来日アーティストのライブチケットが高騰? 価格以上に重要な参加者側のアクションとは

 続々と海外アーティストの来日公演が発表されている。その中でもビリー・アイリッシュの来日がアナウンスされた際、チケット料金などについて様々な意見が飛び交った。人によっては「チケットの値段が高い」といったコメントもあったが、国内外問わず、現在アーティストライブにおけるチケット料金は消費者にとって気がかりな問題の1つになっているはずだ。だが実際のところ、海外アーティストの来日公演に関していえば、現時点ではそこまで高騰していない(少なくとも新型コロナ蔓延直前=2020年頭の水準からあまり変わっていない)ような印象が得られた。しかし、このまま円安やコロナ禍が続けばチケットの価格はさらに上がっていき、それを抑えて集客を保とうとする主催側にとっても厳しい切り詰めが必要になる可能性も高い。従って、ライブに行きたい人々は、できれば今のうちに行っておくほうがいいし、来日公演の文化を絶やさないためにも、参加者たちが積極的に情報発信していくのが望ましい。本稿ではこうした趣旨のもと、来日公演におけるチケット価格について具体的に掘り下げてみたいと思う。

 まず、ここ数年のチケット価格水準の変遷について。現在最も注目が集まっているのが前述したビリー・アイリッシュの単独来日公演だろう(8月26日開催)。2020年9月2日に予定されていた来日公演(延期ののち中止)は、アリーナSS 15,000円、アリーナS 12,000円、スタンドS 10,500円、スタンドA 9500円だったが、今回はSS 25,000円、S 19,000円、A 15,000円。これだけ見ると約1.6倍の値段になっているのだが、会場のキャパシティや国外でのチケット代を考えれば、この価格設定は妥当にも思えてくる。2020年の会場が横浜アリーナ(約17,000人)だったのに対し、今回は有明アリーナ(約12,000人)で、前者がスタンディング有りなのに対し、後者はおそらく全席指定。また、直近のニュージーランド公演の価格設定をticketmasterで調べると97ドル〜176ドル(7月14日時点のレート=1ドル138円で換算すると約13,000円〜24,000円)で、会場のスパーク・アリーナの収容数もおよそ12,000人。今回の来日公演とほぼ同条件である(※1)。以上を鑑みると、チケット代が高くなったのは、ビリー自身のアーティストとしての格が上がったことが影響しているように思える。

ビリー・アイリッシュ「ハピアー・ザン・エヴァー・ワールドツアー 2022」来日公演

 こうしたことは他のアーティストについても言える。例えば、アヴリル・ラヴィーンが今年11月に開催するツアーの価格は、各会場で販売チケットは異なるがGOLD指定席 18,000円、S指定席 12,500円、A指定席 9,500円、注釈付きも12,500円だが、これは延期前(2020年5月)の設定をそのまま引き継いでいる。また、昨年唯一の来日ツアーを開催したKing Crimsonは、SS 20,000円、S 16,000円だったが、これは2018年の同規模ツアー(双方とも席間なしのフルキャパシティ販売)と一緒であり、2015年のツアーでは全席15,000円だったことを鑑みれば、価格水準の高騰は2018年時点ですでに起こっていたと見るのが妥当だろう。2020年1月末のクイーン+アダム・ランバートが、GOLD 50,000円、SS 25,000円、S 15,000円、A 12,000円だったことなどをみても、チケット代の水準はコロナ禍前後でそこまで変化しておらず、むしろここから先、価格を上げらざるを得ない状況になるのではないだろうか。

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