キュートなフレーズ光るBBY NABE「PINK SWEET」バイラル上位に トラックと語感とフロウによる“新しい日本語の響き”
ここでBBY NABEについて紹介しておきたい。米国・ニューヨークで生まれ育ち、12歳から日本に移住。18歳でラップに衝撃を受け音楽制作をスタートさせた、バイリンガルラッパーである。さらに、メジャーアーティストとの作品制作、プロデュースなども行うマルチプレイヤーだ。2020年9月にデジタルリリースされた「Himawari」では、YouTube Music Awards「世界のクリエイター50人」にも選ばれBTSなどにも楽曲を提供している気鋭のクリエイター・Matt Cabを迎えて制作されている。ラップ、レゲエ、2000年以降のサーフミュージック、ポップス、EDMなど、音楽性は非常に幅広い。特に2020年に入ってからの作品は、ワールドトレンドを意識したトラックメイクと、個性的な歌声を生かした楽曲作りが光っている。BBY NABEの大きな魅力にもなっている個性的な歌声は、既存の個性的とは次元が違うように思う。まるでキーの違う人間が2人で歌っているような低音と高音の差が、タイトでクールな展開の曲に大きな起伏を作っている。ゆえに、洗練されたトラックの印象がそのまま残る。だから“初めてチューした日”という、非常にドメスティックな、ともすれば昭和になりそうなワンフレーズが、令和3年の現在でも違和感なく響くのであろう。
日本詞のワンフレーズでバズり、バイラルチャートにランクインしてくること自体は、もはや珍しくない現象だが、今回のワンフレーズは、トラックと語感とフロウを合わせた、グローバルレベルの日本語なのではなかろうか。少なくとも「PNK SWEET」や「Himawari」には、それを感じた。本当にそうなったらもっと面白いのに……という期待もこめて。2021年、まずはBBY NABEを聴いてみてほしい。
■伊藤亜希
ライター。編集。アーティストサイトの企画・制作。喜んだり、落ち込んだり、切なくなったり、お酒を飲んだりしてると、勝手に脳内BGMが流れ出す幸せな日々。旦那と小さなイタリアンバル(新中野駅から徒歩2分)始めました。
Piccolo 266 インスタグラム