櫻坂46「流れ弾」MVに見る過去と現在 時代の閉塞感を打破する爆発的な生命力
やはり目を引くのはセンターの田村だ。ラストスパートにかけて他の誰よりも笑顔が眩しい。だが、事前に彼女は森田ひかると山﨑天の2人からパワーを吸い取るようなカットを経ていることを忘れてはいけない。あらかじめパーティー会場で乱舞するこの2人にある種、触発されたようなストーリーを通して田村が覚醒する。一方で、その森田と山﨑の2人による洗練された表情やパフォーマンス力は、この作品のクオリティを確実に支えている。また、髪色の明るい小池美波が放つ異様な存在感は今作の良いアクセントになっている。単に世界観にマッチしているだけでなく、分かりやすく個性的なのだ。このMVは、そうしたメンバーたちの魅せる力も後押しし、現在のチーム櫻坂46の意欲の高さが十分に伝わるものとなっている。
最後に、櫻坂46はこれまでのシングル2作の表題は佐渡島と淡路島を舞台に解放感あふれるMVを撮ってきた。大自然をバックに撮ったそれらの映像の爽やかさには、改名という一大事によって見えにくくなったグループの道筋を、明るく照らすエールのような意味合いが込められていたように思う。それに対して、今回のMVの主に前半における“密室感”は、むしろ現代の(とりわけコロナ禍の)閉塞感と地続きのもので、先の見えない暗いムードも、なんとなく違和感のある人工の光も、ある意味で時代の空気と連動したものだと感じた。だからこそ、雰囲気がガラッと変わる後半のパーティー会場の躍動感に、心底胸が躍るのだ。これまで溜め込んできた内面のドロッとした部分を、ここで一気に吐き出しているようで本当に気持ちが良い。そうした意味でも、改名後の櫻坂46がはじめてこの曲で、人々の気分とリンクした映像を作り出せたと思う次第である。
(※1)https://twitter.com/kazuma__ikeda/status/1437040598930755593