2021年もINIやBE:FIRSTが誕生 頻発するサバイバルオーディション番組、人気の明暗を分ける鍵は?
さらに、両者に共通することとしては、MCやジャッジ以上に参加者の中にアイドルファンダムの中ではある程度周知されている「元アイドル」や「有名な練習生」が含まれていたことも考えられる。韓国でのアイドルサバイバル番組の盛り上がりにも「有名練習生」や「元/現役アイドル」は不可欠で、彼らの参加によって盛り上がっていった経緯がある。有名な事務所やシステム、メンターの存在が目立ったとしても、やはりサバイバルの中心は参加者そのものだろう。『Girls Planet 999』の日中韓での注目度の違いも、参加者の各国での知名度が多少なりと関係していたように思われる。
今年話題になったサバイバルのうち、“日プ2”はフォーマットそのものの知名度もあるが、番組へのアクセスのしやすさ・出演者の知名度(既存サバイバル参加経験者の有無)というヒットの条件を満たしていた。『THE FIRST』は本放送はHuluの有料配信のみだったが、後日YouTubeでも配信され、ダイジェストを地上波放送で行なっていたこと、主催のSKY-HIが元々巨大なファンダムを持つAAAのメンバーであり、私財1億円を投じ切実な目標を持って始めたプロジェクトということが当初から掲げられていたため、開始前からSKY-HI自身の既存ファンや志に共鳴した支持者はしっかりとついていた印象だ。こちらも参加メンバーには既存サバイバル参加者もいたが、開始時期が“日プ2”とほとんど同時だったこともあり、初期はその盛り上がりに多少影響もあったと思われる。しかし“日プ2”が先に終了したため、そこから移行してまだ放送中だった『THE FIRST』を見始めたという「サバイバル好き視聴者」の流れというのもSNSでは実際少なからず見かけた。『THE FIRST』の理念には既存の「アイドル」や「デビューサバイバル」に対するアンチテーゼのようなものを感じる部分があるが、実際の視聴者(=未来のファンの可能性がある人たち)に関しては、根本的には大きな違いはない層も含まれていただろう。
このように、「デビューサバイバル」というフォーマットにはそれ自体を好む層というものが存在するが、もはや単純に「サバイバル」というフォーマットだけではそのような層の間でも話題にはなりにくいというのが現状としてあるようだ。デビューサバイバルの基本的な存在意義は、デビュー前からある程度のファンダムや大衆認知を得やすいということに尽きると言ってもいいだろう。しかし、参加者のメンタルへの負担など、マイナスな影響は決して小さいものではない。そのようなリスクを考慮した上で、ヒットのセオリーをある程度組み込んだサバイバルが制作されることが望まれる。