ぜんぶ君のせいだ。ソロインタビュー第3弾:甘福氐喑

ぜんぶ君のせいだ。甘福氐喑、“心の傷”を乗り越えて掴んだもの 「ステージに立つのは自分自身を受け入れるため」

 ぜんぶ君のせいだ。が7人の新体制となり、本格的な再スタートを切った。2020年夏にメンバー脱退や活動休止という大きな節目を経て、一時的にグループは如月愛海と征之丞十五時の2人だけに。そこへ甘福氐喑、もとちか襲、雫ふふの3人が加入し、同年11月には新5人体制でのお披露目ライブを行った。さらに2021年になると、新たにメイユイメイ、个喆の2人が加入し、現7人体制でのぜんぶ君のせいだ。が誕生した。

 編成は大きく様変わりしたわけだが、ぜんぶ君のせいだ。というグループの本質は驚くほど変わっていない。孤独で居場所のなかったメンバー同士で互いに支え合い、患い(ファンの総称)一人ひとりと目を合わせながら全身全霊で前へ進んでいく、その姿勢はますます揺るぎないものになっているのだ。現体制に懸ける意気込みはシングル『堕堕』リリース時のインタビューで語られた通りだが(参照:ぜんぶ君のせいだ。に聞く、新曲「堕堕」で爆発した7人の個性 「孤独になっても頑張れる場所が見つかるよって伝えたい」)、各メンバーの個性的なキャラクターやグループでの役割をさらに深く探るべく、リアルサウンドでは7人へのソロインタビューを行っていく。

 第3回目は、甘福氐喑(あまねち あん)が登場。昨年10月に新メンバーとして加入した彼女は、如月も認める「努力家」かつ「しっかり者」で、向かい合って話していてもとても器用な印象を受けた。だが、心の根底には大きな孤独を抱え続けており、それが今でも表現の原動力になっているという。そんな葛藤の正体を紐解きながら、グループやメンバーへの想い、これからの目標などたっぷりと語ってもらった。なぜ甘福氐喑は、ぜんぶ君のせいだ。としてステージに上がるのだろうか。その人となりを知ることで、ますますパフォーマンスから目が離せなくなるはずだ。(編集部)

ぜんぶ君のせいだ。"WORLD END CRISIS" Official MusicVideo

「ステージには立てないと思って葛藤し続けていた」

ーー加入して半年近く経ちましたけど、まず『re:voke tour for 47』を終えた感触はいかがですか。

甘福氐喑(以下、喑):ツアーの最初はぜんぶ君のせいだ。になることに精一杯で、追いつくのに必死でした。でもファイナルを迎える頃には、多少なりとも余裕ができて、周りのメンバーや患いさんのことまで考える余裕ができたのかなと思います。特にツアー後半は、ライブ以外でも患いさんを第一に考えるようになったし、ぜんぶ君のせいだ。がもっと上に行くにはどうしたらいいかを考えるようになっていきましたね。

ーーツアー初日のZepp DiverCity TOKYO公演も見たんですけど、あの時のステージは覚えていますか。

喑:鮮明に覚えています。最近リリースイベント特典で、患いさんと一緒にBlu-rayで見直す機会があったんですけど、見ていて結構苦しくて「うわあ、お腹いっぱい......」ってなりました(笑)。ステージに立つ人の緊張ってお客さんに伝わるじゃないですか。映像でも感じるくらいだったので、きっとZepp  DiverCity TOKYOの日はいっぱいいっぱいだったのが伝わっていただろうなって。もともと恥ずかしがり屋なところがダンスに出ていたり、煽りも言いたいところで言えていなかったり......だめだめでした(笑)。

ーー逆にツアーを通して成長したと感じるのはどこでしょう?

