2021.10.26 16:00

次世代覆面シンガー未完成モノローグに注がれる期待の眼差し　ヒット曲「カルメン」に滲む13歳の少女の焦燥

文＝満島エリオ

　未完成モノローグは、どの楽曲にもコンセプトのもととなる、ときのはな自身が綴ったメッセージが存在する。そしてそれを毎回、ときのはなによるポエトリーリーディングにし、ティザームービーとして公開している。

未完成モノローグ - カルメン（Teaser Movie）

　「カルメン」のティザーでは、「成りたい」「成れない」という言葉が繰り返し登場する。また、〈仮面をつけた人形と、豪奢な部屋に光はない〉というフレーズは、姿かたちを出さずに活動する自分自身に対する皮肉のようにもとれる。「成りたいもの」が「名の知れた存在」なのか、「自分以外の誰か」なのか、あるいは「本当の自分」なのか定かでないが、とにかく、今の自分ではないものになりたいという焦燥が滲んでいるように感じられる。そのテーマ自体は、やはり13歳の少女の等身大の目線と言えるかもしれない。

　だが、悩みへのアプローチの仕方が、とにかく今までとは全く異なっている。これまでの3曲は、「自分のうちで悩み、迷いながらもがく」という印象だったのが、今回はそれが外に向いたような攻撃性を伴っているように感じられる。歌詞に散りばめられた〈偽物〉、〈未熟者〉、〈せめてその牙を研げ〉などの言葉は今までになく鋭く、強く尖ったボーカルがそれをさらに強調するのだ。内から外へ、自分から他者へ、個から世界へ。その変化は、ときのはな自身の世界の拡張とも重なって感じられる。

　「カルメン」は、9月の公開から約1カ月で48万回再生を突破。新曲のリリースを重ねるごとに、未完成モノローグの勢いは加速度的になっている。今後さらに勢いが増していく未完成モノローグの活動を追うことは、同時に「ときのはな」という一人の人間のリアルタイムの成長記録を目の当たりにすることとも言えるかもしれない。今まさしく形を成し、開花していこうとしている才能を、なるべく早くから目撃しておくことをおすすめしたい。