指原莉乃、プロデュースの妙は“視点”に宿る 秋元康からの学びとアイドル経験に裏打ちされた手腕

自分が嫌いな演出も、ファンが見たいものなら受け入れる

 写真集『スキャンダル中毒』(2016年/講談社)のインタビューでも指原は、劇場支配人として、コンサートではHKT48のメンバーがどんな曲をやりたいかは一切考えなかったと述べている。頭にあったのは「ファンがなにを見たいか」である。アイドルとは「自分を見てもらいたい生きもの」と言い、それゆえにどうしても「私はこれがやりたい」と考えが自分中心に偏りがちになる。

 しかし指原はそういった発想をできるだけ抑え、さらに「アイドルとしての自分が個人的にやりたいことも、やらないようにしているんです」と話していた。一方で、自分がやりたくなくてもファンがおもしろがるものであれば、実行に移したという。同写真集では、女性のアイドルがコンサートで空を飛ぶ演出がこの世で一番嫌いとしながら、しかし「外側からよく見えるなら飛ぶ。それは、演出家の方を信じているので。でも、アイドルとしての自分は一切信じてないですもん」と口にしている。

 アイドルプロデューサーとしては他者との関係性において「いい人」を育てることをモットーとして、自分自身については常に客観視し、自己満足ではなく周りからどう見られるのかを考える。「内側」ではなく「外側」に意識を向けるやり方は、やはりAKB48グループのプロデューサーである秋元康の影響を強く受けているのではないだろうか。

指原が「秋元さんってすごい」と心酔した日

 自著『逆転力〜ピンチを待て〜』(2014年/講談社)で指原は、AKB48時代の2009年『アイドルの夜明け』公演に出演の際、ロック調の曲「愛しきナターシャ」演奏後のMCについて秋元から「ロックスターになりきってミニコント風のMCをやった方がいい」と提案され、「絶対にスベる」と不安がよぎったと明かしていた。ところがいざロックスターになりきって自己紹介をおこなうと、客席が沸いたのだという。さらに公演期間中はそのロックキャラが進化していき、ファンもそれを楽しんでいることが実感できたと振り返っている。

 指原は「失敗すると思ってたのに、大成功。開き直ってやり切ったら、何かしらの結果がついてくる! 秋元さんって、すごい。『プロデューサーってこういうことなんだ』と、この時初めて感じることができたエピソードでもありますね」と、秋元のプロデュース術に惚れ込むことに。

 そしてたどりついたのが「自分は、他人が見つけてくれる」ということ。同著内では、キャラは自分からつけるものではなく受け入れるものであり、「周りの人にキャラ付けしてもらったものを、否定しない方が得です」と持論を展開。「ホントの自分なんてない。素の自分なんてない」とまで言いきった。

 “指原莉乃論”が語られる際、必ずといって良いほど「自己プロデュース力の高さ」が特性として挙げられる。だがこれらの発言などを踏まえると、彼女は究極の「他者プロデュース」でここまでやってきたとも言える。

 つまり指原がアイドルプロデューサーとしてイコラブ、ノイミーを成功に導くことができているのは、「他者」になれているからではないだろうか。外側の目をもってグループを形づくっているのだ。そしてそのプロデュース方法は、おそらくニアジョイでも変わることはないだろう。きっと今回も完成度の高いグループになるに違いない。

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