荻原梓のチャート一刀両断!
INI&BE:FIRST、注目ボーイズグループがチャート上位を独占 歌唱スタイルから見る両グループの確固たる個性
参照:https://www.oricon.co.jp/rank/js/w/2021-11-15/
最新のオリコン週間シングルチャートによれば、INI『A』が508,474枚の売上枚数で1位を記録。続いてBE:FIRST『Gifted.』が193,753枚で2位、Aqours、虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会、Liella!による『LIVE with a smile!』が41,182枚で3位となった。INIとBE:FIRSTが3位以下に大きな差をつけた週であった。
まず注目したいのは、デビューシングルにて堂々の首位に立ったINIだ。今作『A』には「Rocketeer」と「Brighter」の2曲がリードトラックとして収録されており、そのうち「Rocketeer」が9月のファン投票によってメイン活動曲として決定している。
その「Rocketeer」はパワフルなビートのダンスナンバーで、海外由来の日本語フロウが印象的。例えば歌い出しのリリック〈燃える光の果て/遠く突破するコース〉は日本語のみで書かれているが、発音やイントネーションが日本語のそれとはまるで異なる。どちらかと言えばK-POPの日本語バージョンのようなニュアンスだ。もちろんそれは制作陣に海外プロデューサーが名を連ねる楽曲だからだろうが、理由はそれ以外にもあるように思う。
簡潔に言えば、INIのようにダンスパフォーマンスを軸とするグループには、こうした言葉の響きの方が適しているのではないかということだ。いわゆる従来型のJ-POPのような、歌詞の意味やメロディを重視したスタイルではなく、ビートやリズム、拍の強弱に主眼を置いた歌い方の方が、踊る上では都合がいいのではないか。つまり、ただ単に“K-POPの延長線”としてこのスタイルが選ばれているのではなく、ダンス&ボーカルという現代ならではの“型”に楽曲を特化させた結果がこうした楽曲を生んでいるのだと思われる。子音が強く、母音が極力削がれているのは、パフォーマンスの切れや細かなリズムの変化を演出しやすいからだろう。時おり母音を伸ばす〈アジトアジト〉のようなフレーズでは、複数人でユニゾンすることで効果的にボーカルの迫力を増幅させている。意味より型。言葉よりスタイルに重きを置いた作品だと感じる。