芸人 寺田寛明がライブアイドルを推す理由 アイドルとお笑い、異なるカルチャーの交差点とは

アイドルライブに通うからこそ感じる自分のファンへのありがたみ

ーー寺田さんは多くのライブに足を運んでいると思います。他のお笑い芸人と比べて人のステージを見ることが多いと思うのですが、それが自分のステージに活きることはあるのでしょうか。

寺田:自分がオタクをやっているので、お客さんの立場がかなりわかるようになっていると思います。他の芸人はオタクとして現場に足を運ぶことをあまりしていないわけですから。だから、お客さんがライブに来てくれることへのありがたみの感じ方が全然違うと思うんですよ。例えば、ライブに行くだけでもかなりやることが多いですよね。チケットサイトに登録して、ログインしてクレジットカードを登録して、チケット販売開始まで待って、時計の秒針まで見てちょうどの時間に買って……。当日も電車に乗ってライブに行って、ご飯も外で食べなきゃいけないしとか、そういうことを全部体験しているので、そういう点で圧倒的にありがたみの感じ方が違うと思いますよ。

 あとはコロナ禍で出待ちができなくなったので、その代わりにチェキ販売を始めたり。今までお笑いってチェキの販売はあまりなかったんです。そこで、アイドルのライブのようにチェキを販売してみたら、お笑いファンの方が欲しがって買ってくれるようになりました。芸人って単独ライブとかでTシャツやステッカーをグッズとして販売することが多かったのですが、1個や2個ならいいけどそんなに買える物でもない。チェキだったら一枚一枚全部違うし、かさばらないからと思って売ってみたらみなさん喜んでくれたんです。それは自分がグッズを買う立場だから気づいたことかもしれないです。あとは、お笑いライブってエンディングだけ撮影OKのことが多いんですけど、別に喋ることがなくても、前の方に行って自分のことを目当てにしている人に撮ってもらえるようにする、みたいな。ちゃんとそういうことをやるようになりました。

『R-1』で優勝したら、アイドルフェスをやりたい

ーーまさにアイドルカルチャーから学んだことをお笑いシーンにも取り入れているんですね。寺田さんはご自身でもアイドルを呼んでイベントを行っていますが、アイドル×お笑いの目標みたいなものはありますか。

寺田:『R-1』で優勝したら、アイドルフェスをやりたいですね。お笑いファンとアイドルファンってちょっと似てるところがあると思うんですよ。周りを見ていると、お笑いも好きだしアイドルも好きっていう人が結構いて、そういう人たちにとって良いところを狙いたいです。この芸人が好きな人はこのアイドルがハマる、みたいなことを考えてタイムテーブルを組んだフェスにしたいです。芸人はネタだけ、アイドルはパフォーマンスだけとかではなくて、企画コーナーも一緒にやって、この芸人とこのアイドルがマッチしそうみたいなものを見せたいなと。

ーーお笑い芸人とアイドルファンを両立する先としては、いわゆる“公式お兄ちゃん”みたいな仕事もあると思うのですが。

寺田:最近は、アイドルさんと仕事をする機会が増えつつありますけど、そういうのって自分がもっと面白くないと成立しないところがあると思っていて。ネタが面白くないと、それをやる権利がないというか。だから、まだやれないなって感じはあります。ステージで横並びになるというよりも、あくまで“演者と客”という関係性はずっと続けていきたいです。例えば、自分の主催ライブにゲストでお呼びするとかはやりたいんですけど、“公式お兄ちゃん”ってなると責任もありますし。

ーーアイドルシーン全体を見るというのが難しくなりそうですもんね。

寺田:そういうこともあると思います。最近は運営さんとかに知っていただいてて、現場で声をかけていただくこともあるのですが、関係性ができると逆にちょっと気を遣ってしまうこともありますしね。たまにライブに招待いただくことがあるんですけど、関係者席じゃなくて前の方で見たいので、招待される前に自分で買っちゃうことも多いです。

ーーアイドルファンとアイドルという関係性を続けながら芸人を続けていきたいと。

寺田:ある程度お仕事をもらえるようになっても、現場に行きたいっていうのがあって。現場に行けないほど、仕事が増えたら本末転倒だなって気持ちもちょっとあります。だから本当にベストはアイドル関係の仕事をやれるようになることなのかな。そこのバランスを取っていきたいです。

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