杉山清貴、3年ぶり日比谷野音ライブで迎えた一足早い夏 これから続く精力的な活動も高らかに宣言

 少し早い夏というのだろうか。強い日差しがビルの壁面を照らしつつ、雨こそ降ってはいないが遠くに見える黒雲が少しずつ近づいてくる。まるで夕立前のような空の下、日比谷公園の一角は早くも熱気に包まれていた。2021年はソロデビュー35周年、そして来年はオメガトライブとしてデビュー40周年を迎える杉山清貴の3年ぶりとなる日比谷野外大音楽堂、通称「野音」のコンサート。まだ夕暮れというにはやや明るいままその幕が上がった。

 バンドメンバーが登場し、ドラムスのカウントが響くとオープニングナンバーの「shadow」が始まった。なんとソロデビューシングル『さよならのオーシャン』のB面曲という憎い選曲。グリーンのパンツ、ピンクのTシャツに白いアロハシャツを羽織るという定番スタイルの杉山がステージに現れると、客席は一気に総立ちとなる。フラッグを振るオーディエンスの様子を見ていると、ライブというよりも夏祭りのような雰囲気だ。スラップベースとソリッドなシンセを軸にしたファンキーなビートに乗せてクリアなボーカルが聞こえてくると、一気に杉山ワールドに引き込まれた。間奏では「3年ぶりだよ、ようこそ!」と煽り、客席だけでなく本人のテンションも高いことが伝わってくる。続いて早くも初期の代表曲のひとつ「僕の腕の中で」へとなだれ込み、のびやかな歌声が空に溶けていくような感覚にさせられる。

 ファンキーな「奪われた倦怠」が終わると、「今日は俺たちも暴れます!」というMCと、バンドメンバーの紹介を行う。比較的若手を中心に揃えたメンバーは、80年代的な懐かしい感覚と、フレッシュで新鮮なプレイが同居したという印象だ。「Omotesando’83」から「そして…夏の雨に」に移る頃にはなんと雨粒が。しかし何とか持ちこたえ、少しトーンダウンした「あの夏の君と」を歌い始めると、すっかりその心配もなくなった。サックスのムーディーなイントロから始まる「Summer Again」、さらにテンポダウンしてスケール感に満ちた「Noah(虹の大陸)」あたりは、まるで野音のために作ったのかと思えるくらいにぴったりで、心地よい涼風がどこかの島の潮風に感じてしまうほどだ。その後のMCでも、彼らが同じように感じていることがよくわかる。

 「今回はB面曲を多めに歌う」といって始まった「無言のDIALOGUE」から、アコースティックギターを抱えての「青空が目にしみる」では落ち着いた雰囲気を醸し出す。そして長年通っていた種子島の観光大使になったという報告とともに、その地を想って作ったという「波はサイコーだし」へと続いていく。このあたりは海と波を愛する杉山のイメージそのものだ。実際に波の音が流れてきたと思ったら、ボサノヴァ風の「波」、センチメンタルなバラードの名曲「Heart of the sea」、そしてピアノから始まるジャジーな「月に口づけ」でしっとりとした歌を聴かせてくれる。

 沖縄返還50周年に敬意を表してにぎにぎしく「OKINAWA IN MAY」を演奏したあたりから、さらにあたりは涼しい風が吹き始めたが、このまま落ち着いているわけがない。「Glory Love」でバンドサウンドが炸裂し、客席から起こるハンドクラップとともに一気に盛り上がる。間髪開けずディスコビートに乗せた名曲「SHADE ~夏の翳り~」が始まると、杉山もハンドマイクでステージを所せましと動き回りながら歌う。「楽しい!」を連発するが、それは見ている方も同じ。「水の中のAnswer」でのドライブ感溢れるサウンドとボーカルの一体感はまさにライブならではだ。

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