Ado、yamaらミステリアスなアーティストの中で注目のWho-ya Extended 秘められた可能性に迫る
SpotifyやApple Music、LINE MUSIC、YouTube Musicなどのストリーミングサービスが浸透した影響もあり、顔出しをしないミステリアスなアーティストに注目が集まる事例が増えた。アーティストとのファーストタッチが、プロフィールやエピソードを伝えるメディアを通じてのパワーゲームではなく、まずプレイリストなど“音ありき”へと変化しつつあるからだ。最近でも、ストリーミングサービスからヒットの火種が起きた。イラストがアーティスト写真の代わりとなるAdo「うっせぇわ」、yama「春を告げる」の躍進が記憶に新しい。
昨年、シンガーソングライター・泣き虫、バンド・PEOPLE1、羊のアイコンが印象的なシンガーソングクリエイター・Siipなど、詳細不明なアーティストが続々と登場していることも気になる事例だ。
顔出しをせず“正体不明”、“詳細不明”というブランディング。こういった手法のルーツは、ニコニコ動画の歌い手カルチャーではないだろうか。歌を聴かせるに当たって余計な情報は邪魔となる。もちろん、個人情報の問題もあったのかもしれない。自らが表現したい世界観を体現するには、イラストによるブランディングが正しいのではないかと導かれた手法なのだ。第一人者とも言えるまふまふは、インディペンデントな活動ながらドーム公演2デイズを完売(新型コロナウイルスの感染拡大防止のため開催自粛)するなど新たな道を開拓し続けている。
と、同時に音楽シーンではネット発カルチャーの広がりもあった。ニコニコ動画の枠を超えて、いまではYouTubeを通じてその魅力は世界中へと繋がり、二次創作文化によってアーティストが生み出した作品がファンやリスナーを通じて拡散され、TikTokでの“歌ってみた”、“踊ってみた”、“カップル動画”、“ネタ動画”や、InstagramやTwitterでのファンアートなどを経由した宣伝手法が当たり前となった。予算勝負の業界的な宣伝は敬遠され、作品力における評価を軸に、ナチュラルに楽曲の魅力が拡がっていくUGC(ユーザー・ジェネレイテッド・コンテンツ)というソーシャルグラフから派生する仕組みに注目が集まっている。