もともと「Zitti e buoni」を使用して、急にロックスター風の服装に変わるムービーがTikTokで流行っていたのだが、TikTokのエコシステムではたびたび不思議なことが起こる。恐らく『ユーロビジョン』がきっかけで2017年の「Beggin’」のカバーを発見したファンが、TikTokで使用しはじめたのだろう。今ではそんなMåneskinバージョンの「Beggin’」は1000万件以上のTikTok動画で使用されている。ドラム、ベース、ギター、ボーカルのみという非常にシンプルなアレンジも、聞きやすさに起因しているとも言える。こちらの楽曲が収録されているEP『Chosen』は2日間でレコーディングされたようで、エンジニアによると、バンドはプロデュース段階で他の楽器を追加することを嫌がり、『Xファクター』に出演したときの演奏を再現するアレンジを希望したようだ（※2）。海外の音楽業界には「オーバー・プロデュース（色々追加されプロデュースされすぎた）」という言葉があるが、彼らはオーバー・プロデュースせずに、自分たちのシンプルな演奏のみにこだわったから、音数も少なく、聞きやすい音源になったとも言えるだろう。

　1967年にリリースされたThe Four Seasonsの「Beggin’」は、2007年にはノルウェーのヒップホップデュオ・Madconのカバーもヒットしており、まさに言葉通り「世代を超えて愛される名曲」である。

（※1）https://www.theguardian.com/tv-and-radio/2021/may/22/eurovision-2021-maneskin-triumphs-for-italy-in-rotterdam
（※2）https://www.soundonsound.com/techniques/inside-track-maneskin-beggin