アイデンティティ 田島、財部亮治ら歌ネタとしてブーム化する“替え歌” 老若男女が楽しめる普遍的な面白さ

 YouTubeやTikTokといった双方向のメディアが大きな影響を持つことで、音楽の楽しみ方が変わってきているように思う。“音楽を生み出すプロ”ではない立ち位置の人も積極的にアウトプットできるようになり、音楽にまつわるアイデアが様々な方向で膨らむ事例が増えてきた。そんな中でも、テレビやYouTubeで話題になっているのが“替え歌”というジャンル。これをジャンルと言えるのかはわからない……しかしながら、普通に原曲を歌うのではなく、各クリエイターが個々のアイデアと魅せ方で楽曲を再構築し、様々なクリエイティブを発揮するからこそ、ひとつのジャンルと呼ぶほどまでに盛り上がりを魅せていることは確かだと言える。

アイデンティティ田島による野沢雅子さんの「Pretender」

 “替え歌”を行っているクリエイターはたくさんいるが、近年で大きな話題を集めている一人として、アイデンティティ 田島直弥の名前が挙げられる。彼はドラゴンボールに出てくる孫悟空や孫悟飯(というよりも野沢雅子)の高いレベルのモノマネと高い歌唱力で話題を集めている。このアイデンティティ 田島の“替え歌”が特徴的なのは、野沢雅子のキャラクターのままに替え歌を歌うことにある。YouTubeでも大きな話題になった瑛人の「香水」や、嵐の「A・RA・SHI」や、Official髭男dismの「Pretender」は全て“野沢雅子が歌っている”という想定で“替え歌”がなされている。

アイデンティティ田島による野沢雅子さんの「Cry Baby」

 細かくみていくと、アイデンティティ 田島は、必ず一人称は「オラ」、二人称は「おめぇ」と言い換える。これにより、孫悟空の声優を務めている野沢雅子が歌っている感が際立つのだ。さらには、本来であればAの母音を強調するような動詞を、Eの母音に言い換えて歌うのも特徴である。例えば、「Pretender」においては、〈ひとり芝居〉という歌詞を〈ひとりしべえ〉と歌うし、〈感情のないアイムソーリー〉を〈感情のねえアイムソーリー〉と言い換えて歌っている。また、歌詞に関してもドラゴンボールのネタを散りばめている。Official髭男dism「Cry Baby」の替え歌では、〈何度も青アザだらけで涙を 流して 流して〉を〈何度もフリーザに負けて涙を 流して 流して〉、〈腐り切ったバッドエンドに抗う〉を〈タッカラプトポッポルンガと唱える〉、〈土砂降りの夜に 誓ったリベンジ〉を〈抜け殻のセルに 誓ったリベンジ〉など、絶妙に語呂と意味が合致するフレーズでドラゴンボールクロニクルを辿っていく。

【代弁します】"自粛して" / ゴールデンボンバー「女々しくて」替え歌

 アイデンティティ 田島の“替え歌”はモノマネの延長線上の“替え歌”に分類できるが、他にも様々なタイプの替え歌が存在する。例えば、財部亮治の“替え歌”は、特定のキャラを想定する、というよりも楽曲の世界観そのものを“替えて”歌い上げることが多い。例えば、ゴールデンボンバーの「女々しくて」の“替え歌”である「自粛して」は、コロナ禍の鬱憤を代弁しているある種のあるあるソングになっている。当然ながら「女々しくて」はコロナ禍とはまったく関係ない歌であるが、世界観そのものを“替えて”歌っているからタイトルが変わるほどに“替えて”歌っても成立する替え歌になっている。あるいは、King Gnu「白日」の替え歌である「昨日」も、コロナ禍によって生じた日常の一幕を歌にした替え歌である。世界観が変わるということ=歌詞の変更が替え歌の根底になるわけだが、原曲の雰囲気を損なわない程度にアレンジも“替えて”歌って魅せているのが財部亮治の“替え歌”の特徴であるといえよう。

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