三代目 J SOUL BROTHERS History 第1回 〜Year 2010〜

三代目 J SOUL BROTHERSの10周年を振り返る 第1回:過酷な試練乗り越えた7人による“始まりの瞬間”

 その一方で、2010年1月、LDHは15歳から25歳の男性を対象としたボーカルオーディション『EXILE Presents VOCAL BATTLE AUDITION 2 ~夢を持った若者達へ~』を開催。かつて挑戦した『EXILE VOCAL BATTLE AUDITION 2006 ~ASIAN DREAM~』で敗退し、ボーカリストになる夢を追いながら職人として働く今市隆二と、美容師やアパレル店員の経歴を持つ登坂広臣という異色の2人も、全国から集まる3万人と共にオーディションに挑んだ。参加者の中には、現在GENERATIONSのボーカルとして活躍する、数原龍友と片寄涼太の姿も。ダイヤの原石達による激戦の末に、同年9月15日、赤坂BLITZで行われた最終ライブ審査にて、今市隆二と登坂広臣が新グループのボーカルに選ばれた。だが、メンバーに決定した直後、やっと夢を叶えたかのように思われた新ボーカル2人に投げかけられたのは、第一線で活躍するEXILE ATSUSHIの「レベルで言ったら学芸会に毛が生えたようなモノだったかなという、プロの目線で見てしまうとそういう部分もあって。正直、僕はさらに皆さんを突き放しにかかります」というシビアな言葉。『ASAYAN』(テレビ東京系)「男子ボーカリストオーディション」の審査員であり、EXILEの楽曲も多数手掛ける音楽プロデューサーの松尾潔からは、「来週の頭からレコーディングするので」という新たな試練が与えられた。急に押し寄せる現実を前にして、直前まで男泣きしていた登坂も緊張した面持ちで頷く。それでもEXILE HIROが「これから24時間、人生懸けて頑張らないと付いて行けないぐらいかもしれないけど、2人なら出来るかなと思ったんで」と期待するように、彼らもまたボーカルレッスンやダンスレッスン、体力トレーニング、寺での清掃活動などを織り交ぜた過酷な合宿オーディションを経験した精鋭達だ。2015年に『SONGS』(NHK総合)に出演した際には合宿オーディションを振り返り、「もちろん技術的な部分も相当鍛えられたんですけど、メンタル的な部分が一番鍛えられたなと思いますね」(登坂)、「“こんちきしょう”って思ったもん。それは今でも繋がっている気持ちかな」(今市)とコメント。同番組では、当時の2人が写経の最後にしたためた「JSBになる」という直筆メッセージ(書)も登場し、彼らの決意の強さを物語っていた。

 そして、リーダーのEXILE NAOTOと小林直己、パフォーマー候補のELLY、山下健二郎、岩田剛典、そこにボーカルの今市隆二と登坂広臣が加わり、LDHの社内にて「Best Friend's Girl」をお披露目。パフォーマー3人が正式なメンバーに決まったことを告げられたのは、なんと『EXILE Presents VOCAL BATTLE AUDITION 2 ~ 夢を持った若者達へ~』最終審査の3日後(2010年9月18日)、『EXILE LIVE TOUR 2010 FANTASY』神戸公演のリハーサル時だったという。それまではライバルとして闘ってきた彼らが、三代目 J SOUL BROTHERSという運命共同体になった瞬間だった。

三代目 J SOUL BROTHERS from EXILE TRIBE / Best Friend's Girl

 すると2010年11月10日には、シングル『Best Friend's Girl』で早くもメジャーデビュー。「Best Friend's Girl」を手掛けた松尾潔は、「初代と二代目の長所も残しながら、何か新しいものを盛り込んだ曲にしなければいけない」という想いがある中で、メンバーのリテラシーの高さに注目し、「叙情性≒文学性」のある楽曲を三代目 J SOUL BROTHERSに提案した(※4)。松尾潔が手掛けたEXILEの楽曲と言えば、女性目線で禁断の恋を歌った「Ti Amo」などがあるが、「例えば、親友の彼女を好きになった気持ちに蓋をしようとするけど、抗えないという葛藤。それは、これまでLDHが描いてきた心情とは違う男の子が主人公の設定で、若さをアドバンテージにできる彼らなら、イケると思いました」(※5)と語っている。その予感は見事に的中し、同シングルはオリコンウィークリーチャート3位を獲得。11月10日のデビュー日に開催されたラゾーナ川崎でのリリースイベントには、女子高生を中心とした約1万6000人のファンが集結。メンバー達が届ける等身大の切ないラブソングに酔いしれた。

 さらに、12月1日にリリースした2ndシングル『On Your Mark ~ヒカリのキセキ~』がドラマ『検事・鬼島平八郎』(テレビ朝日系)主題歌に抜擢され、こちらもオリコンウィークリーチャート3位を獲得。同曲で初めて『ミュージックステーション』(テレビ朝日系)に出演したのを機に、三代目 J SOUL BROTHERSという新グループの存在は、少しずつお茶の間に浸透していったのだった。

三代目 J SOUL BROTHERS from EXILE TRIBE / On Your Mark ~ヒカリのキセキ~フル ver.(オフィシャル)

※1:https://hochi.news/articles/20201127-OHT1T50152.html
※2:https://hochi.news/articles/20180608-OHT1T50097.html
※3:http://www.team2020.jp/_ct/16852168
※4、5:https://news.mynavi.jp/article/20210422-kiyoshimatsuo/

■斉藤碧
エンタメ系ライター。
ダンス&ヴォーカルグループ、アイドル、ロック、ヴィジュアル系、俳優などジャンルレスで執筆中。V系雑誌「Stuppy」では編集も担当。
Twitter(@stmdr38)

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