LDHアーティストの表現を拡大してきた“ラップ歌唱の変遷” DEEP SQUAD、Jr.EXILEの楽曲から分析
DEEP SQUADが、3分20秒の煌めくような夏のひと時を届けてくれた。7月19日にリリースされたデジタルシングル「Deja Vu」は、LDH所属グループの中でも歌を追求していくボーカル&コーラスグループとしてだけではなく、クリエイターとしての彼らの技能も発揮された意欲作だ。
同曲は、ちゃんみな、milet、SHINeeなどを手掛けるサウンドプロデューサー・Ryosuke “Dr.R”SakaiとCarlo Redl、Yui Mugino、DEEP SQUADメンバーによるコライトセッション(共同制作)で生み出された楽曲。前々作の「あなたが迷わずに」、前作「2words」と、王道J-POPなバラードが続いたため、「Deja Vu」のミニマルなサウンドデザインに良い意味で意表を突かれたファンも多いのではないだろうか。
だが、そもそもR&Bに長く親しんでいる彼らにとって、むしろこれが真骨頂と言ったところなのだろう。それ故、6人の歌声はまた新たな形での洗練を見せている。クールに始まるAメロで、比嘉涼樹と杉山亮司が歌う英語主体の小気味よいフレーズは、歌声の甘さや艶を活かしながらも、余韻を爽やかに、そして儚げに聴かせる。Bメロにあたる部分がない分、一気に視界が開かれたように展開する軽快なサビは、YUICHIROの涼やかな歌声が見事に調和。サビの後半、コーラスのリフレインはライブで笑顔を呼びそうなキャッチーさがあるが、〈忘れないで The time of our lives〉という哀愁ある歌詞やサウンドの清涼感と相まって、どこか物寂しくもあり味わい深い。続く2番Aメロでの宇原雄飛の歌声は、今まで以上に端麗な艶があることに驚かされ、サビ前のKEISEIとサビのTAKAは1コーラス目と全く異なる表情でもって、個性を遺憾なく発揮している。
今回、特に注目すべきは杉山と比嘉の堂に入ったラップパートだ。二人の温かみのあるディストーションがチルな空気感にマッチしていて、心地良い流れが感じられる。このラップパートは楽曲中でもMVでもハイライトの一つとなっており、ここから楽曲が一旦クールダウンする展開になっている。そこからまたサビに至るまでも一貫して軽やかなため、何度もリピートしたくなってしまう。日本以外のアジア圏でもファンが多い彼らだが、新たに間口を広げることが期待できる1曲だ。