Nulbarich、ずとまよ、millennium parade、Who-ya Extended……不定形で活動するアーティスト集団
メディアなどで流れた曲やアーティストが気になって調べてみたけれど、その実態がわからなかった、という経験があるだろうか。そういう機会は、もしかすると今後多くなるかもしれない。これまでのバンドのようなメンバー固定ではなく、曲ごとにメンバーが入れ替わったり、音楽以外のクリエイターと組んだりと、不定形なアーティスト集団が曲を発表するケースが増えているからだ。そんな新しい形態で活動するアーティスト達と、そこから新たな表現が生まれてきている。
その先達としては、まずNulbarichが挙げられるだろう。ブラックミュージックをルーツに持ち、ネオシティポップの代表格として確固たる地位を築くNulbarich。メンバーは総勢11名だが、シンガーソングライターであるJQがトータルプロデュースし、演奏形態に応じて参加メンバーが変わるバンドだ。
メンバーが固定されていないこともあって、JQ以外のメンバーのビジュアルは公開されておらず、「ナルバリくん」というキャラクターをアートワークに用いたり、MVに敢えて意味を持たせないようにしている。バンドの輪郭を掴ませず、情報をそぎ落とすことで先入観を持たず、曲そのものをシンプルに届けることを重要視しているのがNulbarichだ。
ずっと真夜中でいいのに。(通称「ずとまよ」)もメンバーを固定しない音楽ユニットだ。ずとまよは、作詞作曲ボーカルを務めるACAねがユニットの核であり唯一の固定メンバーで、そのほかのバンドメンバーは曲ごとに流動的だ。
音楽面だけではなく、個性的なアニメーションMVもずとまよの大きな特徴で、鮮烈なデビューとなった「秒針を噛む」や「脳裏上のクラッカー」ではWaboku、「正しくなれない」では安田現象など、映像クリエイターと組んでMVを制作している。毎回曲の発表とともにMVに注目の集まるずとまよは、映像込みで一つの作品を作っているクリエイター集団と呼んでもいいだろう。
CDなどの音源からではなく、動画サイト上で発表したり視聴されることが増え、音楽は画像や映像を必要とするようになった。ずとまよのような映像込みの音楽形態は、そこからの発展形の一つと言えるだろう。
音楽と映像をかけ合わせた作品を生み出すアーティスト集団と言えば外せないのが、King Gnuの常田大希率いるmillennium paradeだ。millennium paradeは、常田が主宰するクリエイティブレーベル・PERIMETRONが総合演出を務めており、全編フルCGで話題になった「Fly with me」、DIORとのコラボである「lost and found」など映像のクオリティが突出しており、映画を1本観たかのような濃密な世界観が展開される。
PERIMETRON自体も、デザイナーやイラストレーターなど、それぞれが独立したスキルを持つメンバーの横のつながりによって構成されており、作品ごとに組むタッグが変わっていくという。あらゆる面で先進的な存在がmillennium paradeだ。