『藍染めの週末』特別対談

Little Parade 太志×秋山黄色が語り合う“Aqua Timezという原点” 自然体で表現する曲作りから得られるもの

「『ユニコーンのツノ』を最初に聴くのが怖かった 」(秋山)

ーーAqua Timezは2018年に解散。太志さんは2020年5月からソロプロジェクト Little Paradeをスタートさせましたが、秋山さんはこの流れをどう捉えていますか。

秋山:俺、Aqua Timezのラストライブ(2018年11月18日、横浜アリーナで行われた『Aqua Timez FINAL LIVE「last dance」』)を観に行ったんですよ。前半で好きな曲が続いて、「この曲聴いてたな」「これも好きな曲だ!」って、一瞬ラストライブだってことを忘れるくらい楽しくて。サブステージにドーンとメンバーの皆さんが登場したり、とにかくすごいライブだったんです。でも、あっさり終わってしまったんですよ。すべてのライブがそうだと思うけど、終わるときはあっさりしてるじゃないですか。

太志:そうだね。

秋山:そのとき、「バンドって終わるんだな」ってボーッとしちゃって。さっきまでライブしていたバンドがもういないってことが、よく理解できなかったんです。そのことについてしばらく友達と話してました。

Aqua Timez FINAL LIVE 「last dance」ティザー映像⑩

太志:ラストライブって1回しかないからね。

秋山:そうなんですよね……。それからしばらくしてLittle Paradeが始まって、太志さんとTwitterでつながって、DMで曲を送っていただいたんです。それが(1stシングル曲の)「ユニコーンのツノ」だったんですけど、最初、聴くのがめっちゃ怖くて。

太志:そうなんだ。

秋山:独特な感覚なので、言葉で表現しづらいんですけど……。やっぱり解散が大きかったと思うんですよ。Aqua Timezは単に好きっていうだけではなくて、小学校、中学校と自分と一緒に成長してきた感じがあって。そのバンドがなくなってしまって、「次はどうなるんだろう?」という気持ちもあったんですよね。ファンってそういうものかもしれないけど、「(新曲が)もしガラッと変わっていたら嫌だな」とか「これまでの活動を否定する気持ちもあるのかな」とか、いろいろ考えちゃって。でも実際に曲を聴いてみたら、スッと入ってきたんですよね。Bメロでラップしていて、「よかった、これこれ!」って安心しました。

太志:ラップをやりたかったんだよね(笑)。自然と出てきたので、ある意味進化してないってことかもしれないけど。

秋山:めちゃくちゃ良かったです! これもファンのわがままですけど、(バンドが解散して)新しい活動が始まるときは、“第2章”を期待しちゃうんですよ。真っ新になって、それまでの活動がなかったようにされるのは嫌なんです……まあそれもアーティストの勝手だし、こちらがどうこう言うことではないんですけどね。「ユニコーンのツノ」は(Aqua Timezから)続いている感じがあったし、すっかり安心して、鬼のように聴いてました。

太志:バンドを引きずりながら進んでいるからね。「ユニコーンのツノ」も結局、後悔の曲なんですよ。ツノは自我みたいなものなんだけど、バンド時代は前に前に進まないといけないという気持ちが強かったし、パッと横を向いたときに、ツノでメンバーを倒してしまうこともあって。

Little Parade「ユニコーンのツノ」Music Video

ーーなるほど。Aqua Timez時代の後悔や葛藤を歌った曲なんですね。

太志:そうですね。今までのことを否定するスタイルもあるだろうし、そのほうがカッコいいのかもしれないけど、俺にとっては不自然だったんです。2000年代初めから15年活動してきたわけで、それがなかったことにはならなくて。完全に自分の中に染み込んでますから。

秋山:1stミニアルバムの『止まらない風ぐるま』というタイトルもすごく好きなんですよ。“風ぐるま”は、風が吹いて回るじゃないですか。その自然な感じ、無理してない感じがいいなって。自然に浮かんできたものを自由に作ってほしい、という気持ちもあるんですよね。

ーー太志さんも、作風やジャンルを決めず、自由に表現していきたいと以前言っていましたよね。

太志:そうですね、そこを決めるとつまらないので。デスクワークとは真逆というか、「さあ、仕事しよう」という感じで曲を作ることはないんです。散歩中に歌詞が浮かんでくることもあるし、電車を待ってるときにメロディを思いついて、ボイスメモに録音することもあって。言ってみたら空想とか雑念みたいなものですからね、最初は。「あいつ何してんのかな?」みたいなことを歌にして、それを聴いてもらえるのはいい職業だなって、最近さらに思うようになりました。

 ソロになって初めて気づくこともあって。スタジオミュージシャンの人と制作するのも初めてだったし、「OKPだったらこんな感じで弾くかな?」ってときどき頭をよぎったりとか。今は新人なのでイチから勉強で、ここから始まるという気持ちも強くて。メロディや歌詞は昔とそんなに変わってないと思いますけどね。沁みついてるものがあるので、変えようがないんです。

「言葉の制約から逃れることも大事」(太志)

