんですけど、自信っていうと、まだ「どうなんですかね?」っていうぐらいの感じで。ただ、9月に出演した『Local Green Festival』っていうフェスで本当にたくさん人が来てくれて。最後に「SUNRISE」をやったときに、みんな一緒に歌ってくれたんですよね。それは結構自信になりましたね。「考え中」とかも歌ってくれてる人がいて。バンドマンになったんだなあっていう気持ちになりました(笑)。