eillの歌に元気をもらえるライブ空間ーーメジャーデビュー目前に遂げた新たな“幕開け”

eillの歌に元気をもらえるライブ空間ーーメジャーデビュー目前に遂げた新たな“幕開け”

 4月9日、配信シングル『ここで息をして』でメジャーデビューを果たすeill。彼女が3月21日、東京・渋谷WWW Xにて開催したライブ『eill the show 2021』は、約2年半にわたるインディーズ時代の集大成として、新たな“幕開け”を遂げるに相応しい内容だった。

eill(撮影=吉場正和)

 生憎の春の嵐と重なったこの日、渋谷の夜に最初に響き渡ったのは「踊らせないで」。eillの持ち歌でも小気味よいポップス寄りで、生音の映える楽曲を開幕に選んだのは、コロナ禍でライブ参加も久しいファンを配慮してだろうか。彼女の持ち味である、しっとりとしたアカペラで始まると、“次はこんなアレンジはどう?”と提案するように、原曲から音程を自由自在にアレンジしていく。ファンの心に極上のサウンドがすっと染み渡るようだった。

 そこから、Kai Takahashi (LUCKY TAPES)がプロデューサーとして天才だと改めて実感させられたアーバンメロウな「HUSH」などを経て、5曲目「Ma boy」からはメドレー形式に。大好きなボーイフレンドに向けて、“ワガママも許してね”とイタズラ心を歌う「Ma boy」。ここではボーカルにオートチューンを掛けて、そのかわいさをより幼いイメージに引き立てる(ちなみにこの日、後の「((FULLMOON))」でもオートチューンの使用を確認している)。

eill(撮影=吉場正和)

 次曲「Fly me 2」は、原曲のダンスミュージックテイストをバンドアレンジで再現。BPMを下げてドラムのキックを強調し、原曲よりもむしろ、重厚感あるボーカルとトラックが届けられた。

eill(撮影=吉場正和)

 ここでついに、新曲「ここで息をして」を初披露。同楽曲は、攻撃的なブラスと繊細なピアノの旋律が混ざり合う、彼女の新境地といえるジャジーなアッパーチューン。TVアニメ『東京リベンジャーズ』エンディングテーマとして書き下ろされたもので、作品にあわせてeillも特注の特攻服姿で登場してくれた。

 また、同楽曲の歌唱時には、時としてドスを効かせ、言葉の切れ味も鋭さを増すなど、続くファンクロックナンバー「FAKE LOVE/」へと上手く流れを持っていくものに。「FAKE LOVE/」といえば、eillの愛聴するBLACKPINKに代表される、“ガールクラッシュ”をテーマに掲げた楽曲。こうした同時代感ある強いスタンスを、ただの真似事と思わせないのは、eillの歌唱力が疑いようなくハイレベルだからこそだろう。

eill(撮影=吉場正和)

 ここからは、“夜のドライブソング”を披露することに。椅子にそっと腰掛け、早回しのフロウを熱っぽく歌い上げた「((FULLMOON))」や、ゴリゴリとしたベースサウンドが、まるで車のエンジン音のように轟く「Night D」など、緩急巧みな楽曲選びだ(Aメロのラインを弾くベース・越智俊介があまりに笑顔で、今でも脳裏に焼き付いている)。80年代テイストのデジタルポップを踏襲した「Night D」にあわせて、eillの歌声もスリリングな表情を覗かせてくれる。

 ところで、前述した「FAKE LOVE/」歌唱後、eillのコミカルなMCの裏で“ある物”がステージに運ばれていた。YAMAHAのキーボード。“間違いなくあの曲の弾き語りのためだ”と身構えていた時間が、ついに到来する。

 歌われたのは、彼女の実体験に基づいた“痛くて甘い”バラード「片っぽ」。〈叶わない未来予想図 君の背に描いた朝〉という情景を描く、柔らかな弾き語りから始まると、バンド演奏が重なることで徐々に展開のドラマチックさを増し、最後には今にも張り裂けそうな想いが切なすぎるくらいに伝わってくる。eillのほとんど涙まじりな歌声を通して、彼女の胸に今なお“片っぽ”な恋が在り続けることを、痛いくらいに突きつけられた。

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