櫻坂46「五月雨よ」MVがファンの心を掴んだ理由 3つのポイントから探る
待ち望まれた路線変更
以上のように、これまでとスタイルを変化させた点が好評の理由の一つとして考えられる。そしてそれが待ち望まれた路線変更であったことも評価に拍車を掛けているだろう。
櫻坂46はこれまで、熱狂を生んだ欅坂46時代の余熱を維持するように、攻撃的な路線の表題曲を続けてきた。しかしその裏で徐々に高まっていたのが、かつての「二人セゾン」のような優しい曲を望む声である。あの曲にあった四季を感じる心や未来に対する期待感は、今でも色褪せない輝きがある。「二人セゾン」のような名曲をもう一度聴きたいという気運は、日に日に増していたように思うのだ。
「五月雨よ」は、曲のテーマこそ違えど、サウンド面やMVで見せる自然や人への愛情表現で「二人セゾン」と通底するものがある。その意味で今作のイメージチェンジは、ファンからすれば「待ってました」と言うべきものだったのだ。しかも今回の路線変更には先走った感がない。というのも、前作『流れ弾』に収録されたカップリング曲「無言の宇宙」が同作と同様のテイストを持っており、ファンから好評を得ていたからだ。つまり、事前にグループは変化の予兆を見せていたのである。
こうした様々なポイントが重なったことで結果的に今この2022年の櫻坂46の中に漂う平和な空気をキャッチした映像にもなっていると感じる。改名を経て生まれ変わった櫻坂46の新しい姿が、この一本の映像に凝縮されている。