HOWL BE QUIET 竹縄航太、「ばかやろう」の一言に込めた本音 ラブソングに対するピュアな気持ちを明かす
相手の過去を気にしなくなったーー年齢とともに変化する恋愛観
ーーサウンドメイク、アレンジに関しては？
竹縄：いちばん歌が届きやすい形を構築しようと思っていました。そこも原点回帰というか、初の全国流通盤『DECEMBER』（2013年）のときのように、基本的に4人の楽器だけでサウンドを構成しようと。1番には電子ドラム的な音が入ってるし、弦も使ってるんですが、バンドサウンドで押しているし、ロックバラード的な解釈ですよね。歌詞の内容もそうですけど、あまり綺麗に彩りすぎたくなかったので。
ーーなるほど、そこも原点回帰なんですね。
竹縄：はい。去年の12月に東京と大阪で開催したワンマンライブの影響もあるかも。無観客ライブはやってたんですけど、有観客のライブは2年ぶりだったんです。「爆音っていいな」って思ったし、とにかく最高だったんですよ。ギターアンプの歪みもそうだし、生のドラムのデカさもすごく気持ち良くて。そのときの感覚も残ってたし、「ばかやろう」も強く鳴り響くバラードにしたかったんですよね。
ーー確かにピアノロックバンドとしての魅力も押し出されてますね。やっぱり竹縄さんの原点はロックなんですね。
竹縄：そうですね。姉の影響でBUMP OF CHICKENを聴いて、「バンドってかっけー！」って目覚めて、洋楽・邦楽を問わず、いろんなバンドを聴くようになって。音楽好きとしての原体験はやっぱりロックバンドですね。ORANGE RANGEも好きだったんですよ。当時はJ-POPとして楽しんでいたと思うんですけど、大人になってから聴き直すと、すごくバンドサウンドでかっこいいなと改めて感じたりもしました。
ーー「ばかやろう」の中心を担っているのは、竹縄さんのボーカルだと思います。レコーディング時に意識していたことは？
竹縄：今回はけっこう苦労したんですよ、じつは。どこまで感情を入れるか、いろいろ試して。つい気持ちを入れたくなるんだけど、やりすぎると押しつけがましくなっちゃうんですよね。「俺の歌を聴け！」ではなくて、リスナーの方が自分を投影したり、共感できる歌にしかったので。当たり前ですけど、世の中には失恋している人がたくさんいるじゃないですか。眠れない夜に寄り添えたり、泣けたくても泣けないときに、涙を後押しできるような曲になったらいいなと。失恋の味方ですね、「ばかやろう」は。
ーーあくまでもリスナーのための歌にしたい、と。以前は違うアプローチだったのでは？
竹縄：「ラブフェチ」が入っているアルバム（『Mr. HOLIC』）は、自分を100％投影した曲ばかりですからね（笑）。ドキュメンタリーというと大げさだけど、竹縄航太の物語を切り取った曲がほとんど。もちろん作品としては素晴らしいと思っているし、好きな曲ばかりですけど、今作りたいのは、もっと聴いている人に寄り添いたい曲なんですよ。
ーーなるほど。たとえば「サネカズラ」など、数年前のバラード曲をライブなどで歌うときはどんな思いを込めてるんですか？
竹縄：ちょっと不思議なんですけど、当時の気持ちに戻るわけではなくて、今のテンションで歌っているんです。ストーリーテラーみたいなところもあって、それくらいがちょうどいいのかなと。「ばかやろう」もそうですけど、いくらリスナーに寄り添いたいと思っていても、絶対に自分の感情が入ってしまうんですよ。作詞と作曲を手がけてる時点でそうならざるを得ないし、だからこそ「しっかりこの物語を届けよう」という意識で歌うのが大事というか。そう、最近は“届けよう”という気持ちが強いですね。
ーー改めて聞きたいのですが、どうしてそんなにラブソングを作りたい、届けたいと思うんでしょう？
竹縄：そうですね……たぶん、いちばん“たまってる”んでしょうね。
ーー恋愛の経験データが？
竹縄：それもあるし、言いたいこともそうだし。引き出しが閉まらないくらいため込んでいて、それをどうしても歌にしたくなるんだと思う。恋愛映画も好きなんですけど、観てると自分の過去がフラッシュバックしてくるんです。「そういえばあの時、本当はどう思ってたんだろう？」とか、「もし俺がこう言ったら、まだ付き合ってたのかな」とか。そうやってセルフ・タイムスリップしているうちに、曲作りがはじまることもあるので。最近だと韓国ドラマの『その年、私たちは』ですね。高校生のときに付き合っていた二人が30歳になって再会するストーリーなんですけど、ちょうど同い年だし、それこそいろいろとフラッシュバックして。もはやフェチなんでしょうね（笑）。キュンとしたり、“痛っ”みたいになるのが好きというか。
ーー（笑）。年齢とともに恋愛観も変化してます？
竹縄：相手の過去を気にしなくなりましたね。もっと若いときは、今までどんな恋愛をしてたのか気になって、直接聞いたりしてましたけど（笑）。最近は「墓に入るとき、そんなことどうでもいいよな」って思うようになって。自分にも過去があるんだから、相手にもあるよなと（笑）。
ーー（笑）。原点回帰とも言えるラブバラード「ばかやろう」を作ったことで、次の方向性も見えてきたのでは？
竹縄：自分のなかで“戻れた”という感覚があるし、この先も自由にいろんな曲が書けるんじゃないかなと思っています。今作っている曲もすごくいいので、早く出したいですね。まだ具体的には決まってないけど、ライブもやりたいし。いろいろやりたいことはあるんですけど、まずは「ばかやろう」が多くの人に届くことを願っています。
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