『TECHNO BLUES』インタビュー

愛はズボーン、正解がないからこそ辿り着けた新境地 “ぼくらのため”にロックバンドでかき鳴らす理由とは?

「人から認められることで自分の存在がわかる」(GIMA)

ーーどちらもその時その時の正直な気持ちだったと思いますけど、この3年半で、音楽を自分のために鳴らしたいと思うきっかけがあったんですか。

金城:それは生活のことを考えたからですかね。金城、GIMA、白井(達也)、富永が集まって愛はズボーンなわけですけど、当然集まらない時間もあるんですよ。4人ともバラバラに自分のことをやっている時間があって、バンドのことだけを考えているわけじゃない。そうやってみんなの生活を想像してみた時に、バンドの楽しさがあるからこそ、それぞれの生活にちゃんと戻っていけるーー愛はズボーンをそういう場所にしたいなと思いました。前まではメンバーに対して、「1秒でも多くバンドのことを考えてくれ!」と思っていたんですよ。女の子とデートしている暇があったら1曲くらい書いてこいよという精神(笑)。けど、日々を頑張れているのはバンドがあるからやし、バンドを頑張れるのは生活があるからやっていうことにふと気づいたんですよね。

ーーなるほど。でも、〈僕らの時代だ〉って叫びたい衝動的なエネルギーも少なからずあるわけで、そことはどう折り合いをつけていったんですか。

金城:僕は諦めですね。人は変わらないので、自分が変わるしかないっていう諦めがありました。1秒でも長くバンドのことを考えて、若いうちに売れて、大きな家を建てて......っていう野心を抱きながらバンドをやってましたけど、やっぱりそう考えてないメンバーもいるわけじゃないですか。僕は意見を発信して巻き込んでいけばみんなも変わると思っていたし、それくらい自分が放つエネルギーに自信があったんですけど、それを上回るくらい、他の3人のエゴも強いんですよ(笑)。僕の言う通りにならないとバンドが成長しないと思い続けてたんですけど、もうこれじゃあ自分が持たんと思って。こういう作品になった発端はそこですね。まずは自分の思考を変えてみようと。でも結果的に今の方が楽しいんですよ。

GIMA:確かに、金城くんが言っていることに意見が合わなくなって、気持ちがバラバラになりそうな時があって。金城くんが「どうやったらバンドが良くなるやろう」ってことに固執して、めちゃめちゃ死にそうになってるタイミングがあった。けど今思えば、自分も人の話を聞けていなかったと思うし。「なんでわからんのかな」ってモヤモヤしていたことを伝えちゃうと、バンドが終わっちゃうんじゃないかみたいな恐怖心が常にあったので。

金城:でも、ある時からGIMAちゃんが一番話を聞いてくれるようになったよね。

GIMA:人から認められることで、自分の存在がわかるなと思ったタイミングがあって。みんなの想いで「GIMA☆KENTA」という外殻ができ上がっていることに気づいた時、自分も人の話をちゃんと聞いて理解して、認めてあげないといけないなと思うようになりました。

ーー二人とも自分自身と向き合って考えたことを、バンドに還元していったんですね。『TECHNO BLUES』ではside Bの方が二人のパーソナルな部分が表れてると思ったんですけど、GIMAさんの「BARAO」は〈このトゲといつまでも向き合っていこう〉と歌われていて、今の話にも通ずるところがあるんじゃないかと。

GIMA:この曲自体は21〜22歳くらいの時に書いたんですけど、いまだに思ってもないようなヘマするし、人を傷つけてしまうようなことも言ったりもする。見て見ぬふりして生きていくこともできるけど、そういう自分の至らなさにちゃんと向き合うことで、今自分がどこにいるのかがよくわかったりもするから、また歩けるような感じはありますね。戒めとして、その気持ちを忘れたくないから曲にしたのかなと思います。

愛はズボーン "BEAUTIFUL LIE" (Official Music Video)

ーーその一方で、金城さんは「SORA」で〈技術はそれでも日進月歩 忘れられた夏休み〉と歌っていたり、「BEAUTIFUL LIE」では〈虚しさと孤独を手懐けたなら〉と歌っていますけど、どこか虚無感を覚えながらも、ちゃんと前を向くという曲を書いていますよね。

