平川大輔、上坂すみれ、木村昴……声優×アーティストのコラボが活性化した2021年

 2021年は、声優とアーティストのコラボレーションが例年以上に活性化した年となった。平川大輔(『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』魘夢役など)が参加した藤田麻衣子の楽曲「手錠(duet with 平川大輔)」などが象徴的な例だが、今、ポップカルチャーの世界において、ミュージシャンや声優といった出自の違いによる壁は無化されていて、意欲的なコラボレーションが次々と生まれている。今回は、アーティストと声優のコラボレーションの意義について、いくつかの例を挙げながら考えていきたい。

藤田麻衣子 「手錠(duet with 平川大輔)」Music Video

 まず前提として、この10年間、日本のアニメ市場の拡大と成熟に伴い、声優が活躍する機会が増え、また声優たちによる本格的な音楽活動のスタートなど、様々なケースが増えていった。もともと、アニメ作品と紐付いたキャラクターソングを発表するという動きは以前からあったが、自らのオリジナル楽曲を発表する声優が続々と現れている。その代表者の一人が、花澤香菜だ。この10年間を振り返った時、声優とアーティストのコラボレーションとして印象深いのが、2013年のBase Ball Bearの楽曲「恋する感覚 -feat. 花澤香菜-」だ。関根史織(Ba/Cho)と花澤が交互にボーカルをとる同曲では、甘い恋心が、衒いなくキュートに歌い上げられている。もともとBase Ball Bearには、小出祐介(Vo/Gt)と関根によるツインボーカルの楽曲はあるが、この楽曲のド直球なキュートさを表現するためには、どうしても花澤の声の力が必要だったのだろう。歌中で繰り返される〈きゅるり〉という言葉は、花澤が歌うからこそ、そのキュンとした破壊力が格段に増していると思う。別のアーティストではなく、声優をゲストボーカルに迎えるという選択は、当時こそ新鮮なものに映ったが、今ではアーティストが自分たちの表現の幅を広げるための選択肢の一つとなっているように思う。

Base Ball Bear「恋する感覚 -feat. 花澤香菜-」

 2021年も、アーティストと声優のコラボレーション楽曲が続々と生まれた。次に紹介するのは、Night Tempoが12月1日にリリースしたアルバム『Ladies In The City』に収録された楽曲「One Way My Love feat. 上坂すみれ」だ。この楽曲では、声優の上坂すみれが、都会を生きる女性の物語を、その凛とした歌声で見事に歌い上げている。このコラボレーションは、Night Tempoが思い描いた世界観を表現するために必要なものであったのと同時に、上坂自身にとっても貴重な経験となったはず。

Night Tempo「One Way My Love feat. 上坂すみれ」

 通常、声優の主な役割は、アニメ作品などのキャラクターを演じることであり、キャラクターソングの歌唱も、その活動の延長として位置付けられる。一方で、声優のアーティスト活動は、役を演じるというよりも、自分自身のオリジナリティを表現するという意味合いが強いと思う。そして、自らをオリジナル楽曲で表現することの延長線上に、今回のような、他のアーティストの楽曲への客演という表現の形がある。今回、上坂は同曲の作詞にも参加しており、Night Tempoの楽曲を通して初めて浮かび上がる上坂“らしさ”があるのだと思う。この経験を通して得た気付きや学びは、その後の自身の音楽活動や声優としての活動に、良い形でフィードバックを与えていくのではないだろうか。

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