ーーそして2ndミニアルバム『藍染めの週末』がリリースされますが、秋山さん、この作品は安心して聴けそうですね。

秋山:信頼感がありますからね。「新作が出るんだ、聴こう!」っていう感じです(笑)。ずっと好きで信頼している人の音楽の「続き」が聴けるって、すごくいいじゃないですか。

太志:そう言ってもらえると嬉しいですね。

秋山:小さい頃と違って今は自分も音楽をやってるので、作り手の目線でも聴けるし、楽しみ方も広がっているんですよ。意味のある歌詞も好きだし、語感重視の歌詞もいいし、メロディやアレンジだけじゃなくて、ベース、ギター、ピアノのフレーズだったりとかもニヤニヤしながら聴いてます。今回は好きなことを自由にやっている印象もあって、“思いついたらやる”というスタンスなのかなと。

太志:そうだね。制作の時期は『止まらない風ぐるま』と近いんだけど、納得行くまでやるというのは変わらないので。もちろんたくさんの人に聴いてほしいけど、作品ができ上がること自体が嬉しいんですよ。マスタリングで通しで聴いたときの喜びは、どこかに売ってるものではないので。黄色くんもたぶん同じじゃない?

秋山:作ってるときが一番楽しいです!

太志:だろうね(笑)。俺はたくさん曲を作るタイプではなくて、1曲1曲満足できるまで作り込むタイプなので。完成したときはすごく気持ちいいです。

秋山:音楽って面白いですからね。頭のなかにでき上がって鳴っているものを、パソコンを使って形にするというか。

太志:そうしないと人に聴かせられないからね。

秋山:そうですね。スケッチをしているような感覚なんだけど、それが上手くいったときは本当に気持ちいいです。

ーー「風の斬り方」には〈こんな時代にこそ 音楽よ燃え盛れ〉という歌詞がありますが、これは太志さん自身の気持ちというより、コロナ禍の社会に向けているんでしょうか。

太志:生活のなかで思っていることですね。サブスクリプションが普及して、音楽の聴き方も変わっているけど、音楽がなくならないことは決まってるし、「こんなにいいものがあるんだから、もっと聴けばいいのに」って思うので。

秋山:音楽の話と関係ないかもしれないですけど、太志さんがTwitterをやってるのがちょっと不思議で。

太志:ずっとやってなかったからね。バンドを解散したときに、ちょっと寂しくなっちゃって、生存証明のためにやろうかなって。今もあまり更新してないけど、黄色くんのことを知ったのはTwitterだったんじゃないかな。

秋山:DMで曲を送ってもらったときは普通にびっくりしました。なりすましなのでは? って疑っちゃいました(笑)。

太志:はははは。SNSに対してはもともと否定的だったんですけど、いいこともあるなって。特に気になるミュージシャンをチェックできるのはいいですね。

秋山:自分たち世代はスマホを買ってもらったときから当たり前にSNSをやっているので、また違う感覚かもしれないですね。“アーティストの公式Twitterはこういうもの”というイメージもあるけど、太志さんにはぜひ自由に使ってほしいです。そういえば、歌詞のなかに〈タイムライン〉(「群雨」)というワードを使ってましたよね。

太志:タイムラインにはいろんな意味があるけど、(Twitterをやって)そういう使い方をするんだと思って。

秋山:そういう感じですぐ歌詞に入れるところもいいですよね。世代や地域によっても言葉の感覚は違うし、僕は「お互いに干渉しない」という風潮を歌詞で作れたらいいなと思ってるんですよ。プロのミュージシャンが、こんなに自由に書いているんだと思わせたいし、言語感覚を拡張したくて。さっきも言ったように人を傷つけることはしてないですけど、「こんなことも歌っちゃうんだ?」というのは続けていきたいですね。

太志:「この言い方じゃないと表現できない」こともあるからね。今だから言えますけど、「決意の朝に」の〈辛い時 辛いと言えたらいいのになぁ〉という歌詞を書いていたとき、「〈辛い〉は強すぎるから、〈悲しい〉にできないか?」って制作チームから相談されたこともあって。それは断ったけど、言葉の制約から逃れることも大事ですよね。

秋山:そう思います。自由気ままに書いて、聴いてくれる人との距離感をどんどん詰めたいですね。

■リリース情報
Little Parade『藍染めの週末』
2021年11月24日(水)リリース
・初回限定盤:¥3,850(税込)
太志書き下ろし自伝エッセイ「ほんとうのこと」封入、三方背スリーブジャケット仕様
・通常盤:¥2,750(税込)
<収録曲>
M1. 風の斬り方 lyrics & music / 太志 arrangement / 太志
M2. long slow distance lyrics & music / 太志 arrangement / 長谷川大介
M3. 置き去りの鉛筆 lyrics & music / 太志 arrangement / 長谷川大介
M4. 501 with oneself lyrics & music / 太志 arrangement / 臼井ミトン
M5. 太陽と土と花水木 lyrics & music / 太志 arrangement / 太志
M6. スクールカースト ~底から見た光~ lyrics & music / 太志 arrangement / 長谷川大介

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