HOWL BE QUIETのラブソングはなぜ切ないのか 竹縄航太が紡ぐ言葉を軸に考察
HOWL BE QUIETが3月1日、新曲「ベストフレンド」を配信リリースした。
昨年、「ラブフェチ」(2017年のアルバム『Mr.HOLIC』収録)がTikTokで拡散。10代、20代のリスナーを中心にストレートに感情を表現したラブソングとして支持を得たのは記憶に新しい。またソングライターの竹縄航太はSexy Zoneの楽曲「名脇役」を手がけるなど、作家としても大きな注目を集めている。
コロナ禍によってライブ活動が停滞するなか、楽曲の魅力によって知名度を上げ続けているHOWL BE QUIET。新レーベル<APARTMENT>の第1弾として配信された新曲「ベストフレンド」は、このバンドの魅力を端的に示す楽曲だ。
煌びやかなピアノのグリッサンドから始まる「ベストフレンド」のテーマは、息が詰まるような片想い。主人公の〈僕〉は、〈コンビニでさえも 楽しそうに選ぶ 君〉に恋心を抱いている。友達としての関係から一歩踏み出すことができず、好きという気持ちをひたすら増幅させながら、〈なんで好きになってしまったのかな〉と一人呟く。テーマ自体はきわめてオーソドックスだが、〈白い息〉に象徴される冬の風景、〈朝まで話した 電話に残った履歴〉など二人の関係性を想起させるフレーズなどを散りばめることによって、聴く者の強い共感を呼び起こすことに成功している。シンプルな言葉で普遍的なポップスへと結びつけるセンスは、竹縄航太の真骨頂だ。
90年代のJ-POPを想起させながら、現代的なポップミュージックに昇華させるサウンドメイクにも注目してほしい。アレンジには、100回嘔吐が参加。ボカロPとしてキャリアをスタートさせ、ずっと真夜中でいいのに。、原因は自分にある。などの楽曲を手がけているクリエイターとのタッグは、HOWL BE QUIETの音楽性をさらに広げている。2019年のアルバム『Andante』では、TAKU INOUE(『アイドルマスター』シリーズをはじめとするゲーム音楽やアニメ音楽、DAOKOらの楽曲を手がけてきたクリエイター)をサウンドプロデューサーに招くなど、いわゆるバンドシーン以外のクリエイターともタッグを組んできた彼ら。ジャンルを超えたポップネスを志向する姿勢は、「ベストフレンド」でも継続されているというわけだ。