金城:そうですね。哲学系の本とか哲学者の名言集とか好きなんですけど、そういうのを調べたりすると、必ず最後ニヒルに陥るんですよ。考えすぎるといつも「何の意味もない」「諸行無常だ」っていうことに行き着くんですけど、それで終わるのが嫌なんです(笑)。ちゃんと行き着くところまで行き着いてから、もう1回引き返したい。生命とは何なのか、俺たちはなぜ音楽を奏でるのか......とか、虚しくなるところまで考えて考えて、もう考えられることがも何もないと思ったら、最後「さっき買ったコーラうめえ!」みたいな単純なことに着地するのが一番ハッピーだと思うんですよ。できるだけ遠くにタッチしてから、金城昌秀という人間の生活にドンと帰ってくる。そういう歌を書いています。

ーーなるほど、面白い。

金城:『シャーマンキング』が好きな理由はそこなんですよ。1回死んでそれぞれの地獄を巡って、転生して帰ってきたら力が何倍にもなるじゃないですか。あの感覚です(笑)。徹底的に空虚な部分に考えを巡らせてから戻ってくる。「えねるげいあ」とかは完全にそういう歌ですね。

「エスケープ欲は誰もが持っている願望だと思う」(金城)

ーーテクノの暴力性に人間らしさを乗せるという今作にも、間違いなく通ずるところがありますね。

金城:確かにそうやな。

GIMA:テクノの虚無感はめっちゃ感じるな。やっぱり瞑想音楽に近い気もするし。

金城:ずっとループやし、トランス状態を求めているのかもしれない。どっかに行っちゃいそうな、エスケープ欲みたいなもの。バイトしていた時とか、いつか辞める時のために働いてる瞬間もありましたから(笑)。飛ぶ瞬間こそがめっちゃ気持ちいい。まあ、そんなこと考えている時は大体バチ当たってうまく行かないんですけどね(笑)。

ーーとはいえ人間の願望としては根底にあるものですからね。

金城:そうそう、『トレインスポッティング』だって最後は逃げるじゃないですか。全部捨てて、誰も知らない街に逃げる瞬間が気持ちいい。誰もが持っている願望だなと思います。

ーーけど、『TECHNO BLUES』はテクノで逃避しつつも、ブルースで生活に引き戻す作品になっていますよね。GIMAさんが言ったように血が通っているから、逃避するだけじゃなくて、聴いた人が自分の足元を見直せる作品なんじゃないかなと。

金城:そうなっていたら良かったです。俺らはそういうコンボで決めてんのや(笑)。

GIMA:やっぱりその2つは逆じゃないな。

金城:ホンマや。つながってるもんやと思います。

ーーロックとダンスビートの融合となると、それこそPrimal Screamとかマッドチェスター系のバンドに代表されるものがありますけど、そこも参照されているんでしょうか。

金城:俺はずっと好きですね。ライブハウスでやりたいと思って曲を作りまくっていたのも、レイブ文化への憧れがあったから。道端とかガレージとか、その辺で勝手に演奏している人たちがたくさんおったら楽しいやろうなって。

GIMA:俺はオルタナ感は絶対に残しておきたいですね。ギターの音作り1つにしても、何か雑味がないと嫌だなって。シュッと綺麗な音にしたくないっていうのは思います。

ーーそういうサウンドに惹かれるのはどうしてなんでしょう?

GIMA:オルタナって完成してない感じがドキドキするんですよ。完成形を見たいなら別にコンビニで買うものでいいんやけど、手作りを見ることが楽しかったりするから。オルタナって余白が残っている感じがするし、こちら側の想像で遊べる感じが好きですね。

金城:やっぱり俺らはライブをするから。それだったらギュイーンってやるでしょ! みたいなところがまだあります。ギターサウンドって、やっぱりそこが好きやもんな。

GIMA:まだ軽音部だった頃を忘れていないヤツみたいな(笑)。せーので「バコーン!」と鳴らす、あの瞬間がロックンロールやなっていう気持ちはずっとあります。

愛はズボーン『TECHNO BLUES』

■リリース情報
『TECHNO BLUES』
2021年5月19日(水)発売 ¥2,750円(税込)
<収録曲>
01.ぼくらのために part 1
02.FLASH BEATS & JUMP
03.ひっくりかえす
04.I was born 10 years ago.
05.READY GO
06.ぼくらのために part 2
07.SORA
08.ドコココ
09.BEAUTIFUL LIE
10.BARAO
11.えねるげいあ

愛はズボーン オフィシャルサイト

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