藤井風、iri、SIRUP……ボイストレーナーに聞く「歌うま」では語りきれない声質の魅力
前述のように、声質が魅力的な歌声の背景には音域設定や曲調選択などの技術的な側面もあることがわかるが、そういった技術の範疇の外にあるとされる、持って生まれた声質を良くすることは可能なのだろうか。
「その人の努力や元々の声質に左右されるところは多少ありますが、声質そのものはボイストレーニングによってかなり調整ができます。歌声を訓練すると、話す声もガラリと変わることがあるんですが、それくらい、声自体が変化することもあります。また、リズムやグルーヴに乗った歌い方というものも、才能の有る無しで語られることが多いですが、基本的にはリズム練習をしっかりすることで、ある程度のレベルには到達することは可能だと思います」
また、コロナ禍の影響により、リスナーが好む歌の声質にも変化が見られるという。
「コロナ禍により、在宅中に仕事をしながら音楽を聴く、という方も増えているようです。そういった場合には、音域が広くて華やかな歌声だと音楽に注意が向きすぎてしまうので、あまり音域が広くない落ち着いた声質の音楽の方が集中できる、という声もあります」
そういった視点で音楽チャートを見ていくと、藤井風を筆頭に声質の良さが際立つアーティストが多く見られることも納得できる。生活環境の変化によって、リスナーが求めるサウンドや声のテイストは、日々変化していくものかもしれない。