平井 大、「MIRROR MIRROR」など数々のロングヒットはなぜ生まれる? 若い世代に新鮮に響く“無防備さ”を持った音楽性

 これまでも平井 大の楽曲はストリーミング上において高い人気を誇っており、その総再生回数は15億回を超え、TikTokやYouTubeなどの関連動画も含めると累計総再生回数はなんと31億回にも上る。何より他のアーティスト以上に特徴的なのは、新しい曲だけでなく2015年に発表された「Slow & Easy」といった過去の楽曲も、未だにチャートインし続けていること。この1〜2年の平井を取り巻く状況は、流行がめまぐるしく変化する音楽シーンにおいて、時代や聴く人に左右されない楽曲作りが、若い世代には新鮮に響いた、ということなのだろう。

平井 大 / Slow & Easy

 平井 大の楽曲の根底にあるのは、海や自然、人と人の繋がりや愛と、実にシンプルだ。音楽的にも穏やかで、裏の糸や戦略めいたものなど一切なく、音楽への愛情や遊び心を強く感じさせる。このいい意味での無防備さを持った音楽性は、今の音楽シーンでは非常に稀な存在で、その点も平井の音楽が若い世代の心を引きつける理由かもしれない。また、バイラルでより人気が広がっている点については、好きなものほどもっと知られてほしいという、人間的な心理が働いているのかもしれない。身近な友だちや家族間などの最小限のコミュニティで共有されたことが連鎖した結果が、これほど大きなバイラル効果に繋がったのだと想像できる。そしてもう1点、今の若い世代は売り上げなどで計る表層的なランキングを重視しない傾向にあるように思う。それは本当に美味しい店はガイドブックで調べるよりも地元の人に聞くほうがいいのと同様で、その世代の音楽についてはその世代のアーティストに聞くのが1番、ということだ。実際、優里やYOASOBIの幾田りら、鈴木鈴木やRIKU(THE RAMPAGE from EXILE TRIBE)などの若いアーティストたちが平井の楽曲を数多くカバーしていることも、それを証明している。

 平井 大の人気の理由は、ストリーミングなどの数字的な部分において説明することもできるが、それ以上に今を生きる人々へと寄り添う、音楽そのものにこそあるのではないか。先の見えない不安が蔓延するこの世界に、平井 大の音楽は生きていく喜びを与えてくれる。若い世代はその喜びを、また次の世代へと伝えていってくれるはずだ。

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