『アイマス』『バンドリ!』らがもたらした影響とは? 音楽を花形としたメディアミックスプロジェクトの変遷

 『THE IDOLM@STER』『ラブライブ!』『BanG Dream!』の3作品は、いずれも2010年代にキャラクターコンテンツシーンをリードした作品だ。その主因としては、音楽と親和性の高いメディアへの露出と展開を通じて活動を続けたことにある。

 初めて作品に触れる人の多くは、まずアニメに触れることが多いだろうが、スマホゲーム内でストーリーが進んでいき、メインのファン層はゲームを通じて作品性への造詣やキャラクターへの愛着を深めていく。

 こうしたゲーム内でのシナリオ展開と共に、音楽ゲームアプリ内で楽曲がリリース&ゲームプレイができるようになり、その後、楽曲単体でリリースされていく。当該ゲームのファンを中心にヒットしつつも、実力ある音楽クリエイターの起用とスタッフらの尽力によって、ゲーム作品に触れていない層にもリーチしていくことになった。

 『アイドルマスター シンデレラガールズ スターライトステージ』『BanG Dream!』で登場したユニットがテレビや音楽フェスへと出演していったことを筆頭に、バンダイナムコスタジオ所属のゲームサウンドデザイナー、TAKU INOUEが『THE IDOLM@STER』シリーズを通じて提供した楽曲が大きなヒットを記録、今年ついにメジャーデビューを果たしたことなどは、その最たる例であろう。

 また、関連楽曲はCDとしてではなく音楽配信サイトで先行リリースされることが多く、リスナーからの評価をネット上から拾い上げることで、その後の展開についての判断も迅速に行なえる。2000年代中盤ごろからは声優がラジオやイベントなどに出演していき、2010年代ではゲーム作品をコアにおいた展開をするなかで、ネット配信を通じてのイベント出演も増加していった。

 2000年代における声優の音楽活動の盛り上がりに加え、『けいおん!』『マクロスF』などがそれまでの“アニメ作品の単体イベント”という体を飛び越えるような規模で開催、加えて音楽的にも高いパフォーマンスを披露したことで、“アニメ作品×音楽”というパッケージングの圧倒的なインパクトの強さを証明した。

 そのインパクトをうまく吸収し、2010年代以降には音楽ライブの興行を視野に入れた作品展開が自然と行なわれるようになっていく。それは単にグッズ収益などを見込んだライブビジネスとしてだけでなく、ファンにより作品を愛してもらうためでもある。この時点で、2000年代初頭の景色はガラリと変わっていったのだ。

 『THE IDOLM@STER』『ラブライブ!』『BanG Dream!』の3作品が後にもたらした影響はほかにもある。まず、音楽を花形にしたメディアミックスプロジェクトが数多く誕生した、ということだ。展開の拡大に差はあるが、ここではどのような作品が生まれたのか一部紹介していく。

 アイドルを中心としたプロジェクトで言えば、『IDOLY PRIDE』『Tokyo 7th シスターズ』などを連想するファンも多いだろう。2000年代まで範囲を広げれば『アイカツ!』『プリティーシリーズ』の2大タイトルも加わり、つい先日にはコナミデジタルエンタテインメントが小説『シャインポスト』(電撃文庫)を原作としたメディアミックスプロジェクトを発表したばかりだ(※2)。だが、アイドル×音楽×ゲームと続いていく流れは、先駆者がいるがゆえに、今後スタートしていくプロジェクトにとって難しい部分もあるだろう。

【アニメーションMV】 Be Your Light!! / TINGS 【シャインポスト】

 『D4DJ』『電音部』『AKROGLAM』といったダンス〜クラブミュージックに親和性のあるプロジェクトもここ数年で一気に注目を集めているが、毛色の違った作風で言えばミュージカル×アニメーションのメディアミックス作品である『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』や、クラシックの楽曲をモチーフとしたプロジェクトで、現在アニメも放送中の『takt op.(タクトオーパス)』といった作品もある。

 また、男性アイドルを軸にした『アイドリッシュセブン』『あんさんぶるスターズ!!』『うたの☆プリンスさまっ♪』を筆頭に、ヒップホップカルチャーからの影響をふんだんに盛り込んだ『ヒプノシスマイク』『Paradox Live』も人気だ。『A3!』は、音楽だけではなく役者育成というストーリー通りに、2.5次元俳優らによる舞台も行っている。

MANKAI STAGE『A3!』〜Four Seasons LIVE 2020〜

 オリジナリティ溢れるプロジェクトといえば、“青春×アカペラ”をテーマとした最強ボイスエンタテインメント『アオペラ』もある。最近では、本格派ヘヴィメタル×声優・俳優陣×復讐劇をテーマにした『THE LAST METAL』や、DMM GAMESによる吹奏楽部の男性部員たちを育成するゲーム『ウインドボーイズ!』などの展開もアナウンスされている。

『THE LAST METAL(ラストメタル)』コンセプトムービー

 本稿では音楽とゲームを中心としたメディアミックスプロジェクトを取り扱った。ここに実写での映画やドラマ化というメディアミックスの形も盛り込めば、より立体的にキャラクターコンテンツシーンを捉えることができるはずだ。

 各メディアミックスプロジェクトにおけるコンテンツは、様々な視点や施策が絡み合い、影響を与え合いながら存在感を発揮し続けてきた。今後もマンガ、アニメ、ゲームといったキャラクターコンテンツシーンは、その勢いと存在感をますます強めていくだろう。

※1:https://www.e-onkyo.com/news/1062/
※2:https://www.konami.com/games/corporate/ja/news/topics/20211027/

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