ENHYPEN、Stray Kids、ATEEZ……ポストBTSをマーケティング的見地から予測する
K-POPというカテゴリーを超えてグローバルヒットアーティストとなったBTS。2022年6月、突然のソロ活動の本格化を宣言し、業界内外に衝撃をもたらした。そして話題は誰がポストBTSを担うのか、担えるのかに移行しつつある。そんな中、虎視眈々とその座を狙い活動を強化していくボーイズグループたち。各社、各アーティスト陣営がどのようなマーケティング戦略を描き、ポストBTSを目指していくのか。
そこでこのコラムではその動向を注視しながら、自分なりに気になるアーティストをピックアップしていきたいと思う。
兄貴分を超えるか=弟分としてのENHYPEN
兵役のある韓国は、そのアーティストが不在になる間、弟分を応援するカルチャーがある。本来応援するアーティストが帰ってくるまでの間、心の隙間を埋める存在として、より一層の応援をその弟分に送るのだ。
BTSを擁するHYBEにおける弟分の中で、僕が注目したいのは、ENHYPENだ。BTSで整備したヒットを出すインフラにさらに何を加えているのか?
まず、今のK-POPアーティスト輩出のトレンドといえるオーディション番組出身であるということ。BTSが韓国人メンバーだけのグループ構成に対し、ENHYPENメンバーは、二人の外国出身の韓国人に加え、日本人メンバーの登用も注目すべき点だ。TWICEが切り開いたK-POPグループへの日本人登用は、一つの潮流として定着化しつつある。
そのうえで、日本進出の仕方も、日本人メンバーのいる特性を生かし理にかなったプロモーションの実現を積み重ねている。そのひとつの成果は、海外アーティスト初となるニッポン放送『オールナイトニッポンX』パーソナリティーを1年に渡ってつとめたこと。深夜ラジオリスナーという新たなファン層に裾野を広げることに成功している。
三大事務所の逆襲=注目はStray Kids
次に、三大事務所(YG、SM、JYP)の中で、No.1ボーイズグループ奪還の可能性に目を向けてみよう。制作体制が整い、メディアとの強力なパイプがあり、ビッグアーティストのマーケティング結果の検証が蓄積されている三大事務所から、次の新人ブレイクが誕生しやすいといえるのではないか(最近ではここに、前述のHYBEを加えて四大事務所とも言われている)。
そんな中、ここ数年、TWICEの世界的ブレイク、NiziUを生んだ『Nizi Project』の成功で常に先を見据えたマーケティング戦略で気をはいている、JYPに注目せざるを得ない。オーディション番組出身でありつつ、BTS同様にメンバーの一部が作詞、作曲、ラップを手掛けるなど、メンバーがクリエイティブに参加していること。世界を視野に、デビューから最速でのワールドツアーの開催。ビルボードアルバムチャートではK-POP史上、3組目の1位を獲得し、その潜在的パワーを証明してみせた。さらに、僕が注目したのは、彼らのオリジナル曲が、日本・韓国・アメリカとグローバル展開されるアニメ『神之塔 -Tower of God-』に主題歌として採用されたこと。さらに、それぞれの母国語バージョンで制作した楽曲が各国で使用されるという、アニソンタイアップにおける日本発のグロ-バル展開が実現していて、アニソンという新たなファン属性のプラスオンが実現しているのだ。