喑:やっぱりダンスですかね。Zepp  DiverCity TOKYOの時は全体的に振りが小さくなっていたんですけど、今は自分の表現をちゃんと見て欲しいから、恥ずかしい気持ちはなくなりました。ジャンプもめちゃくちゃしますし、振りも大きくはなったと思います。「明るい曲なら絶対に私が一番楽しく踊ってるわ!」という気持ちでやっているので。

ーー明るい曲の方がお好きなんですか。

喑:明るい曲と可愛い曲は、十五時と肩を組んで「うちらが一番だぞ!」みたいな気持ちでやっているんですけど、カッコいい曲だとまだ表現が出しづらくて。

ーー明るい曲の方が得意なのはどうしてでしょう?

喑:なんでだろう......。私ってその場の気分でバッと笑ったり、バッと楽しむタイプなんですよね。嬉しいことがあると、拍手しながらジャンプする癖がそのままライブに出ていて(笑)。楽しい時の感情がめちゃくちゃ素だからこそ、表現しやすいのかなと思います。

ーーそうやって表現することに憧れて、オーディションにも応募したんでしょうか。

喑:もともと女性アーティストやキラキラした女の子が好きで、憧れてきたんですけど、自分はどちらかというと“陽”よりも“陰”なので、ステージには立てないと思ってずっと葛藤し続けていたんです。でも、ぜんぶ君のせいだ。のライブにも足を運んでいた中で、「いつまでうじうじ悩んでるんだ。いい加減動き出せ!」と思って、オーディションに応募することを決めました。それでコドモメンタルのホームページを見たら、合同オーディションを開催していることに気づいたんですけど、応募したのは締め切りギリギリだったんですよ。もしかしたら過ぎてたかも(笑)。「もう終わってしまうかもしれませんが......」みたいな、すごい長文のメールを送りつけて、何とか通った感じでしたね。社長にも「お前は長文だったな」とよく言われます(笑)。

ーー(笑)。喑さんはぜん君。が好きすぎるが故に、合格してもぜん君。に入るのに遠慮されていたそうですが、なぜそこまで惹かれていたんですか。

喑:ぜん君。って、他の女性アーティストさんと雰囲気もコンセプトも全部違うじゃないですか。ライブパフォーマンスがものすごくて、1回観に行くだけでズキュンって貫かれちゃったんですよね。

ーーそれはご自身の心のどういう部分に刺さったんだと思いますか。

喑:一人ぼっちな歌詞を歌っていることが多いので、そこが刺さったんだと思います。自分も友達が多くなかったので、一人ぼっちだと感じることが多かったですし。GESSHI類さんの書く歌詞を全力で表現してくれるメンバーがいて、ライブ中も最前で見ていると手を差し伸べてくれたり、頭を撫でてくれたりすることが大きかったんですよね。「自分も一人ぼっちだよ」って、ぜん君。が負の感情を受け止めてくれるところに惹かれました。

「自分を曝け出していいんだと思えたことで変わった」

ーーでも、喑さんはどうして孤独の感情に駆り立てられていたんでしょうか。

喑:もともとコミュニケーションを取るのが苦手なんですけど、人と喋るのは好きだったんですよ。それもあって思ったことを結構すぐ言っちゃうんですけど、悪意はなくても、受け取る人によってはマイナスに感じる言葉とかってあるじゃないですか。自分がそうやって人を傷つけるのが怖いし、傷つけられるのも怖くて......そう考えていたらだんだん孤独になったり、大人数での行動が苦手になってきちゃったんです。

ーー言葉に対して意識が変わる、明確なきっかけがあったということですか。

喑:小学生の時、近所に同級生の友達がいて、私の隣の家の子とも仲良かったんですけど、なぜか3人では仲良くしたがらないような子で。私が隣の家の子と一緒にいるとすごく羨んできて、ある日、仲良かったはずの隣の子を同級生に奪われちゃったんです。「〇〇は私の味方だから、仲間に入れてあげない」って言われたんですけど、その一言が人生で最初に傷ついた言葉で。人と深く関わると傷つくこともあるんだと痛感して、そこからだんだん自分の心を閉ざすようになって、一人の時間が好きになっていきました。今思えば、その同級生も寂しかっただけだと思うんですけど。

ーー小学生としては大きな不安に駆られる出来事ですよね。喑さん自身も思ったことを口にしやすい性格だったからこそ、ふとした一言が相手の傷にならないように気をつけている。それ故に、人との距離が遠ざかってしまったんですよね。

喑:そうですね。感情も顔に出やすいし、思った言葉もすぐ言わないとモヤモヤしちゃうんです。一人の時間が増えたのは、そういう自分を抑えるためでもあったのかなって。

ーー自分と向き合う時間が少なからず必要だったんでしょうね。そこでぜん君。と出会ったのは運命的と言える気がしますけど、憧れるだけじゃなく、自分もメンバーになりたいと思ったのは、どんなきっかけがあったんでしょうか。

喑:自分は闇を抱えている人間だから、ステージに立てるとは思ってもいなかったんですけど、ぜん君。って、そういう自分自身のことを受け入れながらステージに立っている人たちなんだなって気づいたんです。だから、私もまずは自分のことを受け入れて、同じ感情を持っている人たちに手を差し伸べたいと思ったんですよ。

ーー自分を受け入れたいというのは、すなわち自分自身を好きになりたいということ?

喑:はい。そうでないと、自分のことを誰かに好きになってもらえない気がして。自分を好きな人の方が自信があるはずだし、表現も絶対に上手いと思うんです。それをできる場所がぜん君。なんじゃないかなって。今では前よりも自分を好きになっています。

ーーよかったです。そう実感できたのは、例えばどんな時でしょうか。

喑:ぜん君。って、揉め事があるとすぐ話し合いになるし、何かと自分の意見をはっきり言わなきゃダメなグループなんですよ。同じ目標を掲げて進む上では、共有することが大事なんですね。今までは気を遣って、パッと出てきてしまう言葉を抑え込んじゃうことが多かったんですけど、言っていいんだ、曝け出していいんだと思えたことで、すごく変わったと思います。

ーーなるほど。主張することで気づいたグループ内での役割もあるんでしょうか。

喑:めぐちゃん(如月愛海)や、経験の多いメイこて(メイユイメイ、个喆)に比べると、自分はペーペーの新人なんですけど、細かい作業(特典を作ったりなどの事務的な部分も含めて)とかは得意かなって思います(笑)。効率を考えるのが苦手な人が多いんですけど、それに向いているのが、めぐちゃん、メイメイ、私かな。あと、話し合いの時って、多少無言が続いたりすると発言しづらかったりするじゃないですか。そこで第一声を発するのは自分だったりするので。めぐちゃんみたいにカッコよく仕切ったりはできないけど、どちらかと言えば縁の下の力持ち的な、支える役割かもしれません。

ーーよくインタビューで如月さんは、しっかり者で努力家の喑さんをまずメンバーにしたかったと話していますよね。支えてくれる人として、ずっと喑さんを頼りにしているんじゃないかと思うんです。

喑:そうだと嬉しいです。めぐちゃんにも「喑がいてくれるから助かっている」ってたまに言われますね。でも、めぐちゃんは本当に恥ずかしがり屋さんなので、そういうことをあまり言わないんですよ(笑)。

ーーどちらかと言えば、さりげない行動で示してくるタイプ?

喑:はい。たまに「ありがと」みたいに照れながら言ってくれるんですけど(笑)。

ーー想像つきました(笑)。

喑:ですよね。めぐちゃんはメンバーに可愛いとかもあまり言わなくて、特に十五時に対して恥ずかしくて言えないみたいなんですけど、この間ボソボソって、「可愛いじゃん」みたいなことを言った時に、みんなが聞き取って「え、今言った!?」みたいになって(笑)。ずっとめぐちゃんをいじり倒したんですよ。集中攻撃を受けると、めぐちゃんも「もういい。マジで本当に」ってすねるから、2度目は言ってくれないです(笑)。

ーーははははは。いい話ですね。

喑:そんな照れるめぐちゃんも、めちゃくちゃ可愛いんですよね。

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