SPECIAL OTHERS、真夏の野音でのレアなステージ 壮大なサウンドスケープ描いた『Anniversary』ツアー初日

 昨年デビュー15周年を迎えたSPECIAL OTHERSが、6月にリリースした通算8枚目のアルバム『Anniversary』を携えてツアー『"Anniversary" Release Tour 2022』を開催。初日は「山の日」である8月11日、東京・日比谷野外大音楽堂にて行われた。

 セミが鳴きしきる酷暑の中、まだ明るいうちから会場にはたくさんのオーディエンスが集まっている。定刻になると、宮原良太(Dr)と柳下武史(Gt)の2人がステージにふらりと現れ、おもむろにセッティングを開始。まずはアルバム『Anniversary』から2人によるインプロビゼーション曲「Yagi & Ryota 2」でこの日のライブはスタートした。柳下がループステーションを駆使しながら、ドローンサウンドの上にまるでインドのラーガのようなフレーズを重ねていくと、それに応えるように宮原がパーカッションやシンバルなどを打ち鳴らす。そんなカオティックなサウンドスケープに身を委ねていると、頃合いを見計ったかのように宮原が8分の6拍子のリズムを叩き出し、そこに柳下のギターフレーズが寄り添いながら次第にボルテージを上げていった。

 曲が終わり、盛大な拍手が会場いっぱいに鳴り響く中、続いて芹澤優真(Key)と又吉優也(Ba)が登場。エレクトリックピアノの前に座った芹澤が「指ならし」のごとく鍵盤を爪弾き出すと、宮原のドラムと柳下のギターもそれに即興で応えている。一瞬の間が空いた後、ギターの涼しげなフレーズに導かれて演奏がスタート。これも『Anniversary』に収録されていた楽曲「Timelapse」である。重心の低いドラムとともに、又吉の少し歪んだコントラバスが楽曲の低音部をしっかりと支えている。だからこそエレピとギターはそのアンサンブルの上で、縦横無尽に飛び交うことができるのだ。

 オリエンタルな響きをたたえたエレピのリフが芹澤の指から放たれ、その細かなリズム一つひとつに意味を持たせるかのごとく、宮原のドラムがぴったりとシンクロしていく。そして、その狭間を縫うように動き回る又吉のベースは、芯のある太い音色とその輪郭を際立たせる絶妙な歪み具合が心地よい。それぞれのフレーズが近づいたり離れたりしながらプログレッシブに変化していく、ファンの間で人気の高い楽曲「Flowers」だ。

 続く「NEW WORLD」は、歪んだエレピによる不穏な響きと、ボリューム奏法を駆使したエレキギターのノスタルジックな響きが混じり合う楽曲。どこかネオソウルにも通じるような、シンプルかつレイドバックしたアンサンブルが何ともいえない寂寥感を醸し出す。セクションごとに場面が切り替わるアレンジは、まるで古いSF映画でも観ているかのよう。気がついた時には全く知らない場所に迷い込んでしまったような、不思議な気持ちになった。

 又吉がステージを後にして、残りの3人により演奏された「DECO」は、テープサチュレーション系のシミュレーター DECOのエフェクティブ効果にインスパイアされた、芹澤によるサイケデリックなナンバー。メロトロンによるひなびたコードバッキングをDECOに通し、ツマミをグリグリと回すことによってテープがヨレたような不思議なエフェクト効果を生み出している。

 「どうも、SPECIAL OTHERSです!」と、ここでようやくマイクを持った宮原が挨拶をすると、大きな拍手が巻き起こった。「こうやって真夏にやるの珍しくない? っていうか初めてかもしれない。レアですよみなさん。奇跡の瞬間を目撃してるんですよ」と冗談を交えながら、こうして3年連続で野音のステージに立てた喜びを表現する。

「みなさんのおかげで僕らは元気でいられます。今日は珍しく2セット制なので。楽しんでいただけたらと思っています!」

 そしてアルバム『Anniversary』の冒頭を飾る「Spark joy」を演奏すると、そのトリッキーなドラムに合わせて自然発生的にハンドクラップが鳴り響いていた。

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