SARD UNDERGROUND、“ZARDトリビュートバンド”の活動を通して確立したオリジナリティ

SARD UNDERGROUNDが確立したオリジナリティ

 2019年9月18日、ZARDのトリビュートバンドとしてデビューを果たしたSARD UNDERGROUND。坂井泉水が遺した名曲と歌詞を真摯に歌い継ぐ一方で、リリースを重ねるごとにオリジナルバンドとしての色が見えてきた。今年5月に発表した4thシングル曲「空っぽの心」はアニメ『名探偵コナン』(日本テレビ系)のエンディングテーマに起用され、オリコン週間シングルチャートにて自身最高位となる6位を記録している。

SARD UNDERGROUND「空っぽの心」 MV YouTube Size

 そしてデビュー3周年記念日の直前である9月14日、7曲入りのミニアルバム『日の名残り』がリリースされた。神野友亜(Vo)が作詞を手がけたオリジナル曲5作のほか、坂井泉水が歌詞を提供したBarbierの「クリスマス タイム」、ZARDの「You and me (and...)」のカバーを収録。トラックリストからも分かるように、SARD UNDERGROUNDのルーツと軌跡、そして現在を表現した、新たな名刺代わりとなる1枚だ。<一日の終わりに思い出すような、心に残る音楽を届けたい>。タイトルに込めた想いがしかと伝わる、ノスタルジックなアルバムをレビューしたい。

 本作を聴いたとき、まず感じたのは構成の妙。ライブアルバムのようでもあり、タイトルにも通ずる「一日」を表すようなストーリー性を持つ。前半のロックナンバーから、M3「空っぽの心」へとキャッチーに転換、M4「恋が待ち伏せしてた午後」でガラリと雰囲気を変えると、後半はじっくりと聴かせる。M7「クリスマス タイム」はまるでアンコール。煌めくサウンドに心が弾む。フェードアウトしていくアウトロに「今日もいい一日だった」、そんな思いを重ねる日もあれば、「また明日、頑張ろう」、そう思う日もあるだろう。『日の名残り』――タイトルが持つ奥行きをもって、本作は完成する。

 M1「花火よ燃え尽きて海に舞い上がれ!」は、アルバムタイトルとジャケットアートワークから行き着く予想をスカッと裏切る硬派なロックナンバー。イントロなしでトップギアに入る爽快感、細かな譜割りや字余りもクセになる。軟質で優しい神野の声とロック、この不思議なベストマッチは、SARD UNDERGROUNDならではだろう。ふと、スタンドマイクでクールに歌いあげる坂井泉水を思い出した。

 M2「擦り傷だらけの純情」は、タイトルをずばり表現したような、ピリッとした緊張感をまとう楽曲。疾走するピアノ、かき鳴らすギター、迫るようなベースとメロディアスなボーカルラインには、どこか平成初期の風味が漂い、韻を踏んだ歌詞とコーラスワークも心地良い。M3「空っぽの心」で表現する多彩なサウンドが、アルバムを次の展開へと巧みに誘う。冒頭3曲に、オリジナルバンドとしての成長と幅、そして新境地を、畳みかけるように詰め込んだ。

 M4「恋が待ち伏せしてた午後」は、アルバムというストーリーの後半戦、そのはじまりに相応しい1曲。1日がだんだんと終わりに向かってゆく、夕暮れの帰り道に口ずさみたくなるような、心地良く柔らかなミディアムナンバーだ。ボーカルはもちろん、サウンドを構成する楽器すべてのメロディラインが美しく、神野の高音は切なく清く想いを伝える。

 〈一日のはじまりはこんな歌がいい〉。このフレーズが、スッと耳に入ってきた。そうだ、こんな歌がいい。そして、こんな歌みたいな1日を過ごしたいと思う